空飛ぶ自由人・2

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小説『廃遊園地の殺人』

2022年05月11日 23時20分09秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

山奥に作られたイリュジオンランドというテーマパーク。
イリュジオンリゾート計画の目玉として期待されていたが、
プレオープンの時、4名が死亡した銃撃事件が起こったため、
オープンを待たずして閉園
リゾート計画も白紙に戻された。

テーマパークは、十嶋庵(としま・いおり)という
酔狂な資産家に買い取られ、
20年間放置され、廃墟と化した。

その廃墟に、20年ぶりに人が訪れる。
選ばれた人間のみに公開されるとして、
招待された10人。
噂では、千名を超える応募者の中から、
十嶋庵のお眼鏡に適う廃墟マニアたちが集められたという。
10人の内訳は、
廃墟マニアのフリーター、廃墟マニアの小説家、
廃墟好きのOL、「月刊廃墟」の編集長、
元イリュジオンランドの経営陣と運営スタッフ数人、
それに、十嶋財団から派遣されたスタッフ。

携帯電話の電波も届かず、
途中の山道が崖崩れで遮断され、
推理小説でいう「クローズドサークル」が作られる。
更に、手首に嵌められたバンドによって、
園内から外に出たと感知された者は、
二度と園内に戻ることはできない。

スタッフから招待者十嶋の伝言が伝えられる。
「このイリュジオンランドは、宝を見つけたものに譲る」

というわけで、廃墟遊園地という閉鎖空間での
宝探しが始まる。
そして、殺人事件が連続する・・・

更に、施設内の壁に、
「イリュジオンランド銃乱射事件の真犯人は、この中にいる」
という貼り紙がされ、
真犯人探しも並行して行われる。
また、この10人の中に、
十嶋庵本人が紛れ込んでいるのではないか、という疑いもある。

ところどころに、過去の記憶がはさまるが、
どうやら、イリュジオンランドが建てられた
天衝村の人々を巡る賛成反対の確執が
建設前にあったらしい。

参加者の中に警察官や
週刊誌の記者が混じっていたりで、
謎が混迷を極める。

廃墟となった遊園地で起こる事件、
推理小説らしい舞台は整うのだが、
どうもその後がいけない。
遊園地のアトラクションが上手に生かされたとはいえないのだ。
道具は沢山あるのに、
それを使いこなせなかったという印象。

また、登場人物に魅力がない。
その上、
10人のメンバーが、
眞上(まがみ)、藍郷(あいざと)、常察(つねみな)
主道(すどう)、渉島(しょうじま)、売野(うりの)、
成家(なるいえ)、 鵜走(うばしり、 編河(あむかわ)、 
佐義雨(さぎさめ)
という、珍しい苗字の人ばかりなので、
イメージが沸かず、はじめの方に掲載されている
登場人物一覧表を何度もめくるはめになる。
従って感情移入できない。

探偵役は眞上永太郎(まがみ・えいたろう)というフリーターで、
コンビニで働いた経験が
観察眼を発揮する、という設定は面白い。
眞上本人の出自探しも織り込まれる。

総じて、料理の素材は揃ったが、
うまく料理しそこなった
という感じ。

そういえば、この人の本は、
「楽園とは探偵の不在なり」というのを読んだことがあったが、
このブログで紹介されていないところを見ると、
あまり評価は高くなかったんだろう。