空飛ぶ自由人・2

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トニー賞授賞式

2024年06月19日 23時00分00秒 | 演劇

6月16日夜(日本時間6月17日朝)、
第77回トニー賞授賞式が行われました。
わけあって、3日遅れの報告。

今回の会場は、デイヴィッド・H・コーク劇場で、
リンカーン・センターにある旧ニューヨーク州立劇場。


昨年のマンハッタンの外れから、中心に戻って来ました。
元々ニューヨーク・シティ・バレエの本拠地で、
2008年、石油・ガスの大富豪デイヴィッド・コークが
今後10年の改修のため、
1億ドル以上の資金提供と運営および維持費の寄付を行い、
この施設はデイヴィッド・H ・コーク劇場へと改称されたもの。
座席数は2586席

司会は3年目となる、アリアナ・デボーズ


もうすっかりトニー賞の顔ですね。

そのオープニング・ショー

対象となったのは、
昨年4月28日から今年4月25日までの間に
ニューヨークのブロードウェイ大劇場でで開幕した作品で、
今期は、36作品が対象
少ないようですが、
新作ミュージカルは16作品あり、
今世紀に入って最多。

昨年同様、技術部門はプレショウで発表され、
本番では、
主な賞の発表が行われました。

今期はヒラリー・クリトン(タフス)


アンジェリーナ・ジョリー(アウトサイダー)、

アリシア・キーズ(ヘルズ・キッチン)などが
プロデューサーとして作品を生み出しました。

受賞結果は、次のとおり。

○ミュージカル部門
作品賞  アウトサイダー
リバイバル作品賞 メリリー・ウィー・ロール・アロング
主演男優賞 ジョナサン・グロフ(メリリー・ウィー・ロール・アロング)
主演女優賞 マリア・ジョイ・ムーン(ヘルズ・キッチン)
助演男優賞 ダニエル・ラドクリフ(メリリー・ウィー・ロール・アロング)
助演女優賞 キーシャ・ルイス(ヘルズ・キッチン)
脚本賞   シャイナ・タウブ(サフス)
演出賞   ダンヤ・テイモア(アウトサイダー)
装置デザイン賞 トム・スカット(キャバレー)
衣裳デザイン賞 リンダ・チョー(グレート・ギャツビー)
照明デザイン賞 ブライアン・マックデヴィット、ハナ・S・キム(アウトサイダー)
音響デザイン賞 コディ・スペンサー(アウトサイダー)

「アウトサイダー」4部門、
「メリリー・ウィー・ロール・アロング」3部門(共通部門を加えるト、4部門)、
他は1部門ずつと、ばらけた結果でした。

ダニエル・ラドクリフ君は、
これで「ハリー・ポッター」から脱出しましたね。

○演劇部門
作品賞      ステレオフォニック
リバイバル作品賞 アプロプリエイト
主演男優賞 ジェレミー・ストロング(民衆の敵)
主演女優賞 サラ・ポールソン(アプロプリエイト)
助演男優賞 ウィル・ブリル(ステレオフォニック)
助演女優賞 カラ・ヤング(パーリー・ヴィクトリアス)
演出賞   ダニエル・オーキン(ステレオフォニック)
装置デザイン賞 デヴィッド・ジン(ステレオフォニック)
衣裳デザイン賞 ディディ・アイーテ(ジャジャズ・アフリカン・ヘアー・ブレイディング)
照明デザイン賞 ジェーン・コックス(アプロプリエイト)
音響デザイン賞 ライアン・ルメリー(ステレオフォニック)

○共通部門
オリジナル楽曲賞 シェイナ・タウブ(サフス)
振付賞      ジャスティン・ペック(イリノイ)
オーケストラ編曲賞 ジョナサン・チューニック(メリリー・ウィー・ロール・アロング)

と、「ステレオフォニック」が5部門を獲得。

ショーの華であるミュージカルのパフォーマンスは、

「アウトサイダー」、

「ヘルズ・キッチン」、

「ステレオフォニック」、

「メリリー・ウィー・ロール・アロング」、

「キャバレー」

などが披露されました。

かつては、トニー賞の授賞式を見て、
夏に行くニューヨークでの観劇プランを立てたものですが、
もう行くこともないし、
知らない作品、知らない俳優が多く、
ちょっと乗れない授賞式でした。

 


演劇『罠』

2024年02月14日 23時00分00秒 | 演劇

昨日のブログで紹介した
タワーホール船堀に行ったのは、

この芝居↓を観るため。                                                                                                    

劇団フーダニットの公演。

「フーダニット(whodunit) 」とは、
「Who [has] done it?(誰がそれをやったか)」
の口語的な省略形。
簡単に言うと、「犯人は誰だ」。
誰が犯罪を犯したのかという謎に焦点を当てた、
複雑な筋書きのある推理小説を指す。

バリエーションに「ハウダニット(Howdunnit )」がある。
こちらは、犯人とそ犯罪行為が最初から明らかにされており、
捜査官が真実を突き止めようとする過程と
犯人がそれを阻止しようとする姿が描かれる。
倒叙ミステリと呼ばれる。
「刑事コロンボ」シリーズや「古畑任三郎」もこのジャンルに属する。

その「フーダニット」を名前にした劇団。
江戸川区を中心に活動するミステリ劇専門の劇団だという。                                                                            タワーホール船堀について調べている時に、
イベント紹介で見つけ、
興味深かったので、観に行った次第。                                              

演目の「罠」は、
フランスのロベール・トマの出世作。
1960年パリで初演され、大評判に。
映画化は2度されており、
日本でも初演以来、
テアトル・エコー、PARCO プロデュース、
松竹、日本テレビ、俳優座プロデュースなど
多くの舞台が創られ、
2~3年に1度、
どこかで上演される人気作。
この劇団でも3度目の上演だという。

フランスのリゾート地、シャモニー付近の山荘、
窓からアルプスを望む一室が舞台。
新婚3ケ月のカップルがバカンスのため訪れていたが、
些細な夫婦喧嘩から妻のエリザベートが
家を飛び出し、
行方知れずになってしまう。
夫のダニエルは警察に捜査を依頼するが、
担当した警部は、
じきに帰って来ますよ、と取り合わない。
しばらくすると、
修道院で保護したと言って、
シスターが妻を連れて来る。
驚くダニエル。
妻とは似ても似つかわない女だ、
とダニエルは断言する。
警部立ち合いのもと、
その前に立ち寄ったベニス旅行のことを訊くと、
すらすらと答える。
ダニエルの身体的特徴についても知っている。
状況証拠はどれもこれも
現れた女が妻であると印象づけるものばかり。
しかし、ダニエルは強固に妻ではない、と主張する。
女がニセモノなのか、
それとも、ダニエルの頭がおかしいのか。
そのうち、二人の結婚に立ち会ったという浮浪者の絵描きが現れ、
奥さんはブロンド、つまり、今の妻とは
別人だったと証言する。
絵描きは銃で撃たれてしまう。
また、二人を診断したという医師が現れ、
今の妻という女に山荘で会ったという。
一体真実はどこにあるのか・・・

セットは一つ
登場人物はわずか6人
(もう一人、セリフのほとんどない役が1人。)


典型的な「ウェルメイドプレイ」
俳優の都合か、
男性の役を女性が演じたりしていた。
(神父→シスター、浮浪者のじいさん→女性)
10周年記念公演では、
消えた妻、消えた夫の2ヴァージョンで上演という、
粋なこともやっている。

大変よくできた脚本で、
誰もが怪しく、誰もが真実を語っているとは思えない中、
新たな殺人が起こり、
事件の取り調べは二転三転、
緊張感漂うセリフの応酬が続く。
そして、ラスト5分、
衝撃的なクライマックスが・・・。

このラストの展開で、
あれ? と思った。
何かに似ている
そうか、2022年の中国映画で、
昨年Netflixで配信された
秀作「妻消えて」だ。


あの映画でも、
失踪した妻とは別人が「あなたの妻よ」
と現れ、二転三転する展開。
そして、驚愕のラストが。
この「罠」が元ネタだったのか。

「罠」は日本で付けた題名で、
元のフランス語原題は、
「一人の男のための罠」が正式名称。
これでは、分かる人には分かってしまうか。

なお、劇団フーダニットの過去の演目を見ると、
ギルフォード「六人の令嬢」、
刑事コロンボのルーツ「殺人処方箋」、
アガサ・クリスティ「ホロー荘の殺人」「ナイル殺人事件」、
ロベール・トマ「8人の女」など多彩。

ミステリ専門劇団というのは、珍しく、
他に聞かないので、
追いかけてみるかもしれない。

 

 


猿之助丈、逝く

2023年09月16日 23時00分00秒 | 演劇

歌舞伎俳優の市川猿翁さんが、亡くなった。(13日)
猿翁さんというより、
私には猿之助さんと言った方がぴんと来る。

“歌舞伎界の革命児”と言われ、
「スーパー歌舞伎」というジャンルを作り上げ、
歌舞伎の世界に新風を吹き込んだ方。
猿之助の名を甥に譲り、
隠居名・猿翁となった後も、
私の中では猿之助として心に残っている。
なにしろ、49年間「猿之助」だったのだから。

「ヤマトタケル」も観た。
「オグリ」も観た。


「伊達の十役」も観た。
リヒャルト・シュトラウスのオペラ「影のない女」も
猿之助の演出というだけで観に行った。


リムスキー=コルサコフのオペラ「金鶏」も観たはず。
猿之助演出で、夫人の藤間紫が主演した「西太后」も観た。

脳梗塞で一線を退いてから(2003年)
随分歳月が経つので、
もっと高齢のような気がしていたが、
83歳だった。

最初の妻の浜木綿子さんとの離婚後、
疎遠になっていた息子・香川照之と和解し、
市川中車として歌舞伎界に迎え、
甥の二代目市川亀治郎(弟・四代目段四郎の一人息子)に
市川猿之助の名跡を四代目として譲り(2012年)、
一線を退いたまま、亡くなった。

息子・照之は大学卒業後、1989年に俳優デビュー。
それを機に25歳の冬、思い立って猿之助の公演先へ会いに行った。
その際、猿之助は
「大事な公演の前にいきなり訪ねてくるとは、
役者としての配慮が足りません」
と照之を叱責、
「私はあなたのお母さんと別れた時から、
自らの分野と価値を確立していく確固たる生き方を具現させました。
すなわち私が家庭と訣別した瞬間から、私は蘇生したのです。
だから、今の私とあなたとは何の関わりもない。
あなたは息子ではありません。
したがって私はあなたの父でもない」
「あなたとは今後、二度と会うことはありません」
と完全に拒絶し、突き放した。
父親としては、さぞ辛い思いだっただろう。
照之も辛かったろう。
その後、藤間紫の尽力で和解が進み、
照之の歌舞伎界進出発表の際には涙ながらに
「浜さん、ありがとう。
恩讐の彼方に、ありがとう」
と、前妻・浜に対して感謝の言葉を述べている。

そういう意味で、後に憂いはなかったはずだが、
香川照之があんなことでつまずき、
四代目猿之助も事件を起こし、
さぞ心残りだったろう。

今思えばだが、
猿之助の名は、三代目限りにすべきだった。
名跡の永久欠番
そうすれば、
猿之助の名前が汚辱にまみれることにはならなかっただろうに。

「ヤマトタケル」の白い鳥になっての宙乗りで、
飛翔したまま客席後方に消えて行った姿、


「伊達の十役」で、
花道上での0.5秒の早替わり、
「義経千本桜」で、キツネの扮装で階段に忽然と現れた場面、
今も目に浮かぶ。

「天翔ける心」「夢見る力」。 

蜷川幸雄なき後、
日本の演劇界は、
もう一人、世界に通用する演出家を亡くした

 


トニー賞授賞式

2023年06月12日 23時00分00秒 | 演劇

今日は、トニー賞の授賞式の日。(アメリカ時間6月11日)

今年の会場は、
従来のラジオシティ・ミュージックホールから、
ミュージカル「イン・ザ・ハイツ」の舞台となった
マンハッタン北部のワシントンハイツにある劇場、
ユナイテッド・パレスに変更。


座席数3400というから、
ブロードウェイの劇場より大きい。
中心街でもないところに、
こんな大きな劇場があるとは、知らなかった。

今年は異変があった。
例年、授賞式の台本は脚本家によって書かれているのだが、
全米脚本家組合によるストライキの影響で、
今回の授賞式は「台本なし」だという。

で、オープニングは、楽屋にいた司会者が、


台本を開けると、全部白紙。


そこから、劇場の階段や入り口に画面が移り、

ダンサーたちが踊る中、
カメラが客席内に入って、


オープニングの歌とダンスに。


劇場の装飾や設備も分かり、
なかなかの趣向だった。

司会は、昨年に続き、アリアナ・デボーズ


去年が好評だったんだろうね。
司会者は会場のプロンプターに出るのは、
制限時間と


「そろそろまとめて」の文字だけだと説明していた。

台本がないといっても、
進行台本がないわけではなく、
要するに、司会者やプレゼンターたちの話す内容の台本がないということ。
アカデミー賞も同じで、
プレゼンターがしゃれた事を言うのは、
全部台本に書いてあり、
それをプロンプターの表示に従って読んでいるだけ。
なかには、「俺はいやだ。自分の言葉で話す」という人はいないのかね。
受賞者のスピーチは、元々自由だから、
脚本家が書いているわけではない。
プレゼンターの台本がない分、自己紹介に続いて、
すぐに候補者と受賞者の発表で、
ごくスムーズ。
つまり、台本なしでもやれることを証明してしまったことにならないか。

今年のミュージカル作品賞ノミネートは、
次の5作品。
「アンド・ジュリエット」

ロミオが死んだ後、ジュリエットが自殺してなったら・・・
という、架空の設定での話。

9ノミネート。

「キンバリー・アキンボ」

4倍の速度で老化が進んでしまう少女の前向きな人生。
フトレートプレイのミュージカル化。

8ノミネート。

「ニューヨーク・ニューヨーク」

1946年のニューヨークで、青年が愛と名声を求める。

9ノミネート。

「シャックト」

トウモロコシの不作の村を救うための闘い。

8部門9ノミネート。

「お熱いのがお好き」

ビリー・ワイルダーのコメディ映画のミュージカル化。

12部門13ノミネート。


ミュージカル・リバイバル作品賞候補は、
「イントゥ・ザ・ウッズ」
「キャメロット」
「パレード」
「スウィーニー・トッド」

何と言ってもトニー賞の華は、
ミュージカルのノミネート作品のパフォーマンス
費用は1つにつき1千万円くらいかかるらしい。
それでも、全国(全世界)放送だから、
宣伝費と考えれば安いものだ、と言えるだろう。

今回も、
「ニューヨーク・ニューヨーク」

「キャメロット」


「アンド・ジュリエット」


「お熱いのがお好き」


「イントゥ・ザ・ウッズ」


「パレード」


「スウィーニー・トッド」

「キンバリー・アキンボ」


「シャックト」


「ファニー・ガール」
などのパフォーマンスが観客と視聴者を楽しませた。

今年の話題は、
ロングラン最長記録保持のミュージカル「オペラ座の怪人」
35年の歳月を経て4月に終了したこと。
6月に「バッド・シンデレラ」も終ったので、
1979年の「エビータ」以来続いていた
アンドリュー・ロイド・ウェッバーの作品が、
ついにブロードウェイから姿を消した
その意味でか、
物故者の追悼の場面では、
「オペラ座の怪人」から「もう一度あなたがここに現れてくれたら」が歌われた。

全26部門の受賞作は、下記のとおり。

キンバリー・アキンボ 5部門受賞
ミュージカル作品賞
ミュージカル主演女優賞(ヴィクトリア・クラーク)
ミュージカル助演女優賞(ボニー・ミリガン)
ミュージカル脚本賞
オリジナル楽曲賞(作曲:ジャニーン・テソリ、作詞:デヴィッド・リンゼイ=アベアー)

お熱いのがお好き 4部門受賞
ミュージカル主演男優賞(J ・ハリソン・ジー)
ミュージカル衣裳デザイン賞 
振付賞 
オーケストラ編曲賞 

シャックト 1部門受賞
ミュージカル助演男優賞(アレックス・ニューウェル)

ニューヨーク・ニューヨーク 1部門受賞
ミュージカル装置デザイン賞

パレード 2部門受賞
ミュージカル・リバイバル作品賞
ミュージカル演出賞

「スウィーニー・トッド」 2部門受賞
ミュージカル照明デザイン賞
ミュージカル音響デザイン賞


レオポルドスタッツ 4部門受賞
演劇作品賞(作:トム・ストッパード)
演劇演出賞
演劇助演男優賞(ブランドン・ウラノウィッツ)
演劇衣裳デザイン賞

ライフ・オブ・パイ 3部門受賞
演劇装置デザイン賞 
演劇照明デザイン賞 
演劇音響デザイン賞 

トップドッグ/アンダードッグ 1部門受賞
演劇リバイバル作品賞 

グッド・ナイト,オスカー 1部門受賞
演劇主演男優賞(ショーン・ヘイズ) 

プライマ・フェイシィ 1部門受賞
演劇主演女優賞(ジョディ・カマー)

ザ・サイン・イン・シドニー・ブルースティーンズ・ウィンドウ 1部門受賞
演劇助演女優賞(ミリアム・シルバーマン)

題材がユダヤ人問題、黒人問題、トランスデェンダーなどが多いのは、
いつもの傾向。

特に、今回は、
ミュージカル部門の主演男優賞と助演男優賞で、
いずれも性自認が男女のどちらでもない
「ノンバイナリー」の俳優が受賞した。
「お熱いのがお好き」の方は、
女装をした男性の役だが、
「シャックト」の方は、
女性役で男優賞を受賞。
右の人。
どう見ても女性だが。

今日のWOWOWの生放送は、同時通訳。
字幕版は、6月17日(土)午後9時に放送される。

トニー賞授賞式は、
その後行くニーヨークで観るミュージカルを選ぶ参考にしていたのだが、
3年前に「これで最後」と8本も観てしまったので、
もう行くことはないだろう。

                                        


トゥーランドット + チームラボ

2023年02月26日 23時00分00秒 | 演劇

今日は、昼頃から上野に出かけ、

↓ここへ。

でも、その前に、アメ横↓の

↓この店で、腹ごしらえ。

大きな餃子で有名な店です。

大きさで、普通の3~4倍、
餡の量で7倍くらいあります。
これだけで腹一杯ですが、
ラーメンも。

これは、どこにでもある味。

その後、東京文化会館へ。

何年ぶりでしょうか。

昔は、オペラを観に、よく通ってものですが。

そういえば、私のオペラ初体験は、
ここでの「椿姫」上映会。
なぜか字幕がなく、
終わった後、友人と、
「あの、椿姫を訪ねて来たおじさんは、誰?」
「パトロンじゃないの?」
とトンチンカンな会話を交わしました。


今日の演目は、↓。

既に観尽くした感のある作品ですが、
今回、チケットを取ったのは、
チームラボとのコラボであることから。

チームラボ・・・
デジタル技術を駆使した「デジタルアート」を作成する会社。
↓のような展示を東京、シンガポール、ドバイ、マカオなどで開催しています。

東京にある2箇所の展示場は、既に行ったことがあり、
「トゥーランドット」を題材に、
どんなことをするのだろう、
という関心でやって来ました。

よく見えるように、センターの席を確保。

このプロダクションは、
昨年6月にスイスのジュネーヴ大劇場でワールドプレミエを迎え、
今度の公演は、二期会による東京公演。

奇抜な演出になるだろうな、
と覚悟していたら、
まさしく奇抜な演出で、
↓のような場面が続出します。

近くにいるはずの人間を、
わざわざ切り離して、ドラマが盛り上がるはずがありません。

チームラボらしいところは、
↓この場面くらいで、

後は、照明による変化。

そのためか、舞台が暗く、
役者(歌手)が何をやっているか、よく見えません。

1幕・2幕を通して上演
初めて観ました。
更に、リューの死に続き、王のティムールも自害してしまいます。
これは初めての演出。
最後は、普通は、トゥーランドットと王子カラフが結ばれて終わりますが、
今度の上演では、皇帝の死去で終わる。
これも初めて。

今までも、奇抜な演出の「トゥーランドット」はいやになるほど観ていますが、
さすがに音楽だけは、変えられない、
と安心していたら、
えっ、と驚き。
リューの死から後の音楽が、違う

で、配られたチラシを見たら、
「ルチアーノ・ベリオによる第3幕補作版」と書いてあります。

「トゥーランドット」はプッチーニの遺作で、
癌の手術の後、心臓発作で急死し、
リューの死までしか書いていなかった。
そこで初演にあたり、
プッチーニの弟子とも友人とも言われる
フランコ・アルファーノ
プッチーニの残したスケッチに従って補作したのが、
第3幕の後半部分。

1926年、ミラノ・スカラ座での世界初演の時、
指揮のトスカニーニは、プッチーニが残した最後の音符まで指揮した後、
タクトを置いてこう言ったという。
「ここでマエストロはペンを絶ち、亡くなった」
初日はここで幕を降ろし、2日目からは補作版で通し上演。

このアルファーノ版が、広く上演されている版。

ところが、音楽出版社の依頼で、
2002年に、イタリアの作曲家ルチアーノ・ベリオが、
新たな補作を完成させた。
今回の上演では、そのベリオ版を使用。
従って、リューの死以降は変わってしまったのです。
前の版だったら、音楽的に、
最後に皇帝の死はなかっただろうに。

というわけで、音楽まで変わってしまった、奇抜なオペラを鑑賞した次第。

私は、メトロポリタンのフランコ・ゼッフィレッリのプロダクションを
こよなく愛しており、
これ以上の演出はないと思っています。
もし世界遺産に芸術部門があったら、
間違いなく世界遺産になる。
これがあまりにもオーソドックスな完成品なので、
新たな演出者は、奇抜な方向に行くしかないのでしょう。

ただ、今度の上演でも、
リューの死あたりでは、やはり胸が詰まりました。
ここは、プッチーニも泣きながら作曲したのではないかと思います。
リューのモデルは、
プッチーニとの不貞の嫌疑から服毒自殺した実在の女中、
ドーリア・マンフレーディの存在を重ね合わせる分析が行われています。

終わった後は、再びアメ横に行って、
昇龍に寄り、餃子をおみやげに買いました。

そして、いつものここへ。

家へ帰ってから、
メトロポリタンの「トゥーランドット」(1987)DVD↓を

口直しに観てしまいました。
ジェイムズ・レヴァイン指揮、
エヴァ・マルトンプラシド・ドミンゴの共演。
そして、ゼッフィレッリの演出。
最高です。