空飛ぶ自由人・2

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現金化問題

2022年07月31日 23時00分03秒 | 政治関係

韓国における
元(自称)徴用工裁判の判決に基づく「現金化」
最終局面を迎えている。

2018年、韓国最高裁(大法院)は
日本統治時代に日本企業で働かされた韓国人の
元(自称)徴用工らへの賠償を命じた判決を確定させた。
その後、敗訴した日本企業が韓国国内に持つ資産を差し押さえ、
これを売って、原告への賠償に充てる「現金化」に向けた
裁判所の手続きが着々と進み、
8~9月にも現金化が実施されようとしている。

これに対して、
日本政府は、元徴用工への損害賠償を含む戦後補償問題は
1965年の日韓請求権協定で解決されているので、
対応しない、というのが基本姿勢だ。
日韓請求権協定には、請求権は、
「完全かつ最終的に解決された」と記載されており、
協議の際、日本政府が未払い給与について
支払う意向を示したところ、
「それは韓国政府がする」として、
その額を含めて経済協力を受けた。
そのことは、記録に残っている。
従って、元徴用工に対する補償は、
韓国がすべきことであって、
日本や日本企業に請求することは、
全く筋違いのことなのだ。

現金化が具体的になされて、
原告である元(自称)徴用工に渡されれば、
もう後戻りはできない。
日本企業に実質的な被害が生ずれば、
日韓関係に重大な影響を及ぼすことは必至だ。
1965年の日韓正常化に際しての日韓基本条約を否定することになるからだ。
だから、日本は、そうなった場合、
韓国に対する制裁措置を準備している。
そうなれば、再び「NO JAPAN」が再燃し、
日韓は修復不可能な事態に陥るだろう。

そうしないために日韓の歩み寄りが模索されているが、
元々一度決着した問題を蒸し返しているのだから、
日本側の譲歩は考えられない。
もしそうしたなら、
日本自ら日韓基本条約を破棄することになるからだ。

日韓基本条約は、
戦前の36年に渡る日本統治時代を清算して
国交を正常化するために結ばれたものだ。
通常戦争をした国同士は、
平和条約を結ぶことで、
過去の歴史を清算する。
しかし、韓国は日本と戦争したわけではないので、
平和条約ではなく、
それに代わるものとして
日韓基本条約が締結されたのだ。
その際、日本は韓国に対して、有償・無償計5億ドルの経済協力を行った。
当時の韓国の国家予算の2倍以上で、
それで韓国は復興することができた。

そういう経緯を忘れて、
あるいは忘れたふりをして
日本企業に賠償を求める裁判を起こし、
それを認める判決を下したのだから、
国際法違反である。

そうした異常な進展は、
5年間にわたる
文在寅前大統領の時になされたことだ。
尹錫悦新大統領は、その修復に追われている。

しかし、「三権分立」を楯に取って、
判決の履行が迫られているのだから、
対応策は困難だ。
韓国政府は7月4日、
解決策を模索する「官民協議会」を発足させた。
韓国政府が日本企業の賠償金をいったん肩代わりする案や、
日韓両国の企業や個人による寄付で基金を作って、
原告への賠償に充てる案が浮上している。
しかし、実現が困難だと予測される。

困難の最大の理由は、
原告たちが、その案を拒否していることだ。
原告たちはあくまでも三菱重工業による賠償と、更に謝罪を求めているからだ。
もし日韓が政府間で妥協案を強引に締結したとしても、
「被害者本人の同意を得ていない」
として、反故にされる可能性が高い。
それは、2015年の「慰安婦合意」が反故にされたことで実証されている。

このままいけば、妥協案は間に合わず、
現金化は実行され、日韓関係は完全に破綻するだろう。
「現金化」の手続きが進む韓国大法院(最高裁)に対し、
韓国外交省が政府の取り組みを説明する意見書を提出したという。
つまり、これだけ外交努力をしているのだから、
司法判断を先延ばしし、現金化を回避してくれと要望しているのだ。

このように、現金化で日韓関係が破綻しないために、
日韓双方は解決策を模索しているわけだが、
その根底には、
「戦後最悪と言われる日韓関係を良好にしたい」
という思いがある。

しかし、なぜ「日韓関係を良好にし」なければいけないのか
根本に立ち返って考える必要がある。
韓国は、反日を「国是」としている国だ。
子どもの頃から教科書で
日本統治時代にひどい目にったという
「捏造された記憶」が刷り込まれている。
だから、日韓関係で起こることといえば、
全て韓国側から仕掛けたものだ。
竹島の不法占拠、慰安婦問題、
旭日旗問題、レーダー照射問題、
ことごとく、韓国側が仕掛けたことで、
日本はその一方的な被害者だ。
そんな国を相手に友好的関係を、どうして築く必要があるのか。
もう無視するしかないのではないか。

元(自称)徴用工が求める謝罪は、
はるか70年以上前のことだ。
そんな過去に拘って「謝罪せよ」と言う
暗いメンタリティを持ち続ける民族とは関係を断っていい。
それに、慰安婦問題では、何回も謝罪しているのに、
それを無視する。
あるいは、意図的に忘れたふりをする。
それは、謝罪を受け入れる気持ちがないからだ。
最初から許す気がないのだ。

あれほど激しく殺し合ったアメリカと日本さえ、
安倍元首相が真珠湾を訪ね、
オバマ大統領が広島を訪問して、
許し合い、未来に目を向けた。
キリスト教徒が多いはずの韓国で、
なぜ許すことができないのか、
不思議でならない。

国交断絶は、今の時代でできないなら、
韓国と日本の交流を最小限のものとし、
人の交流、物の交流、文化の交流を最小にした、
「静かなる国交断絶」をすべきだと、
私は、このブログで何度も訴えている。

尹政権の支持率は恐るべき低下をしている。
ここで日本に妥協したような案を出せば、
へたをすれば大統領弾劾運動につながり兼ねない。
支持率が落ちた時のいつもの方策として、
尹大統領が「反日」に舵を切ることも考えられる。

だからといって日本は困らない
困るのは、韓流にはまって、
韓国に行きたがる一部の人だけだ。
一般の日本人は、
韓国が何を言おうと、全く困ることはない。

本当なら、元(自称)徴用工問題も
竹島問題も、国際司法裁判所に提訴することもしたらいい。
相手は応じないだろうが、
その理由を説明しなければならない。
いや、それ以前に、
相手国が応じなくても裁判ができる制度に
国際司法裁判所を改革する必要があるだろう。

尹氏に近い関係者は
「韓国の世論が納得してくれる解決案を作るには、
日本側の協力が必要だ」
とこぼしていたというが、
勝手に問題化して、騒いでいるのは、韓国側だ。
自分たちのことは自分で解決したらいい。

どうも政治家というのは、
起きた問題を解決するために、
足して2で割る方法を取りたがる。
しかし、不当な要求には、耳を貸す必要はない。
岸田政権には、変な妥協案に乗って、また裏切られる、
という愚かなことを繰り返してほしくない。

 


小説『高く翔ベ』

2022年07月29日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

江戸時代の豪商、紀伊国屋文左衛門を描く小説。
吉川永青著。

紀伊国屋文左衛門については、
紀州から江戸にミカンを運んで大儲けし、
吉原で派手な遊びをした、
くらいの知識しかなかったが、
ああ、こういう人だったのか、
という読後感。

といっても、ほとんどが作者の創作であることに注意。
紀伊国屋文左衛門については、
著作や記録は残っていないので、
作者の想像で作った紀伊国屋文左衛門像だ。

紀州湯浅で育った文左衛門は、小さい頃文吉といい、
長じて文平と称して
和歌山城下の材木問屋の手代となり、
宮司の娘・汐と婚約するが、
不幸な事件で汐を失い、
江戸に出る決心をする。
江戸では、河村屋十右衛門を頼り、
木材不足に対して下総から材木を調達して河村屋を助け、
その助力で紀伊国屋を開業、
時化で届かないミカンを故郷から船で運んで
大儲けし、材木商の基礎を築く。
その後、汐の妹・凪と所帯を持つ。
側用人柳沢吉保、勘定奉行の荻原重秀らと関係を繋ぎ、
公儀の普請の入札に参加するようになる。
特に寛永寺根本中堂の普請の入札では、
経費の綿密な計算で落札し、
材木商としての立場を確立する。
両替商への転身を図るが、
反発を受けて実現せず、
荻原の依頼で引き受けた
貨幣改鋳で作った十文銭の不評で
損を出し、将軍が代わって、
柳沢らの後ろ楯を失い、
紀伊国屋の屋台骨が壊れていく・・・

という顛末を、
いくつかの史実を織り込みながら、
創作で文左衛門の人物像を作り上げていく。
船頭の玄蔵、俳諧師の甚次郎、元は樵で後に手代となる長次郎らが
周辺を彩る。

公儀が寺社など様々な建物の普請を企画するのは、
火事が起きやすいという江戸の特徴から
火事後の再建のための大工の口を賄い
技術を温存するためだった
という解説は、ほう、と思わせるものがあった。
文左衛門は言う。

「あたしはそれを助けたい。
世の中を前に進ませる力になたたいんです」

これが文左衛門の商人としての根となっている、
と、作者は描く。

凪の言葉。

「おまえさんは、自分の役目を果たそう、
何とかしようって、いつも懸命にやってきました。
女は、夫がそういう人でいてくれる限り、
一緒に苦労できるのが嬉しいんですよ」

また、米中心の経済が破綻するのは、
江戸の人口が増えすぎたためだ、
という説もなかなかのものだ。

文左衛門は、店を閉めるのを、
「まだ力があるうちに」として、
余力がある時に廃業する。
そして、奉公人に十分な金を与えてやる。

奉公人たちには、
勤め上げた年季と店での役割に応じて
金子を渡し、暇を出した。
たとえ小僧でも、
奉公した年月と同じだけの間は
十分に食っていける金を手にしていた。
「店から渡す金をどう使うか、
よく考えておくれ。
あたしは思うんだ。
皆が食い繋いで、
何か世の役に立つ人になってくれたら、
こんなに嬉しいことはないってね」

小説なのだから、当然だが、
実像の文左衛門とは違うかもしれない。
だが、筆者の造形した文左衛門像のままなら、
大した人物だという気がした。

紀伊國屋文左衛門については、生年、没年共にはっきりしておらず、
人物伝には不明な点が多く、架空の人物であるとする説もあるが、
実在したとする説が主流だ。
享年は66歳であるという説が有力。

最後は乞食同然の生活となり哀れな晩年を送った、
という説もあれば、
閉店した後も、深川富岡八幡宮に
総金張りの神輿三基を奉納したり、
大火で消失した富岡八幡宮社殿建立費用に全財産を寄進したりと、
潤沢な資産を持っていたとも言われる。

なお、紀伊国屋文左衛門は、「紀文」と呼ばれたが、
今現存する食品会社の「紀文」とは何の関係もない。


映画『ローマンという名の男』

2022年07月28日 23時00分03秒 | 映画関係

[映画紹介]

2017年度アカデミー賞(「シェイプ・オブ・ウォーター」が作品賞を取った年)で、
デンゼル・ワシントン主演男優賞にノミネートされた映画。
日本では劇場公開されず、DVDでのみ発売。
Netflixで鑑賞。

ローマン・J・イズラエルはサヴァン症候群の弁護士で、
尋常でない記憶能力を持ち、
法律は全て暗唱でき、
裁判記録は紙の資料やカードで記録し、記憶している。
ただ、サヴァン症候群特有のコミュニケーション能力の欠陥があり、
人前に出てしゃべるのが得意ではないため、
友人のウィリアムの弁護士事務所で裏方として働いている。

サヴァン症候群・・・
知的障害や自閉症などの発達障害等のある人が、
その障害とは対照的に優れた能力を示す事例。
主に記憶能力、数学、音楽、美術、機械的能力又は空間的能力で、
ランダムな年月日の曜日を言えるカレンダー計算、
航空写真を少し見ただけで、細部にわたるまで描き起こすことができる空間認識、
書籍や電話帳、円周率、周期表などの暗唱、
並外れた暗算、音楽を一度聴いただけでの再現、
語学の天才で数カ国語を自由に操る、などなど。

ウィリアムは人権派弁護士で、
貧しい人のため弁護料を安く仕事をするため、
経営は難しかった。
ローマンは、司法制度に疑問を持ち、
法律の間違いを正す活動も目指していた。

ある日、ウィリアムが心臓発作で倒れ、
ウィリアムの親族は、事務所を閉鎖するという。
ローマンは、この事務所を支えてきたのは自分だという自負から、
自分がやると言うが、
あなたに経営はできないと一蹴されてしまう。
事務所の案件は、ウィリアムの教え子である
ジョージ・ピアスに引き継いでもらうという。

失業したローマンは「公民権を守る会」を訪ね、
再就職先にと希望するが、
所長のマヤ・オルストンは全てボランティアでやっているので雇えないと言う。

その後、どこからも良い返事をもらえなかったローマンは、
仕方なく、ジョージの事務所で働くことを決めた。
そこでコンビニ強盗の犯人の弁護を担当し、
司法取引をめぐるミスで叱責される。
また、マヤに誘われ、ボランティアの会合に参加するが、
若者たちの反発を受け、
時代が変わってしまったことを感ずる。

ローマンは、
なぜ、悪事も不正もせず、真面目に生きてきたのに、
こんな仕打ちを受けるのか、悩む。
入院中のウィリアムに会いに行き、
昏睡状態の姿を見て、ローマンの中で何かが壊れてしまう。

「恩知らずの依頼人に飽き飽きした。これからは、金を稼ぐ」
という心境に達したローマンは、
依頼人との守秘義務を破り
弁護士としての一線を踏み越え、大金を手にしてしまう。

今までの人生に見切りをつけ、
欲と金の世界へと落ちてしまおうと決めたローマンだったが、
そう決めたのに反して、周囲に変化が起こる。
正義感に溢れるローマンに突き動かされ、
ジョージはかつての情熱を取り戻し、
拝金主義よりも地域密着型の、
人に寄り添った弁護をしていきたいと言いだす。
その上、ローマンが提唱する司法取引制度を正す裁判を考えてみたいとも言う。
ボランティア活動に意味はあるのだろうかと迷っていたマヤは、
ローマンの志と姿勢に感動し、希望を抱く。

しかし、不法な手段で大金を手にしたローマンは、
意外な形でしっぺ返しを受け、
命を狙われる羽目になる。
そこで、ローマンは、
自分自身を告発する起訴状を裁判所に提出しようとするが・・・

風変わりなサヴァン症候群の弁護士の生き様を描いて、
なかなかいいが、
感動にまでは至らなかった。
構成要素に何かが足りない
しかし、ローマンを演ずるデンゼル・ワシントンの演技は、
さすがのうまさ。


ジョージをコリン・ファレル


マヤをカルメン・イジョゴが演ずる。


監督は「ナイトクローラー」(2014)のダン・キルロイ

 


スキャナのトラブル

2022年07月27日 23時00分00秒 | 身辺雑記

一昨日、複合プリンタを使ってスキャンしようとしたところ、
「スキャナに接続できませんでした。
HP Smartは、このプリンタからスキャンできません。
スキャナが検出されない、
または、このプリンタで
HP Smartが
スキャナに対応していません。」
という文字が。

HP Smartとは、
HP(ヒューレット・パッカード)から
ダウンロードした、
プリンタの動作ドライブ。
このトップページからプリントやスキャンが出来ます。

その前日はスキャナが正常に作動していたというのに、突然の変調。

以前はHPに直接電話して、
リモートでも対処してもらいましたが、
今は、HPの相談窓口は、
専門家相談サイトJust Answerというところが対応しています。
ただし、有料
いたしかたなく、初回500円を支払うことにして、アクセスしました。

電話応対でなく、チャット。
口でなら10秒で伝えられることが
文字では打ち込むのに5分ほどかかります。
「専門家」の回答を待ち、症状を説明。
しばし後、対処方法が送ってきます。
しかし、そのとおりにやってもうまくいかない。
そう伝えると、再度回答がきて、その手順でしても、不調。

ただ、回答の意味を探っていくと、
ドライバを再インストールしてみろ、
ということのようですので、
前に入れたドライバをアンインストールし、
念のため、プリンタのUSBを抜いてオフラインにした上で
デバイスを削除して、再結合。
そして、HPのホームページにアクセスして、
ドライバを再インストール。

これでやってみると、スキャンが有効に作動しました。

こういうことで、今後対応出来るようです。

しかし、最近は、大体どこも、対応はメールかチャットが主流。
電話番号は全然示されません。
前にMcAfeeの不具合は電話対応で、
リモートもしてくれました。

今までも様々なサポートセンターに相談し、
そのていねいな対応に感心したものでしたが、
音声よりも文字での対応の方が楽なのか。
なんだか面倒なことになりましたね。

で、今日は記事が少ないので、
おまけとして、↓の写真をご覧下さい。

東西線の駅名ですが、
上から順に読んでみて下さい。

「とうようちょう
 みなみすなまち
 にしかさい
 かさいうらやす
 みなみぎょうとく」

わかりますか? 
5・7・5・7・7
と、短歌のリズムなんです。

 


対談集『ボクもたまにはがんになる』

2022年07月25日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

三谷幸喜さんの前立腺がん闘病記というより、
前立腺がん「経験記」。
その体験記を主治医の頴川晋(えがわしん)さんと
対談形式でまとめたのが、この本。
頴川さんは、東京慈恵会医科大学泌尿器科主任教授。

人間ドックでPSA値(腫瘍マーカー)が高かったことから、
生検(生体組織検査)を受け、がんが発見された。
この生検の話が笑える。
というか、さすが喜劇作家らしく、
随所に笑える対話が出て来る。
生検は、肛門に器具を差し入れて、針を飛ばして、サンプルを取る。
その機械の形状が「チャッカマン」に似ているのだという。
そして、音も「カチャッ!」という音。

(私の経験では、手術台に上がって、
顔に麻酔のマスクを付けられた段階で
眠ってしまったので、その「カチャッ!」は聞いていない。
三谷さんは聞いていたらしい。
私は睡眠薬を飲んだことがないので、
麻酔ガスもよく効いたのだろうか。)                                                               その肛門談義も笑わせる。

三谷 ただ、僕はこれまで人前でお尻を公開したことがなかったので、
   その衝撃というか、精神的なダメージはかなり大きかったです。
頴川 人前でお尻を公開する人はそうはいませんよ。
三谷 それから、自分で自分の肛門を見たことはないんですが、
   あんまり自信がなかったんです、おのれの肛門に。
頴川 肛門に自信のある人もそうはいませんね。

前立腺がんの治療法は、4つある。
手術、放射線治療、ホルモン療法(抗ガン剤治療)、監視療法。
三谷さんのがんは早期発見で低リスクだった。
放射線治療は週5日のペースで1カ月半。
照射は1回につき5分。
三谷さんは全摘出手術を選択。
その場合、勃起もしなくなり、射精もしないから、
子どもは作れない。
三谷さんはその前年、子どもを一人授かっていた。
ただし、三谷さんの場合は、
神経を残したので、
勃起機能は残った。

三谷 術後、最初に勃起したときはものすごくうれしかった。
   見せていいものなら、たくさんの人に見せたかった。

手術は2016年の1月。
トータルで6~7時間。
麻酔をかけて準備をし、
手術後麻酔が醒めるまでの待機時間を含むので、
手術自体は3時間くらい。
腹腔鏡手術で、おへそのくぼみの中をうまく切り、
それを含む4つほどの穴からカメラ(腹腔鏡)と器具を入れて手術をする。
(開腹手術という方法もある)
手術用ロボットのダビンチを使う。
三谷さんの場合、穴が開いているのに気づかないほどだった。

手術中は音楽を流す。
曲目の検定権は執刀医が権限を持っているという。
瀬川さんの場合、ユーミンの曲を流したという。
オペラやロックや浪曲、落語を流す人もいる。
落語は笑ってしまわないように、
何度も聞いている話を流す。

三谷 生歌は? ユーミン本人が横で歌ってくれるとか。先生の誕生日に。
頴川 それはうれしいですね。(笑)うれしすぎて集中できないかもしれない。

三谷 もうひとつ、術後にうれしかったことがあります。
   僕、臀部にちょっとできものといいますか、
   プチッとした吹き出物、ピッとイボみたいのできていて、
   それがずっと気になっていて・・・、
   手術前に「どうせ手術するんだったら、これもとってならえないですか?」
   と先生に聞いたじゃないですか。
   そしたら、「それは私の管轄外です」とおっしゃったのに、
   終わったらなくなっていた。
   その部分に絆創膏が貼ってあって。
頴川 サプライズプレゼントです。
三谷 追加料金は発生してないですか?
頴川 サービスさせていただきました。(笑)
三谷 ありがとうございます。

手術が終わった後、三谷さんは先生にショートメールを送ったという。
それもかなり長いものを。
「大河ドラマでいうと何話くらいですか」
「大体5話くらいでしょうか」

尿道に入れた管を取り除く時は、痛かったという。

全摘出手術の後は、尿失禁に苦しめられる。
(そうでない人もいる)
膀胱と尿道の間にあった前立腺を取り去ったので、
クッションが効かず、にじみ出てしまう。

頴川 排便排尿というのは小さいときからきちっと躾をされるじゃないですか。
   ある意味、人間の尊厳にかかわるんです。
   ですからそこがうまくいかないと、
   一気に自信が崩壊してしまいます。
   三谷さんだけでなく、
   手術された方は皆さん同じように心理的ダメージを受けています。

今、日本の男性の罹患数の1位は前立腺がんだという。
昔、「日本には前立腺がんはない」と言われた時代があった。
それなのに、なぜ前立腺がんが増えたのか。
その理由は、寿命が延びたから
昔は前立腺がんで亡くなる前に他の病気で亡くなっており、
別名「長生き病」ともいわれ、
高年齢の人がかかる病気だった。
つまり、長生きするだけ前立腺がんにかかる確立が高いのだという。
それとPSA検査の普及で、
前立腺がんが発見される確率が増加したのだという。
昔は前立腺がんが発見された時は、
骨に転移していて、痛くてたまらなかったという。

三谷さんは言う。
手術により、子どもをつくることは難しくなった。
「もう数年早くがんになっていたら、
息子はいなかったのだと思うと、
神様にすごく感謝しています」

2021年10月、この対談本を出版し、
前立腺がんであったことをを公表した。
前立腺がんは怖くない、
治る病気だ、
ということを伝えるために。

「癌」という言葉をやめて「ぽん」と言おうという運動についても触れている。

頴川 前立腺ぽん。
三谷 「オレ、前立腺ぽんになっちゃってさ」みたいな。
   すごく言いやすい。
   胃ぽん、大腸ぽん、肺ぽん、みんな印象が変わります。
頴川 国立ぽんセンター、ぽん研病院。
三谷 行きたくなるじゃないですか。