空飛ぶ自由人・2

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カミさんの「旅行」帰還

2023年03月30日 23時00分00秒 | 身辺雑記

昨日、カミさんが9泊10日の「旅行」から帰って来ました。
海外旅行ではなく、国内旅行。
どころか、市内旅行。
家から徒歩5分くらいのところに宿泊。
要するに、入院です。
面会禁止なので、旅行と同じ。

健康診断で、心臓が時々止まっている、との指摘を受け、
病院で器具をつけて24時間の心臓の動きを調べたところ、
確かに、夜中に4、5回、心臓が止まっている。
はじめ、睡眠時無呼吸症候群との関連も疑われるため、
CPAP治療のマスクを付けて寝ましたが、
寝つかれないと、2週間でギブアップ。
結局、ペースメーカーを付けることになったのです。

ペースメーカー。
名前は知っていましたが、詳しくは知らない。
要するに、不整脈により、
酸素を含んだ血液が脳に十分送られなくなり、
めまいや失神したりするのを防ぐため、
機械を体に埋め込んで、
心臓に電気信号を送り、
心臓が正常な拍動するようにする装置。


技術的には確立しており、
近代の技術革新が医学に応用された
最も成功した医療分野の一つと言われています。

ペースメーカー本体とリード線で構成され、
ペースメーカーから送られた電気信号を心臓に届けるのがリードの役割。
ピンポイントで拍動指示場所にどうやって固定するのでしょうか。

手術は2時間位で終わり、
その後、様子を見るため、1週間の入院生活
退院後は、普通に生活して構いませんが、
定期的に診察を受ける必要があります。
電波を発する機器との接触は注意。
携帯電話は15センチほど話せばよいそうです。

電池は長ければ10年(!)持つといいます。

私は、性分で、気になるので、
「亡くなった時はどうなりますか」
と訊くと、
返品の必要はなく、
そのまま焼却するが、
火葬場の係員には伝えた方がいい、
とのことでした。

カミさんは、1週間、ベッド生活。
退屈しのぎには、
娘のタブレットを借りて、YouTube番組や
ドラマを見ていたそうです。

支払い明細を見ると、
どうやら、費用は100万円くらいかかっているようですが、
高額医療費の最高限度で2万6千円くらいで済みました。
この制度のおかげで、費用の心配をせずに入院できる。
素晴らしい日本の保険制度です。

こんなものをもらいました。

組織もあるようです。

また、ペースメーカーを付けた人が身体障害者に認定される、
ということは、初めて知りました。
その申請に必要な診断書を病院に要請すると、
3週間ほどかかる、とのこと。
3週間
なんで、そんなにかかるのか。
更に、障害者手帳を県に申請すると、
手帳の交付までに、長短あるが、
平均して50日かかるそうです。
50日
どうしてそんなにかかるのでしょうか。
申請が殺到しているのか。
厳密な審査をするのか。

家では、この間、愛猫のこなつが、
「誰か足りない」
と不思議そうな顔つき。
カミさんが帰って来ると、
「あ、みんないる」
という感じで、
カミさんにすりすりしていました。

というわけで、
9泊10日の「旅行」から戻り、
ようやく「家庭」が復活
夫婦と娘、それに猫一匹。
通常の生活が戻りました。

 


連作短編集『霧の果て』

2023年03月29日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

藤沢周平による連作短編時代小説。
1975年から1980年にかけて
『小説推理』(双葉社)に断続的に連載され、
1980年に「出合茶屋 神谷玄次郎捕物控」と題されて、
双葉社より単行本化、
1985年に「霧の果て 神谷玄次郎捕物控」と改題して
文春文庫より文庫化されたもの。
藤沢周平には珍しい捕物帳
藤沢の捕物帳には、他に、彫師伊之助捕物覚えシリーズがある。

主人公は北の定町廻り同心・神谷玄次郎、28歳。
同心としては、勤務ぶりがよろしくなく、
仕事を怠けて、馴染みの小料理屋に入り浸る自堕落ぶりで、
同僚にも上司にも評判は芳しくない。
なにしろ、小料理屋の女将・お津世とは、わりない仲なのだ。
同心としては、はぐれ者なのに、
クビにならないのは、
事件が起こった時、鋭い勘と抜群の推理力を発揮して
解決するからだ。

8つの話で構成。
若い女性ばかり狙う変質者の連続殺人、
商家の子どもの誘拐事件、
嫁入り間近の娘の簪紛失と殺人、
浮浪者の物乞いの殺人、
長屋の老婆が殺され、金が盗まれた事件、
米屋の次男殺し、
誰かに見張られているから警護してほしいと望む商家の妻の話、
などが織りなす中、
縦糸として、玄次郎の家族の話がからむ。

というのは、父親も同心だったが、
ある事件を捜査している時、
妻と娘、つまり、玄次郎の母親と妹が斬殺される。
それは、父親の捜査に対する威嚇だった。
妻娘を失った父親は生きる気力をなくし、
1年ほど後に亡くなった。
事件の捜査は、
上からの圧力で沙汰止みとなった。
この14年前の事件
玄次郎の中に痛みとして残っており、
それが、古い記録が発見されたことで動き出す。
最後の2話は、その事件の真相が明らかになる。

深川あたりを舞台にした、
江戸情緒たっぷりの人情。
まるで、町の隅々まで知り尽くしたかのような情景描写。
確実に江戸時代に引き戻してくれる。
玄次郎の情人のお津世、岡っ引きの銀蔵など、
脇の人物も魅力的。

事件の中で、
乞食を殺した商人の、殺しに至る本当の気持ちの吐露が驚かされる。
また、老婆殺しの関連での大人の心を持つ子どもの不気味さや
米屋の次男殺しの下手人の心情など、
藤沢周平にしては、暗い情念が描かれるのも、ミソ。

江戸版ハードボイルドといった趣の好篇。
藤沢周平が海外の推理小説を好んでいたことはよく知られている。

これまでに3度テレビドラマ化されている。
1度目は1980年に東京12チャンネルで尾上菊五郎主演で、
2度目は1990年にフジテレビ系で古谷一行主演で、
3度目は2014年NHK・BSプレミアムで高橋光臣主演で放送された。

 


映画『アルゼンチン1985 ~歴史を変えた裁判~』

2023年03月28日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

1985年にアルゼンチンであった
軍事独裁政権を裁く裁判、を描く映画。

1976年の軍事クーデターにより、
アルゼンチンで軍事独裁政権が発足し、
国民に過剰な弾圧を行った。
軍は反政府ゲリラを壊滅させると称して
反体制派の人々の多くが逮捕、連行され、拷問され、殺された。
死者の数は3万人と言われる。

それから17年後の1983年、軍事政権が崩壊。
そして、1985年、
軍事政権時代の不法行為を裁く裁判が始まる。

新政府は裁判を決意したものの、
引き受ける検事がいない。
独裁を行なっていた軍人達はみんな生き延びているため、
彼等を告発する裁判を引き受けたら
軍人達に誘拐され殺されるかもしれないからだ。

主人公ストラッセラ検事も度重なる呼び出しから逃げ回るが
ついに引き受けるはめになる。
軍部への怒りが民意だと悟ったからだ。
彼の元に派遣された副検事ルイス・モレノ・オカンポ
裁判の経験がない新米。


手足となってくれるスタッフはみんな協力を断ったため、
オカンポは若者たちを集める。
彼等は軍と繋がりがなく、
民主主義に素朴な信頼と希望を抱いていたのだ。

準備期間が限られる中、
若者たちは手分けして、証言を集める。
検事らには、執拗な脅迫がなされる。
検事の自宅に不法侵入し、
脅迫状と銃弾が置かれている。
毎日の様に脅迫電話がかかってくる。

裁判が始まり法廷で被害者が証言する。
そのあまりの残酷さに、人々は胸を打たれる。
(法廷の様子はテレビ中継されていた。)
軍人達は何の関係もない市民を連れ去り拷問して殺害した。
中には、警察に連行される途中で出産し、
赤ん坊を抱くことさえできなかった女性も証言する。

ストラッセラ検事は臆病で、
最初はびくびくしていたが、
被害者の証言を聞き、
若者に包まれているうちに、勇気を獲得し、
脅迫にひるむことなく、
法の下での正義を追求していく。

その結果、軍政時代の幹部たちは、終身刑をはじめ、
実刑が課せられた。
中には無罪になった者もおり、
検事たちはそれが不服だった。
しかし、裁判に政治の介入はなく、
アルゼンチンが三権分立と民主主義を確立した歴史的裁判と言われる。
アルゼンチン国民は国民の民意で、
軍人独裁者を処罰したのだ。

終わり近く、検事による論告が圧巻
それは長い軍政時代の国民の恨みを晴らすもので、
正義が貫かれたものだったからだ。
法廷は拍手に包まれる。

映画はドキュメンタリー・タッチで展開する。
見応えがある。
先のゴールデン・グローブで外国映画賞を受賞した。
アカデミー賞では、国際長編映画賞にノミネートされた。

監督はサンティアゴ・ミトレ
脚本はマリアノ・ジナスとサンティアゴ・ミトレ
ストラセラ検事にリカルド・ダリン
副検事にピーター・ランサーニが扮する。

Amazon Primeで配信中。

 


門前仲町・大横川の桜

2023年03月27日 23時00分00秒 | 身辺雑記

今年の桜のお花見は、↓ここへ。

門前仲町には、50年近く前、2年ほど住んだことがあります。

黒船橋の側にある、

黒船神社の隣、

ここにあったアパートで、カミさんと二人暮らしを始めました

当時は木造。今は鉄筋です。

すぐそばの大横川の岸には桜並木が。

 

川沿いに遊歩道が出来ています。

おや、これは、

クルーズ船。

楽しそう。

こういう貸し切り船も。

お食事付。豪勢。

これは、金持ちの方。

今、地元で桜まつりが開催されています。

更に下流に行くと、両岸に桜並木が。

 

川に並行して、永代通り。

昔、ここを通って職場に自転車で通ったこともあります。

下町情緒あふれる路地。

時代小説の舞台です。

富岡八幡と

深川不動は、前に来ましたので、スルー。

お昼は、ここで、

ラーメン。

こんなに多くなくても、というくらいの量。

お腹いっぱいです。

 


短編集『驟り雨』

2023年03月25日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

藤沢周平の初期短編集。
1980年刊行。
既に円熟味を見せている。

10篇が収められているが、
全て市井もの。
商家を舞台にしたものは一つもなく、
全部が裏長屋に住む人々の哀歓を描く。

好短編集。


贈り物

六十を過ぎた作十は腹部に死病を抱えた日雇い。
痛みのあまり道端で動けずにいると、
同じ裏店に住むおうめが介抱してくれた。
おうめは亭主に逃げられ、女手一つで子どもを育てているが、
その亭主の借金を取り立てに来た男たちに、
女郎屋で働かされそうになっている。
作十はそれを見て、金は用意するから少し待てという。
作十は、昔の盗人仲間を訪ねて・・・
親切にしてくれた長屋の女に報いようとする
老人の切ない物語。

うしろ姿

六助は酔っぱらうと誰構わず人を連れてきてしまう、女房泣かせの悪癖があった。
今度六助が連れてきたのは、乞食ばあさんだった。
女房のおはまは数日だけ預かり、
その後出て行ってもらうつもりでいたが、
ばあさんは居ついてしまう。
六助とおはまは、そのばあさんの姿に、
悔恨を残す母への扱いを思い出す。
やがて、おばあさんの息子だという商人が訪ねて来て・・・

ちきしょう!

夜鷹のおしゅんは今夜、一人も客が付かない。
子供が病気なのでその薬代を稼がなければならないのだ。
そこに酔った万次郎がやってきて、おしゅんの客になるが、
金を持っておらず、
事が終わると逃げてしまった。
仕方ないので家に帰ると、子供は死の間際だった。
しばらくの後、おしんは町で万次郎の姿を見つけ・・・
10作中、最も悲惨な物語。

驟り雨(はしりあめ)

小さな神社の軒下に盗人の嘉吉が潜んでいた。
目星をつけた商家に入るつもりが、
雨に降られてしまったのだ。
同じ軒先を様々な人が訪れ、嘉吉に気づかず
人間模様を繰り広げる。
子どもが出来たと女に告げられておののく男。
分け前を巡っての男同士の争い。
最後に、病期の母子の姿を見て、嘉吉は・・・
場所も時間も限定した話で、
最後に救われる。

人殺し

長屋に伊太蔵という疫病神が住み着いた。
狂暴で横暴な限りを尽くす伊太蔵に、
長屋の者たちはうつむき加減に暮らしている。
若い繁太は、伊太蔵にやり返さない意気地無しの長屋の連中を見て、
ある決心をするが・・・
人々のためと思ってした行為が
歓迎されない悲哀。

朝焼け

博奕にはまった新吉は、賭場からの借金が七両に膨らんでいた。
胴元から返済日を区切られ、
金を借してくれそうな当てを考えたとき、
最後に一人の女の顔が浮かんできた。
それは、お品という、新吉が七年前に裏切り、捨てた女だった。
お品は意外とすんなり金を貸してくれたが、
この借りた金を再び博打ですってしまう。
胴元は新吉が返せないのがわかると、
ある条件を出し、
その結果、新吉はとんでもないことをしてしまう・・・。
たった一人の自分を愛してくれた女に気づく、最後が哀しい。

遅いしあわせ

飯屋で働く出戻りのおもんは、
客の桶職人・重吉のことが気になっている。
おもんには極道者の弟がいて、
離縁の原因にもなったのだが、
その弟が無心に来て、
店の裏口で言い合いとなったのを、
重吉に見られてしまう。
おもんは弟の30両のかたに女郎に売られそうになるが、
そこへ重吉が現れて・・・

運の尽き

女たらしの参次郎は、米屋の一人娘をたらしこむが、
父親の大男が現れ、
娘の婿になってくれるなんて、ありがたいことだと言って、
参次郎を連れて行き、
参次郎は米屋で強制的に働かされてしまう。
やがて、歳月が過ぎ、
一人前の商人になった参次は、
昔の遊び仲間を訪ね、
自分が変わってしまったのを悟る。
あの日が運の尽き、良い方向への運の尽きだったのだ。
笑える、後味の良い作品。

捨てた女

歯磨き売りの信助は、
頭がのろい矢場の女・ふきと同情で結ばれるが、
博奕にはまって金が無くなった時、
金のある女の元に転がり込む。
ふきを捨てたのだ。
やがて殺人をして島送りになった信助は、
戻って来た時、ふきとの生活をなつかしみ、
消息を探るが・・・
捨てた女への愛情に気づいた男を描いて、切ない。

泣かない女

錺職人の道蔵は、
出戻りの親方の娘お柳と体の関係が出来、
女房と別れるつもりでいた。
足の悪いお才に同情して一緒になった道蔵は、
女房に何の未練もなかった。
別れ話を切り出すと、
泣き狂うと思われたお才は、
あっさりと認め、静かに家を出ていった。
雨が降って来て、傘を持ってお才を探す道蔵は・・・
泣かない女の泣かせる話。

どの作品も、読み終えたあと、
ページを閉じて、余韻に浸る、
短編小説を読む醍醐味を味あわせてくれる。
うまい寿司の時、
一つ食べた後、
次に箸を向かわせず、
じっくりと味あうのに似ている。

やはり、藤沢周平はいい

篇中、
「遅いしあわせ」は、
2015年、BSフジで、
檀れい主演でドラマ化された。