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「非小泉化した安倍」とは正しいのか? -安倍政権の評価
安倍晋三が総理とよばれるようになって、まもなく4カ月になろうとしている。わずか4カ月という思いもあって、それだけにこの時期にその力量をうんぬんするにはためらいがある。だが、割り切っていってしまえば、安倍をとりまく状況はまさに内憂外患といえるだろう。
たしかに安倍はヨーロッパ、中国、韓国を訪問した。また、先の東アジア首脳会議では、拉致問題の解決のために努力することを盛り込んだ議長声明の確認に「成功」した。
こんな経過があるからだろうか、つぎのような論評が新聞に掲載されており、それを目にした。それは、とくに小泉時代の東アジアでの孤立状況から脱出したかのように主張したものだ。
論評とは日経新聞(1・21)「風見鶏」の記事だ。「小泉外交を対米従属、アジア軽視を批判した人は、安倍外交を評価しないと一貫性を欠く」という大上段に構えた書き出しではじまるこの記事は、つづけてつぎのようにのべている。
彼らが求めた対米自立、アジア重視を意外にも安倍晋三首相が実践した。2006年9月に就任、アジアを3回訪れたが訪米はまだない。
この記事は、日本側の離米の姿勢を強調しているのだが、その論拠にしているのは、以上にみられるような米国以外を初外遊先とした歴代首相の訪米した時期の比較だ。これによると、安倍が訪米を予定をしても早くて(連休の)4月末だから、これは鈴木善幸の就任10カ月後につぐ遅れだと指摘する。しかし、このことを根拠にはたして離米の証拠といえるのだろうか。
外交だから、もとより関係国の思惑がそれぞれある。東アジアで拉致問題が声明に盛り込まれた背景には、日本の意図がどうであれ、それとは別に、たとえば中国の、そして韓国の外交的な思惑がそこにあったはずだ。それにあえてつけ加えるならば、拉致問題が具体的に何かが前にすすんだわけでは決してない。これをもって「アジア重視を意外にも安倍首相が実践した」と「日経」の論評が言い放つのは早計にすぎるだろう。
何よりも私が不思議に思うのは、安倍の離米をこの論評がとりわけ強調することだ。「小泉外交を対米従属、アジア軽視を批判した人は、安倍外交を評価しないと一貫性を欠く」と断言するには、安倍政権が対米従属でなく、アジア重視であることが証明されなければならないだろう。だが、「非小泉化」とは、とてもいえない安倍政権のこれまでである。私は率直にこう思う。
むしろ、安倍政権においても対米従属の関係は依然として維持されていると私は思う。それだけではなく、当ブログでは再三のべてきたつもりだが、アメリカの世界戦略のもとに目下の同盟者としての役割を日本は忠実に果たしているように思えてならないのだ。例をあげると、補助金まで出して米軍基地再編をすすめる政府の精神性は何なのか、あるいは対日年次要望書を受けてつぎつぎに分野を広げ規制緩和をすすめる精神性は何なのか、これほどまでにアメリカにひれふす日本の姿が私は不思議でならない。実態は、喜八さんがいうように日本はアメリカの属国なのである。論評は、意図的かどうか定かではないが、この点を明確に欠落させている。
それだけではない。東アジア共同体をほんとうに日本政府が考え視野に入れているいるのかどうか。私はいまだに確信がもてない。朝日新聞社説(1・16)が「東アジア 同床異夢の船旅だが」という社説をかかげたが、私のいまの感想はこれに近い。この社説はつぎのようにのべていた。
13カ国案を掲げて主導権を握ろうとする中国。これを牽制(けんせい)するため、インドなどを加えた構想を推し進める日本。一連の会議は、東アジア共同体をめぐって日中が異なる絵を描き、今の段階では中国が押し気味であることを印象づけた。
しかし、もともとが遠大な構想である。10年やそこらで実現するものでもない。目先の星勘定に一喜一憂するのでなく、それぞれが共同体づくりに向けて知恵を出し合っていけばいい。
少なくとも東アジアにおいて日本のイニシアチブが発揮されているとは誰も思っていないのではないだろうか。
安倍首相を取り巻く環境は、就任以来の閣僚をはじめ安倍が任命した人物にまつわる「不祥事」が安倍自身の任命責任を顕在化させ、あるいはたとえばタウンミーティングのやらせ質問にみられる前政権からの尻拭いなど、きわめて厳しい。教育基本法は無理やり成立させたものの、「教育再生会議」の議論の無内容性など、ことごとく公表してきた政策が「期待はずれ」であり思い通りに運んでいないのは、衆目の一致するところだろう。その最たるものだが、ホワイトカラー・エグゼンプションは打ち上げたものの提出することすらできなかった。つまり、このほぼ4カ月の内政は芳しいとはとてもいえない現実がある。
現在の日本の政治状況を以上のように考えるならば、この「日経」の論評は特異ではないか。世論調査の結果では、支持率の低下が著しい現内閣である。記事は安倍カラーをどこかに見出そうとして、外交の「非小泉」ということにいきついたのだろう。
だが、現実にはわれわれの前に現われているのは、よりアメリカに寄り添う安倍政権の姿勢である。その意味では、「日経」のこの記事がいう「非小泉」とは誤認だと指摘せざるをえない。本来、ただしく今の政治状況をとらえるための判断材料を国民に提供するのがジャーナリズムの使命だと思うのだが、国民をミスリードするように思えてならない。
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訪中は経団連にでも応えたんでしょう。
>本来、ただしく今の政治状況をとらえるための判断材料を国民に提供するのがジャーナリズムの使命だと思うのだが、国民をミスリードするように思えてならない。
ミスリードくらい進んでするはずです。利益に繋がるなら。
自分とこに一昨年の記事を再掲しましたが、民放のアメリ化は完了しているようです。大新聞も怪しいものです。
こうした日米の違いを、日本の反安倍勢力がどのように利用すべきか、私にはわかりませんが、日米矛盾を突いて攻勢をかけるべきとの認識は必要でしょう。
それにしても、反安倍(時間限定でもいいから→)護憲統一選挙協力を野党は参院選で組めないものでしょうか。民主党の「生活維新」選挙では、小泉郵政一点張り選挙の二の舞になるような気がしています。出でよ、坂本竜馬。つくろう、ブロガーズ竜馬。
>千年虫さん
>アメリ化はすっかり定着したから、あとはゆっくりやればいいとタカを括っているのか? それとも米民主党との関係が薄いので擦り寄り方を模索しているのか?
訪中は経団連にでも応えたんでしょう。
どうなんでしょうね。よく分かりませんが。ただ、今の局面で東アジアを優先させたほうがよいという判断でしょう。何しろ参院選前ですから。点数をあげたいという思い、安倍が追求している拉致問題もあるでしょうから。
>ミスリードくらい進んでするはずです。利益に繋がるなら。
一昨日のエントリーでふれたのですが、少なくとも「権力監視」がまったく薄弱化しているのは確実です。「民放のアメリ化」が完了しているかどうかは、私にはよく分かりません。今後ともよろしく。
>土曜日の各駅停車さん
>対北朝鮮政策においてアメリカは軽視、日本は拉致問題もあり強硬姿勢を採らざるを得ないという違いはあるのは否定できないように思います。
まったくご指摘のとおりだと思います。上のコメントに示したように諸外国訪問は選挙前の行動として位置づけられているでしょうから、安倍のたっての主張にしたがって対北強硬姿勢をあらためて示し、形になるものが欲しかったのは事実でしょう。その点がアメリカとのスタンスの違いではないでしょうか。
「日米に亀裂発生の可能性」があるのかどうか、私にははっきりしませんが。ご指摘のような差異がすでにあるのは受け止めといていいのではないでしょうか。
>こうした日米の違いを、日本の反安倍勢力がどのように利用すべきか、私にはわかりませんが、日米矛盾を突いて攻勢をかけるべきとの認識は必要でしょう。
決定打かどうかは別にして、昨年の北朝鮮ミサイル発射事件、核実験の際にとくにヨーロッパ諸国に顕著だったと私は思うのですが、外交努力=対話を重視する方向です。そこに依拠する必要があると思います。国際的に孤立するアメリカの実情があるのですから、それに日本が追随することがあれば国際的な批判は高まるでしょう。
世論を高めること、国際的な世論喚起が重要な気がします。
日米安保、軍事同盟にたいする細部の考え方は護憲勢力の中でも異なりますから、この点でいますぐ一致とはならないのでしょう。
まず護憲という点で共同を広げることだと思います。改憲潮流の背後にはアメリカがいるのですから。この点で日米の関係をとらえて護憲を主張することだと思います。