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麻生・御手洗・小沢・橋下の「意外な共通点」
では、この新しい自民党の党首をどのようにみているのでしょうか。
経団連のホームページには、ごく簡単な見解が公開されています。
5人の候補者がそれぞれ政権構想を示し、オープンに突っ込んだ議論を交わした総裁選だった。今後は麻生新総裁の下、挙党体制で現在の難局に臨んでほしい。
今、国民が求めているのは、足下の景気の立て直しとともに、諸制度を大胆に見直し閉塞感を一掃することである。麻生新総裁には、信念を持って、税・財政・社会保障制度の一体改革などに正面から取り組み、進むべき道筋を示していただきたい。これによって、国民の理解と支持が高まっていくと思う。 |
見解の核心は、
税・財政・社会保障制度の一体改革などに正面から取り組み、進むべき道筋を示していただきたい |
というところにあります。
つまり、麻生氏は、昨日のエントリーでものべたように、この財界の要求から逃れることはできません。結局、増税と社会保障抑制だから、要求にこたえるかぎり、国民との矛盾はいっそう深まることになるでしょう。
総裁選の最中に、御手洗富士夫経団連会長が「日本経済の現状と課題」と題して講演しています。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/speech/20080917.html
同氏は今後の課題に4つの点をあげています。そのなかに、税・財政・社会保障の一体改革がもちろん位置づけられています。
肝心の改革の後の明るい将来像が描けないまま今日に至ってしまっているのではないでしょうか。特に、骨太方針は本来、歳出、歳入、成長をセットで改革するものであったはずが、歳入面での改革が遅れておりますし、また、原材料価格の急騰という、当時予想されなかった市場の激変などによって成長戦略にも大きなブレーキがかかっております。ここに来て、歳出のカットが半ば自己目的化して、セーフティーネットでさえ綻びが目立つという事態に陥っており、国も地方も、疲弊が目立っております。 そこで、今一度、今後の改革を一体的に展望し直す必要が出てきています。 すなわち、歳出の中で最大のウエイトを占め、国民生活の安心を支えるために最も重要な社会保障制度と、これを持続可能にするための歳入面の改革、すなわち税制抜本改革、そして、それらと並行して、先進国最悪の財政状況を少しずつ改善していくという、3つの改革を一体的に考え直すことが急務となっています。 |
引用部分の冒頭の「改革」とは小泉の構造改革を指しています。ですが、圧力をかけ、自ら構造改革を後押ししてきた経団連が、「歳出のカットが半ば自己目的化して、セーフティーネットでさえ綻びが目立つ」などというのはまったく無責任といわざるをえません。
詳細は、講演要旨をご覧いただきたいのですが、
世界各国では法人実効税率の引下げ競争が繰り広げられています。先進国で、実効税率が40%に取り残されているのは、昨年までは日本とアメリカとドイツでしたが、今年ついにドイツも税率引下げを断行し、30%となっております。その結果、EUの平均では28%となっておりまして、わが国でも税制抜本改革において10%程度の引下げを実現していくことが必要 |
だとして法人税減税をさらに求める一方で、消費税引き上げを臆面もなく要求しているのです(*1)。
すでに麻生氏が総裁選の中で消費税に言及し、選出されてのちに再び、口にするのは、財界の意向を受けてのことです。3年据え置き発言は、単に選挙向けのものだということだけでなく、消費税増税のためには、自公だけでやるのではなく、民主党の同意が不可欠との判断が働いているので、民主党に向けたものだといってよいでしょう。
御手洗氏は、講演の前段で、日本経済の現状にふれています。
そこで、氏は、つぎのように語るのです。
わが国経済は、足もとで停滞の度合いを強めております。 ただし、景気がこの先、底割れしてしまうとまでは考えておりません。 その理由としては、まず、雇用、設備、負債という、いわゆる「3つの過剰」は完全に解消されており、全体として筋肉質の企業体質が構築されていることがあります。すなわち、設備投資が大幅にマイナスになる可能性は低く、雇用に過剰感がないため、リストラに発展する蓋然性も高くありません。したがって、今回の景気停滞局面における調整圧力は、それほど大きくはならないと考えられます。 |
かくいう御手洗氏ですが、先の今後の課題の4つ目に道州制の実現をあげ、日本経済の停滞局面で、いっそう財界・大企業の思い通りになる構造改革を求めています。
道州制導入のねらいの一つには、単に都道府県の再編ではなく、国の仕事を外交・防衛などに限定し、地方自治を根底から破壊する改革をめざすということです。もう一つは、地方の経済・行政を「広域経済圏」として再組織し、グローバル化のなかで国際的競争力を維持・拡大できるように、企業の新規立地や投資拡大が可能となる条件をつくろうとするものです。
九州出身の御手洗氏は、講演でも九州をとりあげ道州制にむけた世論作りに熱を入れていますが、その財界戦略を、地で行くひとりが橋下大阪府知事であって、再三、道州制に言及しています。
その橋下氏は、麻生総裁誕生にあたって、こうコメントを残しました。
http://www.sponichi.co.jp/society/flash/KFullFlash20080922076.html
大阪府の橋下徹知事は22日、自民党の新総裁に麻生太郎幹事長が選出されたことを受け、記者団に「僕の立場としては、地方分権をお願いするしかない」と強調、「国民の期待は大きいと思う。気さくな人柄で、正直お願いしやすいというところはある」と期待をにじませた。
麻生氏が積極的な財政出動を訴えてきた点については「国の費用で対策を打つということなので、(予算を)もらえるなら要求しないといけない」と述べた。 |
一方では、こんな発言も報じられています。
http://news.livedoor.com/article/detail/3825024/
橋下氏は17日の記者会見で、次期衆院選に関連し「今の段階では民主党のほうが地方分権に力を入れており、感銘を覚える」と述べた。民主党が国庫補助金の一括交付金化など、具体的な地方分権案を打ち出したことを評価した発言だった。 |
昨日のエントリーで、自民党政治を特徴づけるのは、財界・大企業の圧力と、盟主米国の圧力であって、麻生も、小沢もこのくびきから解放されることはない、とのべました。
この点からすると、麻生氏と経団連、そして小沢・民主党、橋下氏と一見、何の関係性も存在しないかのようにみえながら、一連の報道でみえてくるものがあります。
ようは、麻生、小沢・民主、橋下の政治的な立脚点が通底しているということです。
それはあるときには表向き対決しているかのようにみえながら。
(「世相を拾う」08185)
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*1; 「日本の税収構造を見ますと、法人所得課税と個人所得課税がそれぞれ約3割、消費課税が3割弱、そして資産課税が1割強という比率になっています。つまり、所得課税が6割を占めており、景気の変動などに対して、非常に脆弱な構造、不安定な財政基盤になっています。欧州諸国などを見ますと、大体、消費課税が約4割から5割で、所得課税の比率が低いことが特徴です。
欧州諸国が消費課税に軸足を置く税体系を目指しているのには、いくつかの理由が考えられます。
まず、消費税は、所得課税に比べて経済活動への影響が中立的であり、景気変動によって税収が大きく増減することが少なく、安定的という特徴があります。また、国民全体が広く薄く負担することから、社会保障制度といった、国のセーフティーネットなどを支えるのに、ふさわしい税目といえます。さらに、日本の将来の成長はグローバル化とともにあるわけですが、消費税は日本の利益の源泉である輸出製品に対しては、基本的にはかかりませんので、国際的なコスト競争で不利になることもありません。
ちなみに、OECD諸国で消費税率が一桁に留まっているのは、日本以外にはカナダとスイスだけであります。欧州ではECの指令で標準的な税率が15%と示されておりまして、英・独・仏では、約20%の税率となっています」。