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棋聖天野宗歩の端攻め

2006年03月19日 | 棋譜
今回は天野宗歩を紹介します。
最新の戦型をインプットしてあげれば、現在でもA級八段で通用する器だと思います
将棋世界の「将棋論考」で、真部九段が、捌きのアーティスト久保八段を比較に使って、「久保は宗歩並みに捌く」と言ったことがありますが、これから紹介する棋譜は、アーティストどころではありません(笑)

日付不明、斉藤長三郎-天野宗歩の香落ちより。
天野宗歩と言えば、遠見の角や片矢倉が有名ですが、天野宗歩を並べたことがある人なら、香落ち上手の捌きの方が印象に残っているでしょう。
      
第1図は下手の速攻が決まり、香損ながらも竜を作ったところ。
▲2四歩が見えているので、下手十分と思われますが・・・

第1図以下:△1六飛(途中図)▲3六歩△2三歩▲1七歩△3六飛▲4六歩△同飛▲2三龍△4二金▲2五龍△7六飛▲7七歩△7四飛▲2四歩(第2図)

△1六飛。はっきり言って意味が分からないと思う
直接的には△2六香を見せて、▲2四歩を牽制。間接的には△7六飛で下手の角筋を遮断し、△4五歩を実現する。
△1六飛で戦えるという読みと発想自体がスゴ過ぎる
下手は▲3六歩の手筋で応戦、▲3ニ歩が生じるので△同飛とは出来ない。上手は△2三歩以下、△7六飛を実現させ、角筋を遮断させることに成功した。

第2図以下:△8四飛▲9七角△4五歩▲2三歩成△4四角▲7五角△7四飛▲6六角△同角▲同歩△8四飛▲8八銀(第3図)

▲2四歩の瞬間、△8四歩が利いた。▲2三歩成なら△8五香で上手優勢。
仕方ない▲9七角に待望の△4五歩で、以下角交換に成功した。
第3図から宗歩の得意技が炸裂する
      
第3図以下:△9五歩▲同歩△9八歩▲同香△9七歩▲同香△9八歩▲7六角△1三桂▲同と△9九歩成▲同銀△7五香▲8八銀△7六香▲同歩(第4図)

▲8八銀と備えたところに△9五歩、見た目△4三角の1点狙い
下手の▲7六角が絶好のようだが、△1三桂でと金をそっぽにやり、△9九歩成~△7五香がその上を行く返し技。▲2一角成なら△3ニ銀~△4三角。取られて当然の桂と下手の竜の代わりに手に入れた香で角を入手した。
      
第4図以下:△9八歩▲3五龍△3二銀▲4四香△3三金▲4二香成△3四金▲2六龍△4四角▲5六龍△9九歩成▲同銀△3八角▲4七歩△2九角成▲3二成香△4六歩(第5図)

第4図以下も手順を紹介しておきます。2枚角を放ち△2九角成~△4六歩が急所。
△5四桂があるので、この歩は取れません。完全に筋に入ってます
      
本局は143手まで宗歩勝ち。下手も悪手らしい悪手は無かったと思うのですが、宗歩の盤面を縦横無尽に使った捌きが見事でした。