眠らない街

将棋、サッカー、スノボ、マンガとちょっぴり恋愛話など。

森安だるま流のオクトパスホールド

2005年12月01日 | 棋譜
「時間がない時にこういうことやられると、神経がすり減りますね」
森安秀光に不幸が襲った時の寄稿で、中原名人はこう語った。

「振飛車とは相手を1回間違えさせるゲーム」というのが私の持論
これは相手の間違いを期待するという意味ではない。
体力、脳力を疲弊させ、相手の集中力を徐々に奪う中終盤が振飛車の醍醐味であり、テクニックである
1手の好手や勝負手で間違えさせるのではない。伏線を張って徐々に相手を追い込んで行くのがThe振飛車なのだ

1984年9月6日、王座戦第1局の中原-森安。
第1図は桂頭を攻めた△7五歩に対し、▲5五歩で竜の横効きを通したところ。
ここから中原の竜は「だるま流のオクトパスホールド」で締め上げられて行く。名人中原が脱帽した手順を紹介したい

第1図以下:△3五馬▲4七竜△3四馬▲2一竜△3二銀打▲1一竜△4四角▲3一竜△5三角▲1一竜△2一歩(第2図)
      
駒得、駒効率で振飛車有利だが、玉頭を戦場にするのは竜の潜在力が恐い。
まず△3五馬で2枚竜を分断。そして△3二銀打が意表を付く。竜を逃げるしかないが△2一歩で竜の身動きが取れなくなった。
桂頭に注意を向けさせて、一転して竜に狙いをつける手順が「だるま流の芸」。以降、振飛車が優位を拡大して行った。

第3図は本局の終盤。寝技も必要だがスパッと差す「終盤の足」も必要だ。だるま流は足も速かった。
      
第3図以下:△6九角▲8八玉△6八桂成▲同金△同竜▲同飛△7六桂

守備駒をはがして上部に追うのが分かり易い。端の勝負手も消して、後手玉が安全になっている。本局は154手で森安勝ち。

スーパー四間飛車以降の振飛車ではめっきり消えてしまったが、森安だるま流は私の考える振飛車の醍醐味が満載だった。
今、こういう個性ある振飛車党がいないのが残念だ

#こういうニオイを残すのは大ちゃんだけ!残留してね~(笑)