この映画、鉦鼓亭にとって、ずっと不思議な映画でした。
僕が映画を観てたのは17才~26頃。
30年の歳月が過ぎた今、改めて自身のベスト10(洋画)を考えてみると、
1.「フォロー・ミー」2.「ひとりぼっちの青春」3.「誓いの休暇」、以下順不同、
「アメリカの夜~映画に愛をこめて~」、「狼は天使の匂い」、「ローマの休日」、
「第三の男」、「冒険者たち」、「甘い告白」、「カサブランカ」辺りでしょうか。
「狼は天使の匂い」
1973年 (米・仏)
監督 ルネ・クレマン
出演 ジャン・ルイ・トランティニアン、ロバート・ライアン、レア・マッサリ
DVDはフランス語版(「LA COURSE DU LIEVRE A TRAVERS LES CHAMPS」(
ウサギは野を駆ける)、多分、こちらの方が正統版なのかも、公開当時、この言葉
は何回か耳にしてる)、でも、日本で公開されたのは英語版でタイトルは「・・・AND
HOPE TO DIE」、僕はこのタイトルで憶えてました。
「禁じられた遊び」、「太陽がいっぱい」のルネ・クレマン最晩年の作で、アメリカ
西部劇のスター、R・ライアンの遺作でもあります。
この映画が僕にとって「不思議な映画」と云うのは、過去の映画を思い浮かべた
時、この映画が自分にとって絶対外せない映画と認識してるのに、その内容が30
年経った今、殆ど思い出せない。(笑)
記憶では、これ映画館で2,3度、TVで2度位見てるんですけど、見る度にどん
どん良くなっていって忘れられない映画になってた・・・はずなのに。
大体、僕が観た1000本近い映画のリストでも、今となっては覚えてるのが50本
位、笑ってしまう程いい加減なモンなのですが、自分のベスト10に入れようって映
画の内容が全然解らないのは、我ながら説明のできないおかしな事でした。
地味な映画だったからDVDのないのは自身納得してたのですが、去年、知らぬ
内にDVDが出てました(笑)、で、条件反射で密林をポチッ。
今日(22日)、それが届き、早速観てみたところ。
カナダ・モントリオールを舞台にしながらフィルム・ノワール(フランス暗黒街モノ)、
ハード・ボイルドを装いながらウェット、バランスが不安定な感じがするのに妙にど
っしりしてる、何か不思議な感覚の映画、そう、この感覚と雰囲気だけは憶えてまし
た。
そんな中で繰り広げられる、多彩な芸達者達の素晴らしいアンサンブル、特に老
境のR・ライアンと僕が大好きなJ・L・トランティニアンの演技、2時間以上の映画に
も拘らず、どんどん引き込まれていきました。
この映画の記憶が無くなっていた、これは、どんなに書いても言い訳にしかなら
ないのですが、今、見ても解り難い。(笑)
自分の記憶では銀行強盗とその末路な話だと思ってたんですが(A・パチーノの
「狼たちの午後」と混同してた)、少しだけ違ってた。
決してブニュエル、フェリーニ、ゴダール、ベルイマン、タルコフスキーみたいな難
解と云う種類の映画ではないのですが、最初の2,30分、説明のないまま話が進
んで行くので何が何やら良く解らない、ライアン達が何を計画してるのかなんて1時
間経っても全然解らない、結局、最後までR・ライアンは仲間に入れたトランティニア
ンの過去を知らぬまま終わってる、多分、それは、それ程重要ではない、と云う事
なのだと思います。
観客は何でか知らんがロマ(当時はジプシーって言ってた)に執拗に追われてる
トランティニアン、追われてる最中に偶然、ライアン一味の大事なモノを握ってしまう、
その為、一味のアジトに連行されてしまった。
それ位の筋さえ解ってればいい、みたいな。(これじゃ30年したら忘れちまう)
極端に云えば、ストーリーと云うより、この映画の持つ雰囲気(登場人物達の心の
動きと醸し出す雰囲気)にどっぷり浸れば、それで良しなんですよ、この映画。
「狼は天使の匂い」、犯罪映画をベースにしながら、大人の男がいつまで経っても
持ち続ける、無邪気な子供心を描いた作品です。
そして、一歩間違えれば臭くてしょうがなくなる話を昇華させてるのは、熟練の演
出と達者な俳優陣に尽きると思います、色気専門と思ってたR・マッサリも凄く良い
し(ここでも色気担当だけど)、ライアンの子分達もそれぞれ存在感を感じる。
謎めきながらも、実際はありきたりな話を見事に「男の御伽噺」にしている、さすが
にクレマンだと思うし、ライアンの渋い演技にはアカデミーあげても全然文句ない。
惜しむらくは、これ男専用の作品かな、一言で云えば「究極の連れション」映画。
あと、1度観ただけだと本当の良さが解らない、ちょっと長めの映画だから、その辺
はツライかも、その代わり、観た回数だけ底なし沼のように嵌まります。(好みが合
えば)
「明日に向かって撃て!」、「俺達に明日はない」をフィルム・ノワールにしたら、こ
んな感じになるのかも、あ、それに「アラモ」のジム・ボゥイ(R・ウィドマーク)も。
恥ずかしい話、今日、再見して泣きました、こんなに泣けたのって何時以来だろう
と思うくらい。
(H23・6・11追記
映画に出てくる、ジプシーの意味が解らないという人が多いので。
ジプシーは「死の象徴」なんです、つまり、「死神」を表現してる、今風に言えば「死亡フラッグ」というやつです。
「黒いオルフェ」(マルセル・カミュ監督・1959年・仏)という映画にも、突然、脈略もなく「死神」が出てきますが、あれは、「死」というものには、何の意味もない「不条理な死」も一杯有るという事を示しているんだと思います。
(例えば、ビルのタイルが剥がれて下を歩いてた子供の頭に当たって死んだ、みたいな理屈の外にある死)
この映画のトランティニアンは、要するに「死神」に憑り付かれた人間なんです。
橋の上でトランティニアンとジプシーが偶然出会う、あれも、ジプシー=死神なんですからオカシクないんです、死神に憑り付かれた人間は、何処に逃げても「突然、目の前に死神が現れる」のですから。
その「死神」が「ジプシー」だろうが「マフィア」や「警察」だろうが本当は関係ない、偶々、「映画」の構成上、それが「ジプシー」の姿になった、そういう事なんです)
※どっかのサイトで「鏡の国のアリス」をベースにしてるって見たし、実際、公開時、
そんな事を読んだ気がします、只、どこが「アリス」なのか全然解らない(笑)、人物
を対で配置してるって事かな・・・?
※これぞ正真正銘のアメリカ人、R・ライアンがフランス語喋ってる(吹き替え?)の
は違和感が有る(笑)、まあ、他の人達が仏語喋ってるのは、カナダだからいいんだ
けど。
※これを見直した結果、1.「フォロー・ミー」2.「ひとりぼっちの青春」3.「狼は天使
の匂い」4.「誓いの休暇」以下順不同になりました。(ただ20年前に戻っただけの
気もするけど)
※DVDパッケージには仏・伊合作って書いあります、公開時の資料を元にしてるは
ずの僕の映画ノートには米・仏合作って書いてある、観た後の感覚では自分の方が
正しい気がする。
僕が映画を観てたのは17才~26頃。
30年の歳月が過ぎた今、改めて自身のベスト10(洋画)を考えてみると、
1.「フォロー・ミー」2.「ひとりぼっちの青春」3.「誓いの休暇」、以下順不同、
「アメリカの夜~映画に愛をこめて~」、「狼は天使の匂い」、「ローマの休日」、
「第三の男」、「冒険者たち」、「甘い告白」、「カサブランカ」辺りでしょうか。
「狼は天使の匂い」
1973年 (米・仏)
監督 ルネ・クレマン
出演 ジャン・ルイ・トランティニアン、ロバート・ライアン、レア・マッサリ
DVDはフランス語版(「LA COURSE DU LIEVRE A TRAVERS LES CHAMPS」(
ウサギは野を駆ける)、多分、こちらの方が正統版なのかも、公開当時、この言葉
は何回か耳にしてる)、でも、日本で公開されたのは英語版でタイトルは「・・・AND
HOPE TO DIE」、僕はこのタイトルで憶えてました。
「禁じられた遊び」、「太陽がいっぱい」のルネ・クレマン最晩年の作で、アメリカ
西部劇のスター、R・ライアンの遺作でもあります。
この映画が僕にとって「不思議な映画」と云うのは、過去の映画を思い浮かべた
時、この映画が自分にとって絶対外せない映画と認識してるのに、その内容が30
年経った今、殆ど思い出せない。(笑)
記憶では、これ映画館で2,3度、TVで2度位見てるんですけど、見る度にどん
どん良くなっていって忘れられない映画になってた・・・はずなのに。
大体、僕が観た1000本近い映画のリストでも、今となっては覚えてるのが50本
位、笑ってしまう程いい加減なモンなのですが、自分のベスト10に入れようって映
画の内容が全然解らないのは、我ながら説明のできないおかしな事でした。
地味な映画だったからDVDのないのは自身納得してたのですが、去年、知らぬ
内にDVDが出てました(笑)、で、条件反射で密林をポチッ。
今日(22日)、それが届き、早速観てみたところ。
カナダ・モントリオールを舞台にしながらフィルム・ノワール(フランス暗黒街モノ)、
ハード・ボイルドを装いながらウェット、バランスが不安定な感じがするのに妙にど
っしりしてる、何か不思議な感覚の映画、そう、この感覚と雰囲気だけは憶えてまし
た。
そんな中で繰り広げられる、多彩な芸達者達の素晴らしいアンサンブル、特に老
境のR・ライアンと僕が大好きなJ・L・トランティニアンの演技、2時間以上の映画に
も拘らず、どんどん引き込まれていきました。
この映画の記憶が無くなっていた、これは、どんなに書いても言い訳にしかなら
ないのですが、今、見ても解り難い。(笑)
自分の記憶では銀行強盗とその末路な話だと思ってたんですが(A・パチーノの
「狼たちの午後」と混同してた)、少しだけ違ってた。
決してブニュエル、フェリーニ、ゴダール、ベルイマン、タルコフスキーみたいな難
解と云う種類の映画ではないのですが、最初の2,30分、説明のないまま話が進
んで行くので何が何やら良く解らない、ライアン達が何を計画してるのかなんて1時
間経っても全然解らない、結局、最後までR・ライアンは仲間に入れたトランティニア
ンの過去を知らぬまま終わってる、多分、それは、それ程重要ではない、と云う事
なのだと思います。
観客は何でか知らんがロマ(当時はジプシーって言ってた)に執拗に追われてる
トランティニアン、追われてる最中に偶然、ライアン一味の大事なモノを握ってしまう、
その為、一味のアジトに連行されてしまった。
それ位の筋さえ解ってればいい、みたいな。(これじゃ30年したら忘れちまう)
極端に云えば、ストーリーと云うより、この映画の持つ雰囲気(登場人物達の心の
動きと醸し出す雰囲気)にどっぷり浸れば、それで良しなんですよ、この映画。
「狼は天使の匂い」、犯罪映画をベースにしながら、大人の男がいつまで経っても
持ち続ける、無邪気な子供心を描いた作品です。
そして、一歩間違えれば臭くてしょうがなくなる話を昇華させてるのは、熟練の演
出と達者な俳優陣に尽きると思います、色気専門と思ってたR・マッサリも凄く良い
し(ここでも色気担当だけど)、ライアンの子分達もそれぞれ存在感を感じる。
謎めきながらも、実際はありきたりな話を見事に「男の御伽噺」にしている、さすが
にクレマンだと思うし、ライアンの渋い演技にはアカデミーあげても全然文句ない。
惜しむらくは、これ男専用の作品かな、一言で云えば「究極の連れション」映画。
あと、1度観ただけだと本当の良さが解らない、ちょっと長めの映画だから、その辺
はツライかも、その代わり、観た回数だけ底なし沼のように嵌まります。(好みが合
えば)
「明日に向かって撃て!」、「俺達に明日はない」をフィルム・ノワールにしたら、こ
んな感じになるのかも、あ、それに「アラモ」のジム・ボゥイ(R・ウィドマーク)も。
恥ずかしい話、今日、再見して泣きました、こんなに泣けたのって何時以来だろう
と思うくらい。
(H23・6・11追記
映画に出てくる、ジプシーの意味が解らないという人が多いので。
ジプシーは「死の象徴」なんです、つまり、「死神」を表現してる、今風に言えば「死亡フラッグ」というやつです。
「黒いオルフェ」(マルセル・カミュ監督・1959年・仏)という映画にも、突然、脈略もなく「死神」が出てきますが、あれは、「死」というものには、何の意味もない「不条理な死」も一杯有るという事を示しているんだと思います。
(例えば、ビルのタイルが剥がれて下を歩いてた子供の頭に当たって死んだ、みたいな理屈の外にある死)
この映画のトランティニアンは、要するに「死神」に憑り付かれた人間なんです。
橋の上でトランティニアンとジプシーが偶然出会う、あれも、ジプシー=死神なんですからオカシクないんです、死神に憑り付かれた人間は、何処に逃げても「突然、目の前に死神が現れる」のですから。
その「死神」が「ジプシー」だろうが「マフィア」や「警察」だろうが本当は関係ない、偶々、「映画」の構成上、それが「ジプシー」の姿になった、そういう事なんです)
※どっかのサイトで「鏡の国のアリス」をベースにしてるって見たし、実際、公開時、
そんな事を読んだ気がします、只、どこが「アリス」なのか全然解らない(笑)、人物
を対で配置してるって事かな・・・?
※これぞ正真正銘のアメリカ人、R・ライアンがフランス語喋ってる(吹き替え?)の
は違和感が有る(笑)、まあ、他の人達が仏語喋ってるのは、カナダだからいいんだ
けど。
※これを見直した結果、1.「フォロー・ミー」2.「ひとりぼっちの青春」3.「狼は天使
の匂い」4.「誓いの休暇」以下順不同になりました。(ただ20年前に戻っただけの
気もするけど)
※DVDパッケージには仏・伊合作って書いあります、公開時の資料を元にしてるは
ずの僕の映画ノートには米・仏合作って書いてある、観た後の感覚では自分の方が
正しい気がする。
コメントありがとうございます!
作品への想いがバンバン伝わって来て>
ありがとうございます。
心底、好きな作品ですから。(笑)
その癖「鏡の国のアリス」を読もうとしない。(爆)
チュシャ猫がどういう存在なのか解かると、もっといいと思うんですけどね・・・。
女性陣>シュガーもいいし、ペッパーもいい、それに正体不明の良家のお嬢も特殊な雰囲気があって良かったです。
仰るように女性陣も100点。
トニーとペッパーが逃げる辺りから、ちょっと「カサブランカ」っぽい感じがします。
(どちらも思い入れのある作品だからだと思いますが)
トニーがリックでペッパーがイルザ、チャーリーが署長。(笑)
昔の合作表示は確かに結構いい加減。(笑)
只、この作品に関しては試写会時のチラシや雑誌「ロードショー」等を参考にしてる筈なので、当時は、米仏合作と表示されてたと思います。
(記事にも書いてありますが、僕が観てたのは「・・・AND HOPE TO DIE」のタイトルで英語版です~英語版は若干短いとか)
ホットな気持ちになるような感じでした☆
>※どっかのサイトで「鏡の国のアリス」をベースにしてるって見たし、
>実際、公開時、そんな事を読んだ気がします、只、どこが「アリス」なのか全然解らない(笑)、
>人物を対で配置してるって事かな・・・?
一番最初のシーンが「鏡」だったのと、引越しの荷物が運ばれると例の猫がいて、
その猫と同じのが、最後に撃ちあいになる看板の下の部分から出てきたのと、
最初の方でその原作者の人の詩のような文章のようなモノが出てきたこと、
等が、その理由の中にあるような気がします♪
> ※DVDパッケージには仏・伊合作って書いあります、
>公開時の資料を元にしてるはずの僕の映画ノートには米・仏合作って書いてある、
>観た後の感覚では自分の方が正しい気がする。
ネットでも、オンエアのNHKでもフランスとイタリアの合作になっています。。。
私「合作」の事は、全体的に結構いい加減な感じで思っています。
今は権利関係が厳しい時代でキチンとやるんでしょうけど、
まぁこの作品な結構最近に近い方ですが、大昔の作品などは声の大きいヒトの勝ちって感じで(爆)受け止めています。
お好きな作品だから、細かい点も気になられるのですね~???
2年前、見直した時に思ったのですが、
映画の最初のほうに、飛行機事故の写真が数枚、フラッシュ・バックで出て来ますね、
写真一枚に使ってる時間が1秒くらいなんです、
それを見て、「あ、話の筋は、それ程、重要視してないんだ」と感じました。
お客さんに解ってもらいたかったら、あの倍は秒数使うと思うんです。
で、「これは、やっぱり筋よりも雰囲気を楽しむ映画」なんだと。
(今の時代は別ですよ、あれくらい、しょっちゅうだから。あの時代の話としてです)
したたかで一筋縄でいかないチャーリーとトニー、
律儀なリッツィオ、
トンマなマットーネ
二人の男の間で揺れ動くペッパー
一途なシュガー
このメンバーを見てるだけで、僕は嬉しくて、楽しくて、そして、泣けてきちゃう。(笑)
この映画は、僕にとって、そんな映画です。
そちらに「蜘蛛巣城」の事で、もう一度、投稿しようと思ったのですが、連投になるので、こちらに書く事にします。。
どうも、解りづらい書き方をしてしまったようで・・・。
黒澤組でバイト>そんな恐ろしい事、してません!(笑)
僕が東宝に行ってたのは‘75~’78年に掛けてで、黒澤さんの長いブランクの時なんです。
でも、黒澤組だった人達が、まだ、何人か残っていて、録音の矢野口さんも、その一人。
仕事中、バイトの定位置はステージ入り口横、大概、録音室の前なので、話す機会が多かったんです。
世間話のような雑談ばかりでしたけど。
男性の方が嵌る作品なんですね。他にもこの作品を大好きな方を知ってますが、やはり男性です。
ジプシーの解釈はホントわからなかったので、鉦鼓亭さんの解説ありがたかったです。「黒いオルフェ」ではわかりやすかったけど、これもそのタイプだったんですね~。
確かに雰囲気だけは、初見でも伝わってくるものがありました。機会があったら再見してみます!