セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「完全なる報復」

2013-07-21 20:44:50 | 映画日記/映画雑記
 「完全なる報復」(「Law Abiding Citizen」2009年・米)
   監督 F・ゲイリー・グレイ
   脚本 カート・ウィマー
   撮影 ジョナサン・セラ
   音楽 ブライアン・タイラー
   出演 ジェイミー・フォックス
       ジェラルド・バトラー
       レスリー・ビブ

 「まァ、面白かった」が、率直な感想。(スイマセン)

 面白い、上手い、と思った所。
・犯人への復讐を最初に果たしてしまう構成。
・関係者が一人々々始末されていく過程の描写が、中々、サスペンスフルだった。
 (その意味で検事長をボニー&クライドにした場面は「手の内」を見せすぎで×)
・最初から最後まで緊張感が緩まなかった演出は良かった。

 「う~ん?」な所
・この作品のテーマは「司法取引」の不合理。
 クラウドは「復讐じゃない、腐った司法制度と戦ってるんだ」と言明しています。
 でも、これではクラウドと関係者だけの世界で完結していて、犯人の望むメッセ
ージは、(観客に伝わっても)市民・国民には何も伝わってない。
 非常事態宣言が出される重大事案で、クラウドに「自由」が有る状況なのだか
ら、何で自分のメッセージをDVDにするなりしてメディアへ送らないんだろう?
 大手メディアは自己検閲するかもしれないけど、アメリカにはケーブルTVが一
杯有るしイエローペーパーも沢山有る、幾らでも犯人の動機と標的を周知する手
段はあるはず。
 (それによって、司法・治安関係者の為の「非常事態宣言」という不合理も告発
できる)
・司法制度への挑戦が目的なら「市の幹部」を標的にするのは筋違い、ワシントン
の司法省でしょ。
 (市民には法の遵守を例外なく押し付けるのに、市長・判事は窮すれば安易に法
を蔑ろにするシーンで事足れり、と思ったのなら甘い)
・作劇上、或いは「世の不条理」を出す為?に、担当検事と家族を生き残らせたの
は(映画として)正解なのか。
 (そもそも、担当検事は犯人、弁護士に次ぐターゲット(多分、実質的には二番目)、
長い恐怖と改心が目的とは言え作劇上の都合としか感じない)
・結果、一言でいえば「言いたいテーマがボヤけてる」

 個人的な所
・最近、僕は「人間の心の揺らめき」と、それが展開されるドラマに強く興味が有りま
す。(「さよなら渓谷」のような)
 残念ながら復讐劇と言うのは、感情が一直線なので、余り関心が向かないジャン
ルになってしまいました。
 アラ探しのような感想になってしまったのは、それが原因の一つだと思います。
 リクエストして頂いた方には申し訳ないのですが、「映画」に関しては、なるべく率直
な感想を書く事にしていますので、お赦し下さい。
 決して「ツマラナイ」作品ではありませんでした。

 今回の「お題」が復讐劇のようでしたので、一緒に「追想」(1975年)も借りてきて、
今日は久し振りの2本立。

 「追想」(「Le vieux fusil」1975年 仏・西独)
   監督 ロベール・アンリコ
   脚本 ロベール・アンリコ パスカル・ジャルダン
       クロード・ヴェイヨ
   音楽 フランソワ・ド・ルーべ
   出演 フィリップ・ノワレ
       ロミー・シュナイダー
       ジャン・ブイーズ

 戦時下、撤退間近のナチスに妻子を惨殺された男の復讐戦。

 同じ監督の「冒険者たち」における要塞戦を長くしたような映画なのですが、「完全
なる報復」より、もっと「どっちつかず」になってしまった映画。
(昔、観た時は、それなりに高得点の評価だったのですが)
 冷酷な復讐と個人のセンチメンタルを融合させたかったんだろけど、「水と油」を上
手く按配出来なかった。
 本来あるべき強烈なカタルシスを、アンリコ&ド・ルーべの持つ「甘さ」が見事に邪
魔してしまった気がします、やはり「冒険者たち」というのは絶妙なバランスだったん
だなと、この作品を観て感じました。 
コメント (8)
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