「苦海浄土」
石牟礼道子 著
読んでみたかった本。
水俣病を綴った本。
詩人の言葉で、潜るように自然と呼応し、
それぞれの漁を生業としていた人たちの
呼吸を感じ取り、言葉を起こしていく。
悲惨の現実のなかの人間の性(さが)。
通じていく事柄。
例えばイジメ、またはウイルス、そして戦争、暴力。
さまざまな死の連鎖は慟哭をはらませて、
はち切ろうとする。
そのなかでもある美。
見詰めるもの、そして見詰めること。
触れられるもの、優しさの理由。
閉塞された世界の果てはミクロの世界。
言葉は人をキャッチする。
書いたまたは放つ言葉は言動として本性となる。
言葉により性質が変わっていくのなら、
罪の現存から手を伸ばせることもできる。
言葉を交わす、それは時に体をも触れ合わす。
もともとに
あった手触りが
コロリと変わる
今いる場所は
かなしみ
後ろ姿の
君のお尻と
はなしてる
弾かれるか
はなしてみる
君から教えてもらった星の名前
今もそこにある星座
カシオペア
オリオン
同じ位置に瞬き続ける
季節ごとにまわる
まわるまわる星座
君はいない
僕の隣にいない
あの頃と違うのは君との関係
ポンコツの車と
アベコベの靴はそのまま
大人の僕はタバコを吸う
ホットコーヒーを飲んで
口笛をふく
星をみながら君を想って涙おちたら
君はとんでくるのかな
困った顔のほっぺたふくらませて
それとも怒るかな
だめねとほほえむかな
僕の星 君の星君の星
子供たちが手をふる
傷口からこぼれるのは
吐きだせずにいた叫び
閉じこまれていく瞳の湖
湖は次第に小さく浅く
渇いていく唇はわずかな水を求める
私が悪いの
私のせいなの
表情は空にうつり
空は何もこたえなかった
からっぽになっていく心身の豊さ
太陽や月の光はうばわれていく
私は、
ちっぽけな私は神様に願ってしまった
誰もいない
私は、
私の何かが消えていく
はじめからなにもなかったかのように
生まれてきたことを罰しているかのように
信じるってあたたかいって
私は、
この世は荒れ地の全て
見つけられなかったきれいなもの
見つけたかった荒野の中の
きれいなもの
私は、
私は私を好きではない
私はあなたが好きだった
私は私を心の中に閉じこめる
それでいいのと夢と現の間で涙がでる
私は今とても寒い
がまんができないくらいに
とても寒い