ひとりは怖く
そしてひとりで
踊る
呼吸は溺れ
息が苦しく
心ほど
わからないものは
ないんだ
何層もの
僕らのフィルター
「ペスト」
カミュ 著
宮崎嶺雄 訳
ペストを読んでみようとおもった。
日々示される感染者数、死亡人数と
数によって表されるその表面はうすくなり、
内にこもったそれぞれの内実は起こりながらも、
目の前に触れるまではとおい幻となる。
幻はすぐそこの未来。
それは誰もが体験し経験している。
震災や災害にまた身近な死生に、
殺人に犯罪に、または外国のいろめきに
個から家族へ国から世界へ、そして個同志の愛。
淡々とした文章で出来事が進んでいく。
今この時に読んだからこそ共感し、共有できる。
ペストからはじまりおわるその時までを
むかしといまがつなぐ。
不条理のなか、
人々の持つ声はゆき場をなくし、
囲われた町で迫る死と、人の尊厳と、
単純に催される喜怒哀楽のこもごも。
愛に立ち返られるのか、
愛した人の所以とは、
離れた人のカタチはその場の情景に忙殺され、
つないだ手は何をつなぐ。
振り返り見えた愛する人の手を。
立ちはばかる社会、人間、そしていずれは天へ。
世界は変わらず在り続け
世界は変貌を余儀なくする。