とうの昔に溺れていた
逆さに落ちていく水の底まで
底のない水の底まで
意識下に組み込まれた
緑の守護神は
底の底で目を光らせる
目なのか口なのか光らせる
沈んでいくゆりかごの中で
水の色に染まっていく瞳
遠くから沈みゆく
近づいてくる足音は
聞き覚えのある音の音
砂で埋もれた弾力で
それは確かにきこえていた
耳の鼓膜をふるわせる
よきせぬ来訪者
これはよきせぬらいほうしゃ
浮遊力で散らばる髪は
幻想模様の結晶となり
近づけそうで近づけない
気泡が見事に飽和する
水で奏でる美しさ
水に沈みゆく美しさ
来訪者の歩く美しさ
すれ違う肩と肩のぶつかりは
遠心力を波とさせ
重力を渦とさせ
びくんと意識の盲目と
まぶたの奥が微熱をおび
目覚めを知らぬ魚が泳ぐ
待ちわびていた来訪者
青をおびた爪の色
沈みを止めるためでなく
ただ一度の会いたさに
これが夢か幻とも
沈みゆく水の底まで