「華味鳥」を出て、A社の2人と別れた。コンビニでノートを買おうと思ったら、すぐそばに「ローソン」が見えた。店に入ろうとすると、隣接して、「お酒の美術館」があった。
お、これか。噂に聞く、「お酒の美術館」とやらは。
しかも立ち飲みか。
これはちょっとスルーできないな。
ノートを買って、「お酒の美術館」に入った。お店は混んでる訳ではなかったが、そこそこ人がいて、ちょっと空いているスペースに滑りこませてもらった。
ポジションするなり、お店の人が近づいてきて、「お久しぶりです」という。よく分からなかったが、自分もおうむ返しに「お久しぶりです」と言った。ものすごい美人の店員で、ちょっとドキドキする。凛とした佇まいで、只者ではないことは明らか。一流のホテルやバーで修行してきたのではないかと思わせる立ち居振る舞い。モノトーンのバーテンダーユニフォームが決まっている。まさしく麗人だ。
「何ヶ月ぶりかしら?」と尋ねられて白状した。
「初めてです」と。
「え? ◯◯さんにそっくりで」。
彼女は相当驚いている。
どうやら博多には、自分のドッペルゲンガーがいるらしい。
洋酒は苦手だから、まずクラフトビールをオーダーした。銘柄は失念したが、「IPAって言った覚えがある。「MURAKAMI SEVEN IPA」だったか。
まずはクラフトビールで様子を見た。自分の右横に立つ御仁と目があい、話しかけた。長髪に伸び放題のひげ。自分より若そうだが、浮世離れしてみえた。仙人のようであり、哲学者にも見えた。面白い人で、お酒にも詳しかった。知識が豊富で話しが面白い。特に哲学者ディオゲネスの話しが興味深かった。初対面の自分にも、なんの衒いもなく馬鹿なリアクションをする。麗人は、この人を師匠と言った。
その師匠に倣って、洋酒をいただくことにした。自分は洋酒を好んでなく、正直よく分からないと、素直に言った。
すると、彼がチョイスしてくれなのが、「MORTLACH」の12年もの。これをストレートでもらった。
フルーツの香りとフレーバーが微かにあり、おいしい。安酒しか飲んだことかわなく、ただ自分が知らないだけで、洋酒は随分と奥行きが深いのだろう。
しかも、時間が経つごとにそのテイストは変わっていった。
「空気に触れることでテイストは変化します」。
麗人が言う。
これは衝撃だった。
そして、仙人は巧みな言葉で、「MORTLACH」の良さを表現した。
「お酒の美術館」はローソン併設で全国に拡大している。ローソンオーナーを中心にFC展開しているようだ。コンビニは随分前から、中食で収益を増やす戦略をたてている。セブンがイートインを増やしているのはその最たる例である。ローソンは酒場併設が中食拡大の一手段としたのか。しかし、安酒の酒場にしたら、女性や子どもらが敬遠する店舗になる。だから、ある程度格調のあるバー形態にしたのかもしれない。角打ちが文化になっている西日本なら受容されやすいだろう。おつまみなどをローソン店舗から調達できることが、どれだけ中食などの売り上げに貢献しているかは分からないが、ともあれ、コンビニ併設とは思えないバーのクオリティにはただただ驚くのみ。
お酒はおいしく、麗人と仙人のおかげで楽しい時間を過ごせた。4ヶ月前は深酒で失敗し、今回はもう同じ間違いは繰り返せない。今宵はこれにて終了。
いつかまた麗人と仙人に再会できるだろうか。次の博多が今から待ち遠しい。
洋酒は奥が深いけれど、なかなかハードルが高いですね(笑)。老後は趣味のいい小さめのチェストを買って好きな酒を並べたミニバーのコーナーを自宅に作って暮らしたいと思っているので、ウイスキーの銘柄には興味があります。今のところアードベックを並べようと思っているんです。
ミニバーですか。
いいですね。
アードベックはスコティッシュですか。
これはいきなりすごい。
がぶかぶ飲んできたお酒ですが、そろそろ大人の飲み方をしたないと思っています。
少しずつという感じでしょうか。