小田急線の代々木八幡駅周辺には居酒屋が少ない。
もちろん、立ち飲みもない。一度、駅の周囲をくまなく見たことがある。
最近、A藤君と行動することが多く、この代々木八幡に来ると、中華料理の「一番」でスパイシーな「砂肝」をつまみに、発泡酒を飲んだりしていたが、この日は、居酒屋に行こうということになって、ボクらは居酒屋を目指した。
居酒屋選びについて、誰もが失敗したくないと思っている。
だが、その居酒屋選びの基準は人によって、まちまちだ。
ましてや、ボクもA藤君も居酒屋には一家言を持っている。ストライクゾーンは更に狭くなる。だから、居酒屋選びは極端に難しくなるし、その居酒屋選びでクリーンヒットを飛ばしたことがない。
何故か。
それは、いつも居酒屋選びが妥協の産物だからだ。
この日に入った「札処」も、「ここでいいか」と入ったのである。代々木八幡駅の周囲で唯一雰囲気がよさげな「うら裏」という居酒屋は開店が18時から。まだ17時を回ったばかりのボクらにとって、1時間近くも待つなんてことは考えられなかった。
地下一階にあるという「札処」。
これが実に怪しい。エレベーターで地下に降り、ドアが開け放たれた入口を入ってみても、客はおろか、店の人の姿も見えなかった。
なんと無用心なのだろう。
店は明らかに開店しているが、人が誰もいないというのは、初めての経験だった。
しばし、席に座って待っていると、やがて店の主人が戻ってきた。どうやら買い物に行っていたらしい。
格子天井に木製テーブル、ビルの地下だが、大衆居酒屋の体をしている。
メニューをざっと見上げる。どうやら串焼きが得意のようだ。
生ビールをいただき、メニューにある「スパイシーチキンのサラダ巻」、「山芋のオムレツ」を注文した。
店はご主人がひとりで切り盛りをしている。はじめはボクらしかいなかった客も少しずつ増えていき、1時間もするうちに店は満員となった。
12、3人の客がいるだろうか。それを主人がひとりでさばいている。
当然、注文した料理がなかなか出てこなくなった。創作系ともいえる料理はいずれもおいしかった。山芋はボクの好物だったし、チキンはやや臭みがあったが、これは致し方ない。
大衆居酒屋大好きのボクとA藤くん。そのA藤君に「どうだった?」と聞くと、「えぇ、まぁまあですかね」という答え。
ボクも似たような感想だった。
多分、来ていくうちに馴染んでいきそうな酒場だと思う。これは男も女も同じ。
ただ、最初のデートで印象を与えられなかっただけのことだと思う。
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