またしても秋津の駅を降りてしまった。
やっぱ、この街に躰が勝手に引き寄せられてしまう。不思議な磁力。
この小さな街に集まる立ち飲みはいずれもアクが強い猛者ばかり。こんな濃い街をボクは他に知らない。
全ての立ち飲みに挨拶したはずなのに、一店舗回りそびれた店があるということを、ボクは誰から聞いたんだっけ。
「 Tienda」っていうスタンディングバー。
その「Tienda」という店もやはり一筋縄ではいかなかった。
カウンターにもずらりと並んだ洋酒のボトル。カウンターの向こう側の棚にもぎっしりと列を作っている。
壁に各国の札が無造作に貼られ、いかにもバーという雰囲気を醸す。ある意味では秋津らしくない。ディープなおっさんらが大挙する秋津にあって、恐らくおっさんは来ないであろうというシチュエーションだ。
「ホッピーちょうだい」なんて、とてもいえる雰囲気ではない。
名刺代わりのギャグで言ってみたい気もするが、冗談と受け止められないかもしれない。そんな雰囲気すら漂う。
店主らしき人は気さくだが、ボクはこのテンションにはついていけなくて、雰囲気に気圧された。
ビールも外国のボトルビールがいくつか用意されている。
その中からメキシコの「SOL」を選んでみた。太陽のマークが眩しい黄金色のビールである。
辛口のドライ。ドライっていてもスーパードライのような味気ないものではなく、酸化したフルーツカクテルのような外国産独特のあとを引く味だ。
隣に立つ御仁は店主と仕切りに漫画の話しをしている。音楽はアメリカンロックだ。
ボクはトルティーヤチップスをかじりながら、落ち着きないような素振りでボトルビールをラッパ飲みした。この歳になると気取って飲むのはやたらと疲れる。だから、スタンディングバーやバルっていうカテゴリーはあまり好きではない。
だから、この時のボクはあまりリラックスできていなかった。
隣のお兄ちゃんが時折、話しかけてくる。明らかにボクより年下であろう。うるさくもなかったが、ここは如何せん、アウェイ感が漂っていて、どうも気の利いたことがいえない。そうやって、いるとやっぱりどうしても疲れてきちゃうのだ。
カウンターに使用されている木が一風変わっている。光沢のあるライトブラウン。光り方がタイガートパーズのような独特の光り方でそれはそれできれいである。
1杯だけ飲んで帰るのも気がひけたが、これ以上無駄なお金は使いたくなかった。
輸入ビールは高いのだ。
それまで秋津はワンダーランドだと評価していたが、やはりスタンディングバーはそれほど面白くなかった。でも、これはお店が悪いわけじゃない。このリズムに乗れなかったのは自分のほうなのだ、
でも、こういう店は2軒目として女の子と来るに限る。
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