月日が経つのは早い。また今年も千住大橋の駅に降り立つ日が来た。28年目の4月25日。ここ数年は平日だったから、千住大橋には夜に訪れていた。だが、今年は週末。昼下がりに駅を降りた。
「荒井屋酒店」。店は開いているが、角打ちは休止。立ち飲みの「八っちゃん」はシャッターが閉まっている。千住大橋の北詰、やっちゃば入口まで歩いた。いつか行った「きよし」が見える。店自体、まだあることに少しホッとする。自分を「55歳でしょ」と言った、あのおばあちゃんはお元気だろうか。
28年前のあの日と同じように、空は晴れ渡っていた。
〽️ぼやけた瞳で彼はあの日をのぼった〽️
人生最後の日を唄った、この歌は、コンクリートの色がイメージとしてつきまとう。こんな長閑な春うららかな陽気では決してない。やっちゃばの小路をゆっくりと歩く。あぁ、自分はすっかりおっさんになってしまい、こっち側の人になった。あの頃の自分と、当時心の地図の中にいた彼との距離はずっとずっと遠くなっているように思う。だけど、その距離を唯一測ることができるのが、この日なのだ。
小路を線路沿いに歩き、北千住へ。
どこか一軒くらい店はやっているだろうと踏んでいたら、本当に一軒きりだった。「天七」も「千住の永見」も閉まっていた。唯一、開いていたのが、「幸楽」である。
お店に入ると、かなりの人が酒を飲んでいた。パッと見、5,6人。長テーブル席相席で。何の心の準備もしていなかったので、「瓶ビール」をオーダー。ところが、瓶ビールはキリン、サッポロ、アサヒの3メーカー。キリンをチョイスすると「ラガー」と「一番搾り」を尋ねられる。
「幸楽」に来たのは確か3度目。後で自分のブログを確認したら、初めて来た時はまだ瓶ビールの種類はキリンラガー1種類のみ。それが7年前である。
さて、つまみは何をいただくか。壁のメニューを眺めたが、今一つ決まらない。このビール後の展開を含めて考えなければならないのだが、そのビジョンが読めない。日本酒なら、刺身をとるが、この日は夕飯を作らなければならず、あまり酔っては帰れない。ここは「チーズフライ」と「ハムカツ」で。
「チーズフライ」、当たり!
うん、うまい。ビールによく合う。
確かにこの店は3回目の訪問のはずだが、ブログ内を検索しても出てこない。あれは何年前だろうか。Y澤さんと昼飲みしたはずだ。
さて、次の展開を考えようとした時、正面ひとつ向こうのテーブルに座る人の飲みものが見えた。琥珀色の炭酸。もしや下町のハイボールじゃねえか。短冊メニューを見ると、「幸楽ボール」(300円)がある。あ、そうだった。ここには「ボール」があったんだ。すっかり忘れていた。7年前もしっかり飲んでいた「ボール」。最初から、これにすればよかった。
「ボール」。
うまし。これをオーダーしてから急に楽しくなった。「ボール」もタンブラーになみなみ注いでくれる。その心意気が嬉しい。
「ボール」を3杯飲んで終了。
前半は緊張したが、後半は「ボール」のおかげで楽しくなった。居酒屋の要素はやはりつまみより、飲み物なのだと思う。
自粛要請のさなかに咲いた北千住、一輪の花。
〽️彼は最後に祈った、全て許されることを〽️
「真魚」さん、三密ですか。
アルコール消毒してるので、大丈夫?!といったところでしょうか。