4月いっぱいの閉店が決まっている「六文そば 昌平橋店」。その一番人気のメニューは、「ゲソ天そば」である。
多分、これが最後になるだろうと4月最終週のある日の午後、店に出かけた。前週とはうって変わり、客が詰めかけている。椅子席に2名。カウンターに2名。自分とほぼ同時に店に入った客を入れるとカウンターに4名。結構、密な状態だ。その同時に入店した若い客が先にオーダーを告げる。
「ゲソ天ダブルでそば」。
え?そんなオーダーができるのか。多分、ゲソ天を2個のせるという注文だと思うのだが。若いのになかなかやるな。
さて機先を制された感じで、やや気後れするのだが、自分は普通に、「ゲソ天そば」(360円)で。
黒い出汁に鎮座するゲソ天。こんもりとしたその姿はなかなかゲソ天には見えない。かき揚げをいただいた時も思ったのだが、この店の天は、天ぷらというよりもフライに近い。サクサクした食感はパン粉のようなものを混ぜているような衣である。その独特の揚げが、この昔ながらの出汁とマッチングし、多くのファンを獲得してきたのではないかと思う。
さて、後続の客が次々と入店してくる。その客らのオーダーは決まったように、「ゲソ天そば」だった。たった360円の金字塔。最後の一杯を噛み締めるように頂く。うまい。最後だから、という気持ちが、また更にうまさを引き立てているようだ。
このうまい出汁とそば、そして種物が受け継がれることはないのか。
店を構えて半世紀。その灯りがまた消えようとしている。東の「あきばそば」が閉業し、今度は西の「六文そば」。路麺天国のアキバは今後どうなるのか。コロナ渦の影響とともに極めて不安だ。
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