PACIFIC JAZZ/PJLP-11/CHET BAKER/CHET BAKER SINGS/10inch
僕が初めてチェット・ベイカーを聴いたのは大学の一年生の時で, ジャズを意識して聴き始めてまだ一年にもなっていない頃だった。当時下宿から歩いて15分のところにある東横線の駅から渋谷に出て行って買ったのは記憶しているが店の名前は全く思い出せない。レコードは一般的にはまだ大変高価だったので、それらの中で特に安いPhonogram Jazzコレクション・シリーズの1100円(発売当初は1000円だったが後で売値が上った)は大変有難かった。いつもレコード・ショップへ行くとそのシリーズのコーナーに一番に取りついたものだ。下に写真を掲載したのが、渋谷で買ったフォンタナ(LIMELIGHT原盤)のBABY BREEZE/CHET BAKERで僕が初めて聴いた彼のアルバムだ。この中でチェットのボーカルが5曲聴けるが、僕にとっては初めて聴く中性的な声質に最初は正直とまどった。こういうボーカルも有りかという程度であまり心が動かなかった覚えがある。その後しばらくは聴く事がなかったアルバムだが、それから半年後ぐらいにあることで気持ちが滅入っていた晩に安いウイスキーを薄い水割りにしてなめる程度に飲みながら何気なくチェットのアルバムをターン・テーブルに載せて再び聴いた。最初のボーカル曲である“ボーン・トウ・ビー・ブルー”を聴いた時になんて物悲しくて暗くて陰気で黒いボーカルと思ったのだが、しばらく聴いていると気が滅入っているのは僕だけじゃなく彼も相当滅入っているんだろうなという同調的感覚になってきた。その時から不思議に彼が当時の僕の気持ちを理解してくれている友人のような存在になったのだ。その晩以来しばらくは、このアルバム内のケニー・バレルのギター伴奏で歌うYOU'RE MINE, YOUには特にはまって何回聴いたか分からないぐらい聴いた。今でもシュリンク・カバーがかかったままのアルバムだが, 盤も全く傷みなく極上の状態で聴けるのがちょっと自慢したくなるぐらいだ。
それから30年以上あとになって自由に使えるこづかいに多少は余裕が出てきた頃に冒頭の10inchを入手して聴く事ができた。チェットのボーカルは僕が学生だった頃よりももっと心に沁みてくるようにさえ感じる。この10inch盤ではどの曲も彼の持ち味が充分にでているが、僕はその中でも特に I Fall In Love Too Easily を聴くと4畳半の下宿にいるような気になる。チェット・ベイカー彼ほどもの悲しく男の心が歌えるボーカリストはいないと思う。聴く時はいつもよりボリュームを少しおとして聴くとさらに良い。10inch盤よりもフォノグラム盤の話ばかりになってしまった。
僕が初めてチェット・ベイカーを聴いたのは大学の一年生の時で, ジャズを意識して聴き始めてまだ一年にもなっていない頃だった。当時下宿から歩いて15分のところにある東横線の駅から渋谷に出て行って買ったのは記憶しているが店の名前は全く思い出せない。レコードは一般的にはまだ大変高価だったので、それらの中で特に安いPhonogram Jazzコレクション・シリーズの1100円(発売当初は1000円だったが後で売値が上った)は大変有難かった。いつもレコード・ショップへ行くとそのシリーズのコーナーに一番に取りついたものだ。下に写真を掲載したのが、渋谷で買ったフォンタナ(LIMELIGHT原盤)のBABY BREEZE/CHET BAKERで僕が初めて聴いた彼のアルバムだ。この中でチェットのボーカルが5曲聴けるが、僕にとっては初めて聴く中性的な声質に最初は正直とまどった。こういうボーカルも有りかという程度であまり心が動かなかった覚えがある。その後しばらくは聴く事がなかったアルバムだが、それから半年後ぐらいにあることで気持ちが滅入っていた晩に安いウイスキーを薄い水割りにしてなめる程度に飲みながら何気なくチェットのアルバムをターン・テーブルに載せて再び聴いた。最初のボーカル曲である“ボーン・トウ・ビー・ブルー”を聴いた時になんて物悲しくて暗くて陰気で黒いボーカルと思ったのだが、しばらく聴いていると気が滅入っているのは僕だけじゃなく彼も相当滅入っているんだろうなという同調的感覚になってきた。その時から不思議に彼が当時の僕の気持ちを理解してくれている友人のような存在になったのだ。その晩以来しばらくは、このアルバム内のケニー・バレルのギター伴奏で歌うYOU'RE MINE, YOUには特にはまって何回聴いたか分からないぐらい聴いた。今でもシュリンク・カバーがかかったままのアルバムだが, 盤も全く傷みなく極上の状態で聴けるのがちょっと自慢したくなるぐらいだ。
それから30年以上あとになって自由に使えるこづかいに多少は余裕が出てきた頃に冒頭の10inchを入手して聴く事ができた。チェットのボーカルは僕が学生だった頃よりももっと心に沁みてくるようにさえ感じる。この10inch盤ではどの曲も彼の持ち味が充分にでているが、僕はその中でも特に I Fall In Love Too Easily を聴くと4畳半の下宿にいるような気になる。チェット・ベイカー彼ほどもの悲しく男の心が歌えるボーカリストはいないと思う。聴く時はいつもよりボリュームを少しおとして聴くとさらに良い。10inch盤よりもフォノグラム盤の話ばかりになってしまった。
店主の前のダンボール箱の中で見つけて、凄く嬉しくて電車の中でニヤニヤしながら帰りました。（笑）
渋谷のレコード屋さん、何処だったんでしょうね。
駅の近くでしたら２４６の方にディスクロードとか、オークションも扱ってたお店もありました。
山手線線路側に小さなお店でミヤコ、なんてお店もありました。（ちょうどジャーナルが撮影に来てて写真を撮られた思い出があります）
道玄坂のホテル街の中にも中古jazzレコード屋さんがあって、オリジナル盤を安く売ってたお店もありました。時々水商売のお姉さんが来てレコード見てたりしてました。
もう今は在りませんがよいお店でした。
こんばんは
コメントありがとうございます。
当時は私鉄沿線の各駅には必ずレコード屋さんがありました。
でも一般のあまり大きくないレコード店が扱っているのは歌謡曲中心でジャズはあまり置いてなかったように思います。それに比べて渋谷は大きなレコードショップがありました。
＞初チェット・ベイカーは12inchの方のCHET BAKER SINGS
今はその12inch盤オリジナルも随分と高くなりましたね。
私も最初にChetの歌を聴いた時は違和感を覚えた口ですが、何回か聴いている内にそのブルーな歌声の虜になりました。12inch盤で聴いていますが、やはり10inch盤のジャケットは良いですね。
こんばんは
12inch盤をお持ちなんですね、僕は持っていないんです。
時々12inch盤を見かけては入手しようと思うのですが、かなり高額になってきていて、他のアルバムに気移りしてしまいます。
トランペットにしてもとにかくよく歌うし、センスのよい本物の天才ではなかったかと思います。
今回やけに歯切れがよく読んでいて気持ちがよいと思ったら、文体を変えられたんですね。
やはり貴殿が達意の名文家であることが図らずも露呈してしまいましたね（笑）
こちらにもコメントありがとうございます。
昔その昔に僕が物悲しくて暗くて陰気で黒いボーカルと感じたのは、当時の僕がそれ以上に沈んでいたんでしょうね。僕の気持ちを表していたのかも知れません。
＞文体
恐れ入ります。また元に戻しますが何となくこういう文体で書きたくなりました(苦笑)
Chet Bakerいいですね、Female好きの私ですが「彼」だけは大好きです。大晦日に年越しのお酒を飲みながら、必ず10inchか12inchを聴きます、一年がフラッシュ・バックする一時です。
恋の歌を歌う彼の初々しい事、「愛」を恋人に話す気持ちが伝わってくるようです。このアルバムを聴いてから、「彼のボーカル」の入っていないアルバムは私の中ではちょっとランクが落ちます。
所で、彼はＵＳやヨーロッパで沢山のアルバムを残していますが、彼が作ったオリジナル曲は無いのではと思っておりますがいかが思われますか?その意味でも偉大なスタンダード・プレーヤーではないでしょうか。
こちらにもコメントありがとうございます。
チェットのボーカル無しなら、何といっても最初のPACIFIC/PJLP-3のCHET BAKERではないでしょうか。技巧もこらさず空に向かって気持ちのままに吹いているだけのようで実は心に突き刺さってくるような味があって僕は好きです。
このアルバムの入手の経緯も思いで深いものがあるのでまた後日紹介させていただきます。