般若心経

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四国八十八ヶ所

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2017-03-07 | Weblog
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津波とお遍路さん


 今年もまた3月11日が近くなり、新聞、テレビで津波に関する報道が多くなってきました。
 今、朝日新聞に『てんでこ 南海トラフ』というルポが連載されています。
先日、高知県黒潮町の津波について「黒潮町に想定される津波の高さは34.4メートル、日本一」という記事がありました。
黒潮町は高知県の南西部に位置します。
順打ちで八十八ヶ所を歩くとき、須崎より太平洋を離れ内陸部へ向かった道は37番岩本寺より南へ進むとすぐ黒潮町に入ります。しばらく歩くとまた海辺に出て広く青い海と美しい白浜と松林を左に見て歩くことになります。延々と続く松林はおそらく防風林として人間の手で植えられたものでしょう。
あの広々と長く続く松原にもし34.4メートルの津波が突然襲ってきたら、そのときどうすればよいか、まったく想像することすらできません。
 四国の太平洋沿岸をお遍路で歩いていても、いたるところで避難場所、避難場所への方向や地図、道路の標高等、津波に関する表示を見ますし、宿や休憩所でも話題にあがります。最近のお遍路の地図には津波に関する注意事項が掲載されています。
室戸から足摺にかけて太平洋側の平地には避難タワーがあちこちに建てられています。昨年10月に室戸から高知を歩きましたが、前回よりも増えているようです。
 お遍路さんのなかには「いつも避難する場所を考えながら、歩いている」という人がいる一方「今後何十年に何十パーセントの確率といっても、今日遭遇する確率は微々たるもの、そんなに心配しなくてもいい」とか「心配してもどうにもならない、遭ったら遭ったとき」とかいう人もいます。人間の考え方は人それぞれだと思います。
 私は歩いていて、どちらの考えも頭の中にあったような気がします。避難タワーが見えれば、もし今津波が来たらあそこまで走るとか、避難場所の表示が見えたら覚えておいてこの先でもし津波が発生したら引き返して来るとか考えていました。
その反面、左は海、右はコンクリートの高い 擁壁が何百メートルと続いている、このような場所では、考えてもどうしようもないな、あきらめるしか仕方ないなと、なにか一端の悟ったような気で歩いていました。
あきらめるとは言うものの、そのような場所でも、もし実際に地震が発生したら、荷物をかなぐり捨て、擁壁によじ登ることができる場所を探して一目散に走りだすかもしれません。いや多分そうするでしょう。

 春になりました。地図を前になかなか日程の都合のつかないお遍路、あれこれ思いをめぐらせています。

黒潮町 砂浜美術館
私たちの町には美術館がありません。うつくしい砂浜が美術館です。



【写真】 避難タワー