小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

Bライフと初期の五十嵐大介

2016年04月09日 | エッセイ・コラム

 

最近、友人から「Bライフ」という低予算・山舎生活者の存在を教えられた。端的にいえば、モノ・カネに支配されない、自由独立の暮らしを実践している人たち。

人里離れた山中に質素な小屋を建て、極力お金をかけない生活を実践する(※)。公共の電気・ガス・水道はなるべく使わない。基本は自前でなんでも作る。晴耕雨読のシンプルライフだ。(ちなみに、生活保護を受けるなど何かしらの援助に支えられた生活はCライフという)

その代表ともいうべき人が高村友也。30歳になっているのか? 東大理学部・文学部卒、各種資格をもつがドロップアウトをして、「Bライフ」を提唱し実践中。10万円で小屋を建て、現在は月3万円程で生計を立てているとのこと。ちなみに一週間の食費約3000円。収入は著作の印税とブログの広告収入で5万円ぐらい。

まだ、読みはじめたばかりだが、彼のブログ「寝太郎ブログ」には「Bライフ」の神髄、日々の生活(2012年より)が詳細に紹介されている。

 http://mainennetaro.blog.fc2.com/

蔵書の写真もあったが、どうやらウィトゲンシュタインなどの分析哲学系が多し。科学的論理志向、純粋な性格ゆえの引きこもりタイプ。と思いきや、キッチン、照明、換気システムなどを器用に作り、そして食材・生活資材を安く求めるために動き回る。近頃の若者には珍しい行動派だ。

友人からきいた話では「Bライフ」を実践している人は、いま凄く増えているとのこと。若い人が圧倒的に多いが、団塊世代の老人たち、40歳過ぎて一方的に離婚された専業主婦など女性も数名いる。もちろん個人差はありで、暮らしぶりも百人百様。

ブログを全部読んでいないが、40代の元主婦は既に3年間持続中。離婚後、夫への全面依存を脱し、山小屋生活のなか完璧に自立した。そのバイタリティたるや男顔負け、凄いの一言。山里にスモールハウスを建て、固定資産税、国民保険料、光熱水費などの公共料金を払い、去年の支出の合計は150万円(予定外支出あり)。ブログで拝見する限り、女性らしいきめ細やかな暮らしぶりに感心した。冬は時にマイナス10度、室内でも5,6度と厳しい環境になるが、アウトドアの楽しさを追求する姿勢は、年を追って目を瞠る進歩だ。

山奥で暮らす 40代バツイチ孤独な女の生活」  http://suterusuterare.blog.fc2.com/

 

モノに囲まれず、何かに干渉されず、雑念を払い、純粋に自分の好きなことにのめり込む。金をかけない自由な生活。

かつて、1960年代にアメリカでヒッピーとかコミューンが流行ったことがあった。それに似ているが、「Bライフ」の人たちは、人との繋がりは少ないようだ。面倒な人間関係は避けているのだろうか。私が思うに、彼らは時代の流れを、敏感に察知するアンテナを持っている人たちかもしれない。非正規雇用と格差社会がどんどん進む、日本経済は今後どうなるか分からない。長期的にはもっと悪くなる予測もある。そんな嗅覚をはたらかし、先手をうって自主独立の途を選んだ。「Bライフ」とは、いわば「清々しくカッコイイ貧困」であり、彼らこそ未来を先取りした強靭な精神の持ち主と言えなくもない。

 

 そういえば、漫画家の五十嵐大介もかつて、東北岩手の里山で「Bライフ」のような暮らしをおくりながら、こつこつと漫画を描いていた。四季の美しさを満喫し、自然の恵みをいただく。五十嵐がチャレンジした手づくり料理のレシピに、この私も追随したことがある。山里の動植物とふれあい、地元の人々との交流による確かな絆。都会では想像できない、田舎生活のディープで豊かな世界。それが「リトルフォレスト1.2」に結実した。(映画化されたらしいが未見)

▲新人の頃、画家のような絵のうまさで注目された五十嵐大介。「海獣の子供」は5巻の大作で、フランスでもかなり評判になった。

 

わたしは以前「五十嵐大介を読んでヤンバルを思い出す」という記事を書いたが、今ではすっかり人気漫画家の仲間入りを果たした。このあいだ、浦沢直樹の「漫勉」というテレビドキュメントにも登場した。これは著名漫画家の制作現場をおなじ漫画家の浦沢直樹が訪れて、長時間描き続けているところをビデオで撮り、それを二人で見直しながら、描き方のテクニックなどを話し合う番組だ。漫画家志望の人なら垂涎の番組で、素人にも漫画を描くプロセスがわかって至極面白い。萩尾望都、さいとう・たかをの重鎮たち、若い人たちに注目される浅野いにおらの中堅どころが登場している。

その番組に五十嵐大介が登場したので心躍った。嬉しかった半面、アシスタントを使うメジャーの漫画家になったのが少し残念か・・。しかし、職人風の狭い空間でパソコンを使わずに、絵筆をもつように一心不乱に描いていて、その姿勢良しと快哉をさけびたかった。

 

 

 ▲左が五十嵐大介 右が浦澤直樹 鉛筆の持ち方がソフトに対して浦澤の持ち方は力が入っている。コンマ1ミリの線で、個性の違いが出る。 

   「五十嵐大介を読んで、ヤンバルを想いだす」:http://blog.goo.ne.jp/koyorin55/e/c5640f1b1bf481a27bc435c7247dedb0

(※) 東京周辺にこだわらなければ100万円以下の古民家多数。田畑付き、井戸付き、湧水付き、山林付き等。




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