小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

パナマ文書が明かす、邪悪な金権力

2016年04月14日 | 社会・経済

 

以前から存在しているにも関わらず、誰一人その存在に気づかないものを発見する。そうした自明性を新たに言いかえる、或いは作りだす能力をもつ人を、ひとは天才とよぶ。ニュートンがそうだ。誰もが林檎は木から落ちることを知っていたが、ニュートンはその自明的現象を「地球には重力があるから」と言いかえた。つまり言葉の表現だけで、N = kg·m/s2 という物理的なエビデンスの存在を信じさせたといっていい。

「脱税」は犯罪である。アメリカにおいては、巨額の脱税者に懲役200年の刑が宣告されるほどの重罪である。その自明性、つまり極悪の「脱税」を「租税回避」という名で言いかえた天才がいる。たった一人なのか、グルーブなのか分からない。この天才的なひらめき或いは独創性を、国際法の間隙をついた単なる悪知恵とは呼べないだろう。まさに邪悪そのもの、「法」という概念を根底的に愚弄したものだ。法外の英仏領カリブ海諸島に究極の脱税システムをつくり、「タックスヘイブン」というスマートな名を冠する。まさに悪の天才による仕業だ、と私は言いたい。

この合法的にみえる「脱税」は、国際的な金融マーケットにおける取引、蓄財(会計)、法律など一切に精通し、すべてを関連付けて合法に見せかける能力がなければ達成できない。各国の企業、政府中枢と秘密裏に結んだネットワークも確立したはずだ。さらにまだ、画期的なアイデアがあった。各国の徴税当局の追及がおよばない法人、ペーパーカンパニーの起業! 

課税されるべき巨額の資産、金融市場での膨大な取引を、「紙の会社」がどうやって管理するというのか・・。世界の金権力者たちに支えられた何か、邪悪な力がバックアップしているとしか思えない。少なくとも、国をまたぐ金融取引に対する課税、そんな国際法が成立される見込みはない。ピケティは「21世紀の資本」で、世界的な資本課税について章をさいている。しかし、タックスヘイブンにおける金融資産に課税すべきだと具体的には書かれていない。

武器・麻薬売買などブラックマーケットのマネーロンダリング(資金洗浄)にも、「タックスヘイブン」は大いに利用されていることは周知の事実。麻薬王は100億円を守るために、1億円で殺し屋を雇うなんて痛くもか痒くもない。ピケティはそれを知っているか、知らないのか・・。軽々に「タックスヘイブン」の闇を明かせば明日の命はないと、佐藤優は語っていた。(殺し屋は1件当たりの最低料金300万円からだそうだ。冗談かも)

タックスヘイブンそのものは、以前からスイスの銀行が有名だった。現在、ニューヨーク、ロンドン、香港などにも同様のシステムは存在している。全世界に60ほどあるといわれ、その総額はケイマン諸島よりも遥かに多いらしい。これらは脱税と見做されないしかるべき法的措置がとられている。当局が実証しようにもできない。だが明らかに今、脱税だろうという資金が、超リッチのリゾート地があるカリブ海諸島に流れている。そこは課税のないマネーストック天国。膨大な金融取引があっても、手数料にすら課税されない。パナマ文書が、その仕組みとカネの流れの全容を明かすことを祈りたい。

いま、ケイマン諸島のタックスヘイブンには最低でも3000兆円という巨額の資産があることが分かった。そのうちの1%さえあれば、新興国の諸問題なんて一気に解決されるときいたことがある。少なくともアフリカにおけるエイズ患者は、ジェネリック薬品の投入で激減する。集中的な教育資金の投入で、人口爆発を抑制し、貧困や犯罪も減少するだろう。

パナマ文書は、2.6テラBという膨大なデータ量(文庫本2万6千冊)だという。スノーデンが暴露した情報データの約1000倍だ。パナマの大きな法律事務所から南ドイツ新聞社にリークされた超ド級の秘密文書。いま、60か国以上の報道機関の記者が連携するICIJ「国際調査報道ジャーナリスト連合」に持ち込まれて、200人以上の記者が分担して鋭意分析中とのこと。今のところ、日本の政治家の名前はないらしいが、第三者名義なり迂回できるペーパーカンパニーを使えば簡単な話だ。イギリスのキャメロン首相、プーチンとその側近、習近平の親族らは単に、金権力者としてのタカをくくっていただけなのかもしれない。アップル、アマゾン(日本で法人税を支払わない)、スターバックスなどのグローバル企業は、今後どんな対抗策を打ちだしてくるだろうか。

今日のニュースでは、EUは徹底的な解剖と、断固たる法的措置を宣言した。金権力者たちは動揺を隠しているのか、「まったく関係ない」とばかりに静観の構え。

パナマ文書の徹底的な解明に期待するしかない。全貌が明らかになった暁には、ICIJにノーベル経済賞が与えられることを私は願っている。

 

 



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