小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

トランプが次に呟く場所とは

2021年01月14日 | エッセイ・コラム

▲国旗やトランプ支援のフラッグ、その他、南北戦争時代の南軍の旗や、どういうわけか日本と韓国の国旗があった。

▲1月7日の朝刊から

アメリカ連邦議会にトランプ熱狂支持者たちが乱入したことにより、ツイッターおよびフェイスブックは、トランプ本人のアカウントを永久凍結した。私企業による会員制SNSゆえに、一会員といえども過激で法外な投稿を拒絶し、そのアクセス権を凍結することは、法的にも認め得ることだ。SNSを運営する企業にとって、その運営を持続可能にするための裁量権は当然のごとく有る。公序良俗を乱す投稿を検閲、停止する権限だって有ってしかるべきだ。

合衆国憲法の修正箇条の第1条には、確かに表現の自由、集会や請願の行動を規制する法律そのものを制定できないとしている。しかし、これを定めたのは1791年で、一般個人が不特定多数に情報発信するのは不可能な時代だった。

現在、SNSでは、個人発信ならば表現の制約はなきに等しい。ヘイトやデマゴギー、プロパガンダなどは、炎上さえしなければ野放しの状態になる。こうした風潮は、民主主義の政体のなかでは、実は芳しいものとはいえない。

トランプ前大統領のツイートに関していえば、土台、一国の為政者のトップが、会員制の投稿サイトに意見を書き込んだり、感情を吐露すること自体が公私混同でおかしいと、ずっと思っていた。公職につくものがSNSを利用することについての議論なり、法整備がなかったのは、今となれば不思議だ。

話はさらに複雑になるが、本国アメリカでは、つい最近、ツイッターに代わるSNSとして期待されていた「パーラー」(Parler※注)が、アップルとグーグル、そしてアマゾンからも締め出されたことが大きく報道された。アプリそのものがダウンロードできなくなったという。
これは極めて公共性をもつプラットフォーマーがその権限を逸脱し、アメリカ企業の情報ネットワーク寡占化を象徴している。もちろん、一つのSNS企業を事実上停止させるのは、市民の表現の自由を奪うもので、小生もにわかに首肯できるものではない。これに関しては、ドイツのメルケル首相も抗議声明を出していた。

とはいえ、小生はこの代替SNSの「パーラー」なるものをまったく知らない。パーラーといえば大規模なパチンコ屋だと思っていたし、個人的には資生堂パーラーに代表されるフルーツカフェをイメージしてしまう(青春のころの甘き、いや苦き記憶・・)。

アメリカでも時代がかった昔風の用語だという「パーラー」という名のSNS。調べてみたら、民主的運営と表現の自由を標榜して、2018年「一切の検閲を行わない」SNSとしてたちあがった。歴史的にはだいぶ浅いし、たぶんヘイトをはじめとする過激な意見を主張したい人たちの偏向的なサイトだと思われる。

ツイッター使用を凍結されたトランプは、たぶん「パーラー」に乗り換えるだろうと噂されていたのだが・・。ITのプラットフォーマーGAFAにも排除された。ツイッター、FB、そして「パーラー」を締め出された人々は、さあ行き場を失ったのか。インスタグラムは駄目なのか・・。

いやいや、ニューズウィークのネット版には、新たなSNSとして「ギャブ(Gab)」なるものが脚光を浴びているとあった。

反ユダヤ主義の温床だったといわれる「ギャブ」は、かつて「パーラー」と同じ状況に追い込まれたことがある。それは、ペンシルベニア州ピッツバーグのシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)で銃乱射事件が起き、11人が殺害されるテロ事件が起きた。その時の犯人ロバート・バウアーズが、ギャブに反ユダヤ主義の書き込みをしていたことが発覚し、大手アプリ配信サービスや決済企業から取引を停止させられた。この事件が起きたのは2018年で、「パーラー」の創立と同年である。

トランプは、「ギャブ(Gab)」を使い、新たなツイートをはじめるのか。さらに再度、凍結させられるのか。今しばらくは、モグラたたきのようなSNSつぶしが続くと思われる。兎にも角にも、トランプは次なる手をどう打って出るのか。迷える子羊たちをさらに幻惑させるのか、それとも世界をアッと驚かす新手の手法をみせるのか。それよりも、これからのアメリカはどう変化していくのだろう、世界の誰もが注視せざるをえない。

▲「Gab」新たなSNSとして注目されるか。機能はTwitterに似ているらしい。

 

最後になるが、いちばん大切なことは、SNSは必要不可欠だということ。それは「アラブの春」や、3.11などの災厄時など、個人間の情報交換が即座にできたこと。また、それらが多様に、ワールドワイドにつながったことだ。

通信手段が断たれる、インフラが破壊される、公共の電波が封鎖されるなど、人々が生きていく上で欠くことのできない情報ツールとなった。人と人を結ぶこのメディアは、個人的な問題や不安を解消するものとしても機能する。それだけに、トランプのツイートが、いかに人々を分断し、国をいや世界を混乱させたことは、あまりにも罪深く、その修復が難しい。

SNSによって再び人と人とが繋がる、アイデンティティ、立場や環境などの差異を超えた新たな使い方を私たちに示してほしい。アメリカの市民の皆様には、そう願わずにはいられない。来たるべき日が平和に始り、未来に希望をもてるような一日になるよう祈るだけである。

 

※注:パーラーの意味は、お客さんを「おもてなしする場」。応接間、あるいは談話室と訳されるが、米語としては些か古い言い回しのようだ。だから、温故知新のように使われ始めたのか・・。意外にも、訪日してパチンコファンになったアメリカ人が命名したのか。


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