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小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

重症患者さんの手記を読んで

2021年01月18日 | エッセイ・コラム

新型コロナに感染し、重症患者になった方の手記を拝読した。フェイスブック上では友達関係のバレエ研究家が、その方の投稿記事をシェアしていたのを、たまたま目にすることができたのである。
手記を書いたのは声楽家で、女性だとしか分からない。ただ、罹患以前に持病があり、日ごろは免疫力は弱かったというから、相応の年回りかと推測される。

小生は、その方を知るものではないし、彼女の手記を紹介する権限はない。しかし、ご本人は自身の体験を記録し、かつ、現在のコロナ医療の環境や実態を知ってほしいと希望している。ここに全文ではないが、プライバシーに配慮しつつ、手記の一部を公開するのは、彼女の意に沿うものだと判断した。

新型コロナの重症患者が回復し、その経過等を知るのは、ニュースやドキュメンタリーに限られ、外国で製作されたものが多かった。日本における感染者や、重症者に直接インタビューしたものは数少なく、まして、当人が回復してからの体験を詳細に書かれた記事は、今まで見たことも、読んだこともなかった。

重篤に陥った方は、実際にはどんな経験をし、いかなる感慨を抱いたのか・・。どんな恐怖を跳ね返し、生きていく力を得たのか・・。

闘病中はたぶん意識が朦朧としているだろうし、呼吸が困難な状態は、想像を絶する苦痛であろう。そうした体験を一つひとつ反芻し、過去を振り返りながら文章にするのは、たいへんつらい作業だったと思われる。

今回の手記を読んで、新型コロナに感染し、重症化することの怖さを、小生ははじめて実感することができた。
この日本では、コロナ関係者への偏見や差別が、意外にも多いと聞いている。感染者のみならず、医療従事者にも、そうしたネガティブな反応をするのは、いかなる理由があるのか知らん。

そうした風潮のなかで、読者限定のフェイスブックとはいえ、本名を明かしてご自身の壮絶な闘病経験を発表するのは、よほどの勇気と決意があったはずである。また、完全に快癒していない体調のもとで、手記を書かかれたことは渾身の営為だ。改めて敬意と感謝の意を表したい。

各地で緊急事態宣言が発令され、変異種ではないかと疑われる新型コロナは、以前よりもさらに、その恐怖感を増した。いま、医療崩壊が喧伝されるなか、行政が迅速かつ的確なコロナ医療システムをつくれるとは思えない。

手記のなかで、新型コロナの感染に無知・無理解に対して「いてもたってもいられず」と書かれていたが、この実態を正確に把握できる情報を、私たちは必至の思いで求めていることは間違いない。
以下、第三者に公開するにあたって、相当の長文であったので読みやすさを考慮し、筆者の責任において部分的に省略した。もちろん、個人情報を尊重するうえで、惜しくもカットせざるを得ない文章もあった。しかしながら、引用した文章、字句等には、一切の改変や訂正をしていないことをお断りしておく。

(前略)新型コロナにかかり、重症化しました。
「傍に罹患者がいなくて実感がない」とよく聞くので、もし何かわたしの体験が役に立てばと思い、書いています。
 10月の頭に持病により入院しました。その際にPCR検査を受けましたが陰性でした。11月頭に肺炎にかかりました。(中略)
これは新型コロナではなく持病のせいということでPCR検査はされませんでした。後に、別の病院で、一度新型コロナに罹患していたのではないかと言われましたが解りません。(中略)
食欲が全くなく、40℃を超える高熱とそれによる震えが続き、解熱剤を投与され、また震えと高熱というのを日に何度も繰り返して疲れきって、意識が朦朧として腎臓と肝臓の機能が落ちて心不全に至ったので、挿管しました。挿管はとても辛く、わたしは麻酔が効きにくかったので、喉に太い管が入って体が動かず、辛いことも伝えられず、処置をされる解らない音と痛みと恐怖でずっと怯えていました。(中略)

一週間程で抜管出来ましたが、3日後に防護服に身を包んだ主治医が入ってきて、新型コロナに感染した旨を伝えられました。入院していた病院の他の階の看護師さんが感染したとのことでしたが、抜管した際の看護師さんも感染していたそうで、院内感染です。(中略)

熱がまた上がって、42℃まで出て体力も限界、呼吸機能がもう管理しきれないということで、今度は大学病院に転院しました。そこで再度挿管しました。エクモ(人工心肺)も覚悟して下さい、と家族は言われたそうですが、運のいいことに数日で抜管出来ました。二度の挿管の苦しみはもう体験したくありません。(中略)

体は管と点滴や注射の痣だらけ、首から太い点滴の針が出ているのは最後まで痛かった。(中略)
強い麻酔による幻覚で判断がつかない、言葉もうまく出ない、体が動かせない、胸の強い痛み、よく「ものの味が分からなくなる」と報道とされていますが、
わたしはご飯が砂利の味、水が歯磨き粉をつけないで口を濯いだ水の味がしました。後は無味でした。今でも体調によって味覚が変化します。お風呂にはずっと入れません。(中略)

前にいた病棟とは違うコロナ病棟で、即席で作られた、カーテンもテレビもなく暖房も効かない所でした。
同室に男女の区切りはなく、体力が落ちすぎて、起き上がるだけで冷や汗が出て、認知症で一日中怒鳴ってしまう男性の声と機械音と窓辺の冬の寒さで震えて眠ることは出来ませんでした。(中略)

その病院は防護服に限りがあるとのことで、日に4度しか看護師さんが入れないので、持病が悪くなった際などとても困りました。清拭もなく、生活もとても辛く、精神的にも限界でした。(中略)
最終的に、これは理由が解りませんが、陰性が2回出ても普通病棟には移せないと言われ、コロナの部屋のままだったので、怖くて自ら退院を申し出ました。(中略)

 長く麻酔で眠っていたので筋力体力共に落ちて、今でも足が殆ど動きませんが、どこの病院もいっぱいで行く所がなく、家族の世話になっています。
動けずにいると肺が炎症を起こしやすいので、また肺炎になるのが怖いです。(中略)
ニュースを見ると、密に出歩いたり飲んだりしている人達を見て暗い気持ちになります。同じ思いを誰にもして欲しくないです。(中略)

 最後の病院ではお医者さんは入って来ませんでした。診察も一度もされていないので、今の自分の状態は解りません。
命があるだけでも感謝すべきなのかもしれませんが、失ったものも余りに多すぎました。何の補助もないので、先が見えません。(中略)

 新型コロナは何度でもかかる病気です。自覚症状がなくても伝染するかもしれないし、伝染した8割の人は自覚症状が無いそうです。    
 それでも中にはそうじゃない人も、わたしのようになる人もいます。近くの人が、もしかして同じようになるかもしれない。「実感がない」と仰る方が少しでも危機感を忘れないでいて欲しいと思います。長文お付き合い下さって有難うございます。一刻も早い収束を願って。

以上、引用おわり。

 

 


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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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小道寄さま (森中)
2021-02-08 08:44:19
最新のブログ、コロナの重症患者さんの手記、及びトランプ関連のブログ二つ拝読いたしました。たくさん書かれますね。私はとても無理です。時々です。
私も歌を歌っていますので、このソプラノ歌手のコロナの手記は身に染みました。最近はシャンソンも歌っていて、よく東京に出かけます。割と平気です。一度酷い目に遭うんじゃないかと怖くなりました。
今日は、午後浦和のシャンソニエでステージで歌います。あと14日、18日も歌を歌いに東京に出かけます。怖いです。
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森中さま (小寄道)
2021-02-08 14:08:02
新型コロナ対策特措法、感染症法などの改正案が成立し,今月13日から施行されるとのこと。
これらの罰則や強制力のある法案は、なにか国の威信というか姿勢だけが際立っているばかりで、本来のコロナ対策になるのかが疑問ありです。
また、現実におこっている医療崩壊らしいことに、お金と人材が惜しみなく使われているのかもはっきりしません。

いまは日本では死者が6000人をこえています。台湾、中国、韓国に較べると、明らかに負け組であり、感染症貧国としてはアジアのトップだといえますね。

これからは、このコロナどうなるのでしょうか。この方は一命をとりとめたとはいえ、また感染するのではと不安をいだいていています。
一度感染しても、抗体というか免疫力は弱いことを、この方はきちんと知っています。いたずらに怖がってはいけないのですが、ほんとにしっかりと防衛策を国は講ずるべきでしょう。
ともかくも、私どものような高齢のものは万全の自衛策を忘れてはならないでしょう。
コメントをよせていただき有難うございました。Zoomでお話しができることを楽しみにしております。
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