小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

耐えられない、本質的な阿呆

2015年04月06日 | 社会・経済

このブログでは、鮫川村の放射性廃棄物仮設焼却炉の問題について何度かふれたことがある。
ある日突然、福島県鮫川村に仮設焼却炉が建設されることになった。環境省と鮫川村役場が秘密裏にすすめたもので、自然が美しい里山を愛する地元の人々には知る由もなかった。建設地の地権者を含む周囲30軒の同意を得ただけで、その仮設焼却炉がどんなものか、どんな影響があるのか説明すらなかったという。

人々の心配は適中した。それは放射性物質で汚染された廃棄物の焼却炉であり、焼却による廃塵、排ガスなどの影響も明らかにせず、着工・建設がすすめられたのである。地元の人々や反原発支持者らの反対運動があるなかで、焼却炉は2013年に完成し、あろうことか稼働して一週間あまりで爆発事故を起こしたのだ。これらの一連の出来事はマスコミにも報道された。(現在、福島県には19市町村に24基もの仮設焼却炉が建設されている。群馬、茨城、千葉にも存在)

一方、地元での反対運動が盛り上がるさなか、焼却施設の土地使用について全員が契約書類に押印しなかった事実が発覚した。地権者の一人が不服を申し立て、施設運営に待ったをかける仮処分の告訴をした。が、なぜか敗訴。これを不服とし、郡山検察審査会に即時再審査請求を行ったのが昨年12月2日。今年3月11日に郡山検察審査会より再審査をしりぞける議決結果が発表になった、というのが大筋である。

しかし、その内容があまりにも杜撰。議決というには法的根拠がほとんどない短文。ありきたりの感想のようで、それに傲慢さがにじみ出ている。まさに非論理的というか稚拙な文章なので驚愕した。このブログを読んでいただいている方のご供覧に呈したい。


---------議決理由------------

1.個人の利益のためでなく、地域のためを考えて行った行為であり、被疑者両名に悪意はなく、また計画的ではない。
2.地域性により、他人の代わりに署名、押印することはよくあることであり、自分の行為に対する罪の意識が薄い。
3.(原告が)長年組合の会合に出席していなかったこともあり、説明会への欠席のみを持って、反対の意思表示をしたとは思えない。


以上の理由だけのお粗末な文章であると同時に、市民をなめきった非論理的な、法的な根拠がほとんどない内容である。
詳しくは「ふくしまの里山を次世代に」を読んでいただきたい。
blog.goo.ne.jp/no-nuclear/e/2cd04d20a8ef3190daee19924fd2ea4e#comment-list">
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以下、わたしが思うことを書き連ねる。粗忽ものゆえ、早とちり・錯誤があるかもしれない。ご指摘・ご叱正をうけたい。
●1について。争点は、本人の承諾がない、他人が代わりに押印した契約書について法的実効性があるかないかであろう。
本人でない人間が他者になりすまして押印した事実そのものが俎上にあるのに、「個人の利益のためでなく、地域のためを考えて行った行為」というのは争点のすり替えである。
また、それを行ったものに対して「悪意はなく、また計画的ではない」というのも見事なすり替えであり、また文字通り受けとめても「善意で、無計画におこなった」成りすまし押印は問題ないということになる。
まして、善意・悪意の判定はいわゆる状況証拠の類であり、そんなものを法的根拠として議決理由にする審査会そのものが問われる。

●2について。「地域性」がどこを指すのか、他人の代わりに押印する事実や、そういう慣習のある地域は特定できるのか。
鮫川村に実際そういう慣習があったのであれば、然るべくその事実をしめし、議決理由の論拠としなければならない。
また、「他人の代わりに署名、押印することはよくあること」というくだりにおいては、何処の何を限定しているのだろうか。
いまどき、自治会や・町内会の回覧板でさえ、回覧先の家が留守であっても、その人の代わりにサインとか押印なんてしないであろう。
いや、長期旅行に行くので代わりに頼まれていたとしたら、押印することもありえる。しかし、これは共同所有地の売買乃至賃貸に関わる法的重要書類である。断りもなく代わりに押印することは、ある種詐欺まがいだ。
ところがそうした行為に「自分の行為に対する罪の意識が薄い」と判断し、これを議決理由に加える神経が理解できない。私は法律を大学で学んだことのない素人であるが、この2の文章はあまりにもぶっ飛んでいて、法律リテラシーのない私でも奥歯ががたがた震えた。

●3について。文章の意味そのものが分からない。
組合の出席・欠席は、賛成や反対の意志表示とはまったく関係のない事柄である。原告が欠席を反対の意志表示だと考えていたとしても、再審査棄却の論拠としては副次的な理由だ。
出欠の是非を問うにしても、このことが何で再審査をしりぞける理由になるのであろうか。いずれにしても理解に苦しむ。

先日、美濃加茂市市長収賄事件の無罪結果があったが、検察側の劣化はそうとうなものである。法律のど素人でもわかるお粗末な法的文章を書くセンス、その傲慢な論理構成はもはや憤りをこえる。
郡山検察審査会がどんな顔ぶれで、どんな審議がなされたのか・・。

いやはや、もう知性の欠片もない話で申し訳ない。(今回は事実認知のタイムラグがあり、恥ずかしながら慌てて前半部を何度も書き直した。また、現在も決定稿ではありませんので悪しからず。さらに、鮫川村の焼却炉は今年七月末に廃止が決定。曰くあり、憶測あり、真偽いづくに、である。以降も、見守りたい)


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