鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

75 待春の秘儀

2019-02-07 15:42:21 | 日記
鎌倉で一番早く咲く荏柄天神の紅梅が見頃となった。
読者諸賢のお陰で病も小康を保ち、このブログも2度目の立春を迎えられ感謝している。
今回は隠者流の春を呼ぶ儀式を公開しよう。

(大日如来図 室町時代 斑唐津旅枕花入 江戸時代 古銅竜首船香炉 清朝時代)
一つ目は大日如来図に室咲の花と香を供え、春の花鳥浄土を観想する事だ。
暖かい陽射しの中で花木に遊ぶ春禽の歌を思い浮かべ、花下の寂光に佇む己れを観想する。
その状態で果して己れはどうなれば安心立命に到達するのか、現在過去未来を想像してみれば良い。
年齢を重ねるごとに、物質面より精神面での充足を欲するようになるだろう。

(源氏物語梅が枝図 江戸時代 染付瓶 清朝時代 青磁香合 元時代 柿右衛門香炉 江戸時代)
二つ目は源氏絵に香華を供え、物語中の「色も香もうつるばかりにこの春は 花咲く宿をかれずもあらなむ」に呼応した歌を詠む、歌人らしい儀式。
聞香の話なので香りの要素を入れ、「うつる」を起点に夢幻界に転移するのが奥義だ。
---梅が香の紅と白とが溶け合ひて 歌真似鳥の現(うつつ)無き声---
「歌真似鳥」は昨年紹介した蛾眉鳥の事で、ここ二〜三日は栗鼠の鳴き真似をしていた。

季語の探梅行と言うのは早咲きの梅をあちこち探し回り、ひいては春の兆しを衆に先駆けて見つける事を言う。
探梅は今では有名な観光地や梅園に遠出するのが普通だろうが、元来はその人の住む里に春が来る事を喜ぶ物だった。
現代の都会人も、古人の山里の草庵に寒明けの開花を見つけた喜びを推して知るべきであろう。

©︎甲士三郎

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