鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

128 祟り神の花宛

2020-02-13 14:15:00 | 日記

いつもの買物がてらの散歩道に、我家も氏子になっている絵柄天神がある。

早梅の名所で古の将軍実朝公も鶯の声を楽しみに良くこの辺に来ていたようだ。

天神菅原道真は江戸前期までは雷の祟り神として恐れられ封印するために祀られていたのが、今ではすっかり学問受験の神になり澄ましている。


(絵柄天神の紅白梅と合格祈願の絵馬)

江戸前期の浮世の繁栄で有名寺社は観光化し七福神や縁結び富講などの現世利益を看板に大儲けしていたので、天神もそこに目を付け学問の神としてリニューアルしたのだ。


ここの創建は日本でも最古の部類で祟りの封印は良くやっているが、私の経験では学問の御利益は全く無いどころか逆効果だった事もある。

だが探梅には良い場所なので、この時期の散歩でよく寄る。


(紅白梅の紅はボカした)

紅白の梅が同時に見られる年はそう多くなく、揃い咲きした今年は運が良い。

---二本(ふたもと)の梅に遅速を愛すなり---(蕪村)

昔は紅白梅にうっすら雪が積もった写真が撮れた年もあったが、気候変動でもう二度と無い気がする。


我家にもいつ何処からきたのか、室町時代の天神像がある。

怒り天神と言って江戸以前の天神像はみな怒り顔でいかにも悪神らしい表情だ。


(木彫彩色天神像 室町時代 探神院蔵)

この祟り神に負けないためには、天神よりこちらがもっと強く怒る事だ。

よって悪さをしたら一切御神酒をやらないとか燃やすとか言って脅しつつ封印するのが正しいと思う。

まあ今年はまだ悪さをしていないので、梅の一枝をお供えした。

「東風吹かば〜」の歌は皆御存知だろう。

この一枝でせめてもの春を楽しんでもらおう。

本来の祟り神が、学問と梅花を愛す穏やかな暮しの良さを知ったようで何よりだ。


©️甲士三郎