カイロじじいのまゃみゅむゅめも

カイロプラクティック施療で出くわす患者さんとのやり取りのあれこれ。

丸谷才一エッセイ傑作集1 『腹を抱える』 文春文庫

2015-08-31 18:05:39 | 本日の抜粋
教養と機智溢れる丸谷才一のエッセイ集。
丸谷さんは肩肘の力を抜いて気楽に書いているんだろうが、読む方は意外や、疲れまくる。
教養の決定的な差に身を固くしちゃってる、、、。

3題ほど紹介する。

1971年「大きなお世話」より
当時のベトナム戦争について書かれた物。
現在の中東問題と根を一つにする。
  *****
 アメリカ軍は5年前から、たくさんの軍用犬をベトナム戦線で使っていた。現在、南ベトナムにいるのは七百五十匹で、ほとんどシェパードだそうだが、これはみな二度とふたたびアメリカに帰られない、つまりベトナムの土となる犬たちである。
 第一に、軍用犬がかかっている風土病のせいで、第二に。戦場に慣れた軍用犬を愛玩用に改めるのはむずかしいせいで、本国には戻せないとアメリカ軍は判断したわけだ。歴戦の勇犬たちはおそかれ早けれ、一匹残らず殺されてしまうのである。
  *****
で、この後、帰還兵はどうかとの話に繋がる。


1977年「低空飛行」より
開高健さんといえば、大の釣り好きで知られる。
開高さんは弁舌の雄で大きな声で機関銃のようにしゃべり続けるのだそうだ。
そんな彼を、丸谷さんは、普段にぎやかな人ほど孤独を知っているとして彼の釣りを静寂なる宇宙と対話として想像した。
しかし、その実態は、、、。 
  *****
 ある夜、店が終わってから、ル・ポットフーの料理人が二人、酒田港の突堤へ釣りに行ったところ、ついぞ見かけたことのない釣師が一人いて、何かにつけて途方もない声で叫ぶ。
「オカアチャン、頼んまっせ」
 とか、
「オトウチャン、頑張ってね」
 とか、その他、英独仏ギリシャ・ラテン語の罵り言葉(らいいもの)とか、大変なにぎやかさで、普段は幽静を極める夜の突堤が、この男ひとりのため、まるで万国博のお祭り広場かそれとも晝さがりの灌頂号線のようだ。あんなに騒々しくては釣れる魚だって逃げてしまいますよ。と二人の料理人が報告してゐるところへ、見るからに知的な風貌の、メガネをかてゐる、そして栄養のよい体つきの中年男が一人、ふらりと現れた。
「それを見て、料理人が、あ、あの人だ、と言ったんですよ」
  *****
このギャップがいい。
徳さんは、開高さんの二時間半に及ぶ『四畳半の下張』裁判の時の證言を是非とも聞きたいと思った。


1989年「猫だって夢を見る」より
『サラダ記念日』の俵万智評である。

 「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

この一首を解説してくれる。
  *****
どこかの業界が何か思いつけば、すぐに何かの記念日が出来あがるのが今の日本で、これはたぶん、戦前と大きく違うことだろう。
 万智さんが歌ったのは、そういう社会の風習を手玉にとって遊ぶ青春の情景である。恋人たちは二人の快楽のため、何でも利用するのだ。
  *****
そして、丸谷さんの解釈は七夕の前日である七月六日とある表現にこだわって、芭蕉や古今集にまで話が広がる。 
徳さんは、何が何やら判らぬままに、なんとなく理解した積りになってしまう、、、。



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