カイロじじいのまゃみゅむゅめも

カイロプラクティック施療で出くわす患者さんとのやり取りのあれこれ。

藤沢周平 『暗殺の年輪』 文春文庫

2016-02-29 19:04:18 | 本日の抜粋
藤沢周平の初期作品集である。

と、訳知りに書き出してみたが実は徳さん、藤沢作品を手にしたのは初めてだ。
売れっ子の作品を何となく敬遠してしまう、はすっかいの心情の持ち主の行動の結果だ。
今回、友人に薦められて好奇心に駆られて手にしてみた。

収録されている六つの作品の中で特に印象に残ったのが『ただ一撃』。
隠居し平凡な生活をしている兵法の達人が急遽呼び出され、御前試合のようなものに駆り出される。

話ははっきり前半と後半に分かれる。

徳さんが気に入ったのは、前半のほのぼのした隠居老兵法者の日常の有り様。

  *****
三緒は、
「お茶を召しあがれ」
 と舅を縁側に誘った。
「む、む、これは旨い」
 範兵衛は茶を啜ったあとで、鉢からつまんだ小茄子の漬物を頬張りながら言った。
 歯が欠けているから、含んだ茄子を口の中であちこち転がしながら嚙む。
 範兵衛は小柄で痩せている。頬も痩せて、小茄子を口の中で動かすたびに、いなびた頬の皺がのび、眼だけはぎょろりとしているので、水中の魚の顔のように剽軽な表情になる。三緒は袂を口に押し当てて、くすくす笑った。
  *****

なんか、嫁、舅の羨ましい関係がそこにはある。

茄子の説明もちゃんとある。

  *****
 鶴ケ丘の城下から三十丁ほど離れたところに、民田という村がある。ここで栽培する茄子は小ぶりで、味がいい。春苗を育て、初夏に畑に植えつけて、六月の炎天下に日に三度も水を遣って育てる。このように苦労して水を遣るために皮は薄く、浅塩で漬けた味は格別なのである。茄子の木は次々と可憐な紫色の花をつけて実を結び、七月一杯成り続けるが、八月になると、さすがに木に成る実の数はめっきり減り、水を遣ることもなくなるから皮は硬い。だがその実はまた捨て難い風味を宿すのである。
  *****


この画像は「ヤマセミの渓から」というブログから。

後半は一変する。
果し合いを命令された範兵衛は戦う人に一変する。
戦闘意識の高揚した範兵衛は嫁である三緒に男女の関係を求め、三緒はそれに応じる、、、。
そして三緒は自害する。

徳さんは、このくだりに差し掛かった時、戦争とかテロを想ってしまった。
戦争とかテロは、我々の日常生活上のスイッチを切り替えねば出来ぬことだが、いったんスイッチが入ったら人はどこまでも苛酷、非情になれるのだ。

軍隊での初期教育は敵の存在を設定する事。
敵を人間と見なさず、破壊すべき対象としてだけ認識するように教育される。

軍隊と自衛隊の存在意義の違いを明確化することが、ヘナチョコ野党に求められているのだ。


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