岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

戦争を考える日、『白いカラス』を観る

2011-08-15 22:23:19 | 映画・DVD 


昨日は66回目の8月15日だった。
非戦の誓いを新たにする日だった。
平和のシンボルはハトだけど、掲載しているのはネットから転載した白いカラス。
カラスも白いとまったく違って見える。
色からくる先入観が作用していることがよくわかる。

実は『白いカラス』は、米映画の題名です。



この画像の美人は、フォーニア役の二コール・キッドマン。
左の男性は、コールマン役のアンソニー・ホプキンズ。

『白いカラス』は日本向け題名。原題は「The Human Stain」、「人間の傷」。
日本語タイトルには異議あり。

コールマンは大学の教授だった、それもユダヤ系では全米で初めて古典教授になった男だ。
しかし彼は講義中に使った言葉により大学内の査問を受け、自ら大学を辞してしまう。
その言葉は、「スプーク」。幽霊や透明人間という意味がある。
講義を長期欠席している学生に向けて使った言葉だった。
その言葉を後で聞いた学生本人から学校に抗議があった。
これが問題になった。実は「スプーク」は蔑語で、黒人の意味があった。
コールマンは、まだ会っていない欠席学生がアフリカ系だったことを知る。

コールマンにはだれにも話さない過去がある。
それは自らの出自を創作していることだ。
彼は外見からは白人と見られる。が両親や兄弟を見れば明らかにカラード(黒人)だった。
過去に一度、白人である婚約者が彼の母親と会うという機会を持ったが、恋は破滅した。

観客がコールマンがカラードだと知った時、映画は半分経過していた。
彼は外見からは決して黒人とは見えない。
自分の容姿に合わせた人生を歩もうと決心する。
母親の「黒人に誇りを持て」という言葉を無視する。

それ以来、彼は家族と縁を切り一人ユダヤ系として生きていった。
その彼が「スプーク」で躓いた。

湖畔の別荘に引き籠った彼は、近くに住む作家と親しくなる。
時を同じくして、フォー二アに出会う。
誘うフォー二ア。
彼女にも心の中に大きな暗闇があった。

裕福な家庭に育った彼女だが、母親の離婚、そして義父からのDV。
14歳で家出。結婚、夫の暴力、そして子どもたちの死。
ベトナム戦争帰還兵である夫は精神を病んでいた。
一人で生活するフォーニアは、郵便局、学校、酪農場と掛け持ちで働いている。

フォーニアは過去を拒絶し今に生きる。しかし過去である夫は執拗に彼女を追い回す。
コールマンはフォーニアの闇に慄然としながらも自らの心の闇は閉じたままだった。
映画の最後に近くなってフォーリアはコールマンから告白を受けて彼の過去を知る。

結末は書かないのがルール。
映像が美しい。ライティングが見事。音楽もいい。
1時間46分の長さ。後14分かけてほしかったように思う。
もう少し見たかった。
原作はフィリップ・ロス。すごい作家だ。

人種差別がいかに根深いものか思い知らされる映画だが、第2次世界大戦時の日系人強制収容所建設と人種差別、そして9.11後にふたたび起こるイスラム系への人種差別。
人種差別がいかに「自由と平等」を奪うものか熟知した日系議員の行動をNHKが取材している。
昨夜のNHK番組となった。

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