このような日本の科学技術150年史という本は稀ではないでしょうか。
日ごろ、なんとなく思っていたことの全体像や細部が見える本とも言えます。
アカデミックな研究者には、差しさわりがありすぎてとても書けないでしょう。
読み通して腑に落ちて、そしてすっかり忘れてしまう私ではありますが、
少し書いてみたいと思います。
全体構成は目次から
第1章 欧米との出会い
第2章 資本主義への歩み
第3章 帝国主義と科学
第4章 総力戦体制にむけて
第5章 戦時下の科学技術
第6章 そして戦後社会
第7章 原子力開発をめぐって
おわりに
欧米の産業革命の進展から200年。それより50年遅れて日本の産業革命が始まった。
この50年をキャッチアップするために欧米の科学技術を急激に吸収していく。
支えている思想(といえるか?)は富国強兵。
国を富ませて軍隊の力を増強する。
科学技術はそのための強力な武器である。
明治期には、西南戦争、日清戦争、日露戦争と続き、大正期の第一次世界大戦、昭和の日中戦争、太平洋戦争、戦後の朝鮮戦争、ベトナム戦争。
その戦争との関わりの中で科学技術研究と実践は進められてきたのか。
著者は150年の間断絶することなく、科学技術総力戦が続いてきたことを明らかにする。
昭和の大敗戦を経て葬り去られたと思われていた総力戦は戦後も継続された。
官僚機構はほぼ無傷で敗戦を乗り越えた。
軍需産業も再編成されていった。
しかし原子力利用は3.11でとん挫し膨大な負の遺産が残ってしまった。
東芝の例にあるように国策会社はほぼ身売り状態になってしまった。
それでもまだ経済の成長を願う安倍政権の成長戦略は「海外への原発、防衛装備品(兵器)販売、内には五輪、万博、カジノ」となる。
成長戦略というよりは現体制の継続のための戦略といえる。
この本を読みながら思い出した。
チェリノブイリ原発が爆発した時に、次は日本が危ないという声を聞いた。
「まさか」と思ったが現実となった。
彼らは逃げ延びる術に長けている。
だから、山本義隆氏のように「在野の研究者」の追跡が重要になる。
だれが逃げているか、見極めることができるだ。
日本の著名な科学者や企業が隠したい事実が明らかになっている。
著名学者の文章が記載されている。
仁科芳雄や湯川秀樹の名が登場する。
一読をお奨めします。
お読みいただきありがとうございます。