岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

アンジェラ・アキさんの「手紙」という名の音楽療法

2009-03-27 23:02:59 | 日本の仲間
今夜のNHK特番で、中学生の「手紙」を紹介していた。
3月、旅立つ季節ですから。

無骨な岩清水ですが、なぜか合唱が大好きで、NHK合唱コンクールは、毎年楽しみにしています。
アンジェラ・アキさんの「手紙」は、昨年10月のコンクール中学生の部の課題曲でした。
その課題曲が、紅白に登場したというのは、半ば「NHK的企て」ですが。

私は、この曲には当初からとても心動かされていました。
その気持ちを持ち続けたこの1年半でした。
「手紙」ウオッチャーを自認しています。

アンジェラ・アキさんが中学の部の課題曲を作詞作曲すると聞いたのは一昨年の10月、
NHK学生コンクールを放送した番組で、でした。
彼女はその年の年末から年始にかけて課題曲を作り、できたのが「手紙」です。
この曲を中学生は半年かけて、練習し、コンクールに挑むことになります。

NHKは、1年以上の間、この「手紙」を取材しました。

対象の中学生とアンジェラさんの交流を映した映像は昨年の春にすでに撮影され、
放送されました。その番組はとても心打たれるものでした。

「手紙」は、15歳のアンジェラさんが30歳の自分にあてた実在の手紙です。
自分がなにものか分からずに悩み、友人関係に悩み、自分に自信を喪失してしまいそうな
中学生のアンジェラさんの手紙は、今の中学生に強い共感を持って迎えられました。

合唱を通じて、背中を押され、自分を信じることの大切さを学んでいく多くの中学生を
カメラは追います。
合唱は、チームワークです。
学生時代に生涯の友をつくる最適な環境のひとつといえます。
声と心を合わせることで合唱は、人を育てます。

特に「手紙」のような曲を与えられた場合はやぼな言い方ですが、「音楽療法」と
しての効果も発揮されます。

大人になって、少々、感受性が衰えた人々にも、誰もが通過したはずの15歳が
どのようなものだったか、思いだされるのではないでしょうか。

ただ、この「手紙」を歌ったことで、中学生の悩みがなくなるほど、悩みはシンプルでは
ないことも確かです。
逆に深くなったといいます。
しかしその悩みは以前と同じではなく、深みを持った、すわなち、豊かな悩みになったといいます。
言い換えれば、前に進む悩みとなったのです。

アンジェラの元には、2000通の手紙が届けられます。
その手紙を、中学生が読んでいきます。

その映像を観ながら、本人たちがどのように思おうとも、人間の素晴らしさを感じて
しまいます。
このような時間を経過することなくして、人間は人間になりえないのではないか。
そんな時代が、15歳の頃なのですね。

この3月、アンジェラ・アキの「手紙」も映像の中では卒業していきます。
しかし、「手紙」は合唱の名曲としてこれから長く歌い継がれていくことは確かです。
それだけの価値がある曲です。


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