金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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昨日今日明日あさって。(営巣地)188

2020-10-25 08:05:45 | Weblog
 俺はパティ毛利と近況も話し合った。
「ボブとは最近どうなの」遠慮がないパティ。
 ボブ三好。
三好侯爵家の分家筋の男子で、
僕だけでなく平民には辛辣な対応に終始していた。
「ポブ三好殿は僕と目も合わせてくれなくなりましたよ」
「あの子は昔からそうなのよね。
身分に拘り過ぎて、逆に自分を不自由にしているわね。
もっとも、貴男が相手の場合は嫉妬ね。
見下していた人物が自分より上になったものだから、
どうしていいのか、分からないのでしょう。
今さら、友達面もできないし」
「ええ、今さらですね。
僕しても、友達面されると怖いです」

 後ろのアシュリー吉良の表情が険しくなってきた。
焦れている様子。
ついには口を出してきた。
「パティ様、そろそろ行きましょうか」
 パティの顔が微妙に変化した。
僕とアシュリーを見比べる視線。 
でも口にはしない。
言葉を飲み込み、どちらにともなく言う。
「難しいものね。
まあ、いいわ」アシュリーに頷き、僕に視線を戻し、
「ところでダンタルニャン佐藤子爵様、
貴方の御家来衆に魔法使いはいますか」意外な質問をくれた。
 彼女が僕を子爵様呼ばわりする時は、何かある。
「いませんが、それが何か」
「王宮区画の惨状はご存知かしら」
「遠目にですが、瓦礫でかなり酷い状態に見えます。
でも王宮区画ですから、近衛軍の魔法使い達が対処するのでしょう」
「普通ならそうです。
・・・。
子爵様のお耳に入れて置きますね。
管領のボルビン佐々木様より評定衆にお触れが回りました。
風魔法や土魔法の使い手を揃えて王宮区画へ参るようにと」

 管領職、ルビン佐々木公爵。
現国王が未成年時、その後見をしていたこともあり、絆は強い。
そんなボルビンが管領職として、
異例なお触れを出すからには只事ではない。
俺は尋ねた。
「管領職と評定衆ではどちらが上なんですか」
「古来よりは評定衆が上。
管領職が定席になったのは、つい最近ですから、
どう考えても管領職は下でしょう」
「世間では管領は国王の右腕と言われていますけど」
 するとアシュリー吉良が割り込んできた。
「それは無責任な世間の戯言。
国王を真下で支えるのが評定衆。
管領に指図される覚えはないわ」
 パティが苦笑いで言う。
「お父様から聞きました。
管領が評定衆にお触れを回すのは越権行為だそうです。
・・・。
つまり、それだけ管領様は追い詰められている」
「何に・・・。
そうか、風魔法や土魔法は瓦礫の除去。
王宮区画の除去は近衛軍の魔法使いだけでは足りない。
さりとて街中を受け持っている国軍は動かせない。
そこで評定衆が持つ魔法使いと言う訳か」
「評定衆限定ではなく、その影響下にある血縁貴族家も含めるそうよ」
「大掛かりですね。
もしかして、国王陛下の御一家に関わる事態ですか」
「たぶん・・・、地下に避難されてるとは思うけど・・・。
それ以外には考えられないわ」

 国王ブルーノは家族と共に地下室に避難していた。
堅固な造りなので上の階が潰れ落ちても、何の影響も出ていない。
時間の経過から頃合いとみて、ブルーノは外に出ようと、
警護の近衛兵に命じた。
「そろそろ外の空気が吸いたい。
直ちに扉を開けよ」
 警護の五人が扉に駆け寄った。
ところが外に繋がる扉は微動だにしない。
ガタともしない。
隊長が振り返った。
「瓦礫が邪魔しているみたいです」
「瓦礫か・・・、何とかならぬか」
 侍従長が宥めた。
「外の者達を信じましょう。
必ず来てくれます」
 王妃のベティが愛娘・イヴを抱いて歩み寄って来た。
「階下の貯蔵庫に非常食がありました。
これで当分は食い繋げます。
辛抱しましょう、この子の為にも」
 ブルーノは全員を見回した。
妻と子で二人、侍従長を含む侍従が四人、侍女が三人に女官が二人、
そして近衛兵が五人。
みんなの命をブルーノが預かっていた。
迂闊な言動は慎まなければならない。
「分かった。
ところで、ここの空気穴はどこに繋がっているんだ」鼻をムフムフさせた。
 近衛の隊長が答えた。
「地下水路です。
ちょっと臭いますが、ご辛抱下さい」

 国都の下を地下水路が縦横無尽に走っていた。
地上が計画的に造られたのに対し、
地下水路は魔物の侵入を防ぐ工夫もあり、複雑怪奇になっていた。
地図なしでは点検にも修理にも入れない、そんな有様だった。
 水路の端の通路を進む一団があった。
地図と魔道具の【携行灯】を先頭にして、
水路に落ちぬように慎重に進んでいた。
全員が武装していた。
まちまちの装備だが、良質の物ばかり。
とても個人で購える物ではない。
 先頭の男が足を止めた。
「先で交差しています。
右でよろしいのですね」確認を怠らない。
 真後ろの男が傍に寄り、地図と交差している地点を見比べた。
「地図を信用するなら、ここで右だな」
「万一はないですよね」
「俺達を騙して何とする。
奴等はそこまで馬鹿じゃない」
 男は後ろを振り返った。
「獲物までもう少しだ」

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