2024年5月20日に就任した頼清徳新総統(中央)、蔡英文前総統(左)、蕭美琴新副総統(右)。画像: jamesonwu1972 / Shutterstock.com

 

《ニュース》

台湾で頼清徳総統が就任して以来、野党・国民党が多数派を占める立法院(国会に相当)では与野党の紛糾が続いています。24日には10万人以上による市民デモが行われており、28日にも台湾各地でデモが開催されています。

 

《詳細》

台湾では今年1月、総統選と同時に立法委員(国会議員)選が行われました。総統選では蔡英文総統の下で副総統を務めていた民進党の頼清徳氏が当選しましたが、立法委員選では親中派の国民党が第一党となり、2020年の総統選で蔡英文氏と戦った韓国瑜氏が議長に就任しました。2月と3月には国民党副主席の夏立言氏が訪中。4月にも国民党の立法委員17人が訪中しています。

 

そして5月20日の頼政権発足に先駆けて、国民党は立法院の権限を強める国会改革法案を提出。17日の本会議では最大野党の国民党が議論も投票もなく、拍手によって議決を強行しようとしたため、民進党は実質的な審議が行われていないと阻止を図り、乱闘が発生。議決は先送りされました。

 

この法案は、台湾総統に年一回の政治報告を義務付け、野党議員が総統に疑問点を直接問いただすことができるもので、総統はその場で答弁する必要があります。台湾の総統は外交と防衛、中台関係が専権事項であり、立法院での答弁は首相に当たる行政院長や閣僚が行ってきましたが、これに加えて総統に国会対応を求めることになるのです。

 

また、立法委員が職務や議案についての調査権を行使できるようになり、政府機関や法人、団体、関係者など民間も含めて、5日以内に書類を提供できるよう請求することが可能となります。個人情報や営業秘密を守る措置が行われていない中、拒否や引き延ばし、隠蔽した場合は、10万元(約48万円)以下の罰金を何度も科すことができます。

 

さらに政府官僚が立法院で答弁を行う際に、質問に問い直す「反問」を禁じ、答弁や情報提供を拒否したり、虚偽の答弁を行った場合には、20万元(約97万円)以下の罰金を、是正されるまで科すことができるとされています。民進党の立法院党団(議員団)は、「反問」の定義が曖昧であり、立法院の権限が不当に拡張されると批判しています。

 

上述した「国民党と中国共産党政府の深い関係」に鑑みれば、一連の動きには北京の中国政府の意向が強く働いていることは明らかでしょう。