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天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

高山れおな『切字と切れ』

2020-02-20 15:29:42 | 


2019年8月/邑書林/本体1819円

目次
第一部 切字の歴史
はじめに
第一章 切字の誕生
  短連歌から長連歌へ 平安〜鎌倉時代
  二条良基と切字の胎動 南北朝時代
  十八切字の成立 室町前期
  切字は何をどう切るのか 川本皓嗣と藤原マリ子の機能研究
  切字運用の実際 室町中後期
第二章 芭蕉と切字
  『去来抄』の切字説
  『三冊子』の切字説
  「七つのや」「五つの哉」を許六で読む
  支考『俳諧古今抄』の可能性
  国学以後
第三章 「や」の進撃と俳諧の完成
  上五末の「や」をめぐって 山本健吉と仁平勝
  「や」の使用法の歴史 田中道雄の実証研究
  談林の「や」、芭蕉の「や」
  「配合のや」という分水嶺
第四章 古池句精読
  古池句という謎
  「古池」とは何か 上五の検証
  『葛の松原』を疑え
  蛙はなぜ「飛び込む」のか 中七の検証
  芭蕉は「水の音」を聞いたか 下五の検証
  疑いと詠嘆 二つの「や」をめぐって
  禅的なるものと芭蕉
  古池句読解の要旨
  『古池に蛙は飛びこんだか』について

第二部 切字から切れへ

 第五章 「切字/切れ」の現在
  エポックメイキングだった『俳句と川柳』
  総合誌における「切字/切れ」
第六章 切字の近代
  切字など論ずるは愚の至り — 子規の場合
  虚子の選択と集中
  新興俳句の切字忌避
  波郷または韻文精神または切字
  切字を延命させた山本健吉の熱烈切字説
  誓子、切字を語らず
  戦後の入門書に見る切字説
   Ⅰ 秋元不死男
   Ⅱ 中村草田男
   Ⅲ ふたたび波郷
   Ⅳ 能村登四郎
   Ⅴ 楠本憲吉
   Ⅵ 鷹羽狩行
   Ⅶ 金子兜太
第七章 国語学と切字
  松下大三郎の非歴史的切字説
  浅野信と切字精神というアポリア
第八章 切れという夢
  切れと実存!?
  見出された切れ — 西垣脩の場合
  文節に近づく切れ — 夏石番矢の場合
  切れ、この曖昧なるもの
  切れへの移行と昭和の終わり
  長谷川櫂の「間」の文化論
  復本一郎の「首部/飛躍切部」論
  平成の終わりと俳句の夢


本書の帯文は以下のように謳う。
平安期の前史から現在に至る切字と切字説を通覧。
「切れ」が俳句の本質でもなければ伝統でもなく、
1960~70年代に切字説から派生した一種の虛妄であることをあきらかにする。
平成俳壇を覆った脅迫観念を打破する画期的論考!


この帯文は内容をよく伝えている。
「一種の虛妄」の張本人が俳句界の泰斗山本健吉の論説でありそれに則った石田波郷の実作であった。鷹俳句会のルーツは湘子であり、彼が兄事した波郷の切れ重視を湘子も継ぎそれが鷹の伝統となっている。鷹衆は波郷の「霜柱俳句は切字響きけり」を金科玉条のごとく暗誦する。
これに対して高山さんは切れを重視しない立場であり、虚子、子規を引き、文末で俳句はとにかく切れる、俳句はそういうものであり、そう切れ切れと論じても仕方ないと、木で鼻を括るようなスタンスに終始する。それが逆に、山本健吉、石田波郷を崇めるわれら一派にも大いに刺激になるのである。

高山さんは頭脳明晰にして勉強家であり、古今東西のさまざまな切れに関する論考の肝心のところを要約して見せてくれる。
小生がいちばん注目したのが、「第六章 切字の近代」の章。
ここで現代の主要俳人たちが語っている内容は、切れ・切字を離れて俳句の読みや本質にかかわることに及び滋養に富む。
たとえば、鷹羽狩行が次のように言う。
結論としていえることは、俳句には、その古典時代から二元的構成(二句一章)の形式があり、それが一元的構成(一句一章)に変りつつあることです。しかし、俳句の二元的構成は、根底にある季題と、一句に特定の内容との緊張関係(対立し照応し関連する仕方)の反映です。したがって、近代俳句の一元的構成形式も、この同じ緊張の関係をさらにどこまでも深く追及した結果生まれたもので、俳句形式の段落・無段落にかかわらず、俳句は二にして一、一にして二とでもいうべき構成形式をもつと考えられます。

このことを最近ずっと考えていたので膝を打つ思いであった。
この種の寸言が点在して光る。
どの結社でもいい、俳句を20年ほどやった人が読んで有益な内容である。わかったようでほんとうは難しい切れと切字を論考しながらに俳句全般について波及していて奥行がある。
鷹衆はぜひ読んで欲しい一書である。
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