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天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

作中の名に惹かれて読む

2018-03-23 15:48:38 | 


妙なタイトルだなあと手に取った、荻原規子『RDGレッドデータガール はじめてのお使い』。角川書店、2008年刊。初めての作者である。
漢字の多くにルビ(ふりがな)があるのと、見返しの内容紹介の次の紹介文に惹かれた。

山伏の修験場として世界遺産に認定される、
玉倉神社に生まれ育った鈴原泉水子(いずみこ)は、
宮司を務める祖父と静かな二人暮らしを送っていたが、
中学三年になった春、突然東京の高校進学を薦められる。
しかも、父の友人で後見人の相良雪政(ゆきまさ)が、山伏として修業を
積んできた自分の息子深行(みゆき)を、(下僕として)泉水子に
一生付き添わせるという。しかし、それは泉水子も知らない、
自分の生い立ちや家系に関わる大きな理由があったのだ。


泉水子は人見知りする娘でボーイフレンドはおろかクラスできちんと会話できる相手も少ない。
なんとか自分を変えたいと思って前髪を切ったことで、予想できなかった妙な現象が次々現れる。自分が触ったパソコンが故障したりして自分の家系はみんなと違うのではないかと気づく。
めったに会わない父が薦める東京の高校も自分の家系と関係がありそう。

内容は夢枕獏ふう宗教ファンタジー。さらに詳しくいえば陰陽道系スリル&サスペンスのジュニア向けということになろうか。
角川書店が2008年7月に学童書「カドカワ銀のさじシリーズ」として刊行しただけに、字が大きく読みやすい。中高生の本好きは夢中になる物語性を含んでいて、成人が読んでもけっこう次へ次へと誘われる物語。
それでも第1巻でやめようと思ったが、2巻目『RDGレッドデータガール はじめてのお化粧』の見返しを見て読み進む気になった。

神霊の存在や自分の力と向き合うために故郷を去り、東京の鳳城学園に入学した鈴原泉水子が寮に入って同室になるのが、宗田真響(どうだ・まゆら)なのだ。

著者は早稲田大学教育学部国語国文科卒。
ほかに『空色勾玉』なる題名の小説があるように、和語に造詣が深いのである。
真響を「まゆら」と読ませる作者の教養と感性にまいってしまった。
いま、日本の小・中学生の女子の名で「〇〇子」は極端に少ない。ぼくはひそかに「千鶴子」「小夜子」など子のつくしっとりした名前を望んでいるのである。

そうした中で、「まゆら」の響きはぼくを魅了した。万葉集には「玉響(たまゆら)」という言葉があり、一瞬を意味する。
「ゆら」は、玉が触れ合って鳴るさまを表すことばである。「玉響」からは「魂響」のイメージも生じてこのうえなく奥ゆかしい。

姫神が降臨する受け皿として鈴原泉水子はこの世に生を受けたのではないか。ルームメイトの美少女、宗田真響と織り成す和語の世界にドキドキしている。
本シリーズは全6巻。



レッドデータブックとは、
絶滅のおそれのある野生動物の情報をまとめた本で、国際自然保護連合が1966年に初めて発行したもの。初期のレッドデータブックはルーズリーフ式のもので、もっとも危機的なランクに選ばれた生物の解説は赤い用紙に印刷されていた。




岸田メルの絵によるアニメ版
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