日馬富士から金星を挙げた宇良
大相撲名古屋場所。
初日に大関が3人、横綱が2人負けたとき暑いなあと思った。
鶴竜は12勝上げないとヤバいと思っていたら初日は勝った。よしよしと思っていると3日目に負けて翌日からなんと休場。
まあ日本人横綱もふくめ3人いるからいいかと思っていたらその横綱の目玉、稀勢の里が6日目から休場、同じく照ノ富士も休場。
目玉があっという間に消えて全勝の白鵬を1敗の髙安と2敗の日馬富士が追う展開。
ここで8割方優勝の行方は見えた。
暑いなあ相撲はやややばかりなり
戯句が生まれた。
立ち直った髙安がずっと負けずに行ってやはり負けないだろう白鵬との一騎打ちしかないだろうと思っていた矢先、髙安がこけて名古屋場所をぶちこわした。
C級戦犯である。
休場した稀勢の里がA級戦犯、鶴竜、照ノ富士がB級戦犯。
髙安は先場所、立ち会いのかちあげとぶちかましで大関の座についた。
その戦法で今場所も臨んだが相手はかなり研究してきた。それに気づかなかったのと、かちあげとぶちかましが自分の体勢を一瞬棒立ちにすることに意識が行かなかった。ぼくは先場所からこれは危ないと思っていた。
先場所は腰高を隠すパワーと瞬発力があった。
引っ張り込むという悪癖で足を痛めて力士としての危機に直面している照ノ富士より髙安はまし。自分を痛める腰高ではない。しかし思わぬ取りこぼしをするだろう。
白鵬のように膝が曲げることができれば横綱を取れるだろう。
けがをしたから休場はしようがないというのはアマチュアの世界での泣き言。
プロはけがも自分自身の責任である。
稀勢の里も腰高で上体を強引に使ったことが上腕のけがにつながっている。押すというより捻るという使い方がけがを招く。
鶴竜のけがはすぐ引くことが原因。引いて負けてさらにけがをする。これに気づかない、直せないなら引退しかない。
満身創痍の日馬富士には同情する。
彼は2場所全勝優勝して横綱に駆け上がったときが力士人生でピークであったと思う。劣る体格での2場所全勝優勝は誇っていいし8回の優勝は評価できる。
軽量ゆえの突き刺す立ち会いは究極のものだろう。
ここまで低い体勢をつくれと大型力士に要求しないが、彼の姿勢の意味に気づき、稀勢の里、髙安、照ノ富士が膝を曲げてあと5センチ身を低くできればけがもしないし勝ちも増えるだろう。
白鵬が丈夫で長持ちするのはやはり体勢にある。
絶対王者の白鵬と軽業師宇良が眼目となった名古屋場所で、力士の体勢のよしあしを中心に見ている。
膝を曲げ腰を落とした白鵬の安定した攻め(対輝戦)

大相撲夏場所3日目が過ぎた。
稀勢の里が1敗、今日も危ない相撲。九死に一生を得たという感じ。今場所は五つは落とすだろう。休まずにに出て10勝すればいいだろう。
優勝の本命は関脇髙安。今日、琴奨菊を、きのう豪栄道を弾いて寄せ付けなかったのはもはや地力の違い。すでに大関といっていい。
気持ちが続けばという条件で優勝チャンス。本人も意識しているだろう。
対抗は白鵬。
3連勝しているが問題は、勝負の決着を急ぎすぎること。
今日解説の北の富士さんもそれを指摘した。
1秒でもはやく勝負をつくようとしているように見えるしそうしている。その心理の背後に長い相撲を取ると後半スタミナがもたないという不安を感じているのだろう。白鵬、晩年である。相手との闘いと自分自身のガス欠との闘いをしている。
俳句でいうと五・七で終えてしまい下五は考えたくないといった危うさが白鵬にある。
このせっかちさが2敗を招くだろう。
優勝ラインは13勝か。
3番手に横綱日馬富士を上げるべきだろうが、彼は最近へんなところで星を落とす。信用できない。
優勝ラインが12勝に落ちたときろ御嶽海のがおもしろい存在。今日、玉鷲を破った相撲は実戦での勝負勘のよさを表している。
ひいきの照ノ富士は相撲が雑。もうすこし腰を割った地を擦るような立会いができないものか。まわしを取ればこんな豪快な力士はいない。緻密と豪快はなかなか両立しない。
まあ、好事家の思惑通りにはいかないか。
幕内力士はみな強いのである。
左髙安が速攻で照ノ富士に完勝
大相撲春場所、最高の見ものは照ノ富士VS髙安であった。
ともに5連勝どうしの一騎打ち。優勝したときの勢いの大関と、上ってくる関脇の対決は互角とみていた。
そしてこの二人が弱い横綱二人(鶴竜、日馬富士)をおしのけて稀勢の里と三つ巴の優勝争いをするだろうと読んでいた。いつもなら六日目にこんな黄金カードを組んだ協会に抗議した気持ちなのだがきのうはそうでもなかった。
現状、どちらが強いか見たかった。
本日の読売新聞の大相撲のトップニュースは「小兵対決宇良速攻」であるが事の本質が見えていない。
五日目、正代を立ち会いに弾き飛ばした髙安の地力は一皮むけたと思ったがそれは大関にも通じ、一気に押し出して勝った。意外だった。少なくととも両者はまわしを引く展開になると読んでいた。そうなってほしかった。そこでの攻防を期待したがあっけなかった。照ノ富士に立ち会いの甘さがあるのだが髙安はべらぼうに強くなっていた。
彼に大関はすぐやってくるだろう。
髙安は四つ相撲か押し相撲か判然としないのだが、正代戦、照ノ富士戦を見てると序盤押し、突っ張りでいって機を見て差すのがいいような気がする。四つ相撲も取れるが豪栄道のように型がなくて不安を与えるわけでもない。かなり期待していい。
髙安―-照ノ富士はこれから2,3年大相撲の屈指の好カードになるような気がする。
故障から癒えたときの照ノ富士は全盛時の白鵬をまわしを引きあって破ることのできるパワーを秘めている。
髙安27歳、照ノ富士25歳。二人がこれから20番は本割で火花を散らすことを期待している。
山中慎介様、WBCバンタム級12回目の防衛おめでとうございます。ダウンを5回奪っての第7ラウンドTKО勝利、すばらしいのひとことです。
第5ラウンド、カールソンの大振りのフックを食らってぐらつく危機も見せるという演出までしてくださいました。
お金を払って見にきてくれたお客様へのサービス精神も一流です。ぜひ具志堅用高様の防衛記録に並び、さらに越えていってほしいと願っています。
一つお願いがあります。
リングの上で御子息を抱いて、パパ強かったでしょう、みたいな演出をするのがいかがなものでしょうか。視聴者のご機嫌を取りたいテレビ局もいけないのですが、神の手はそれを拒否してもいいのではないでしょうか。
ぼくはあなたを一人の屈強の男、剛腕の格闘者と見ています。一人黙々と常人のできぬ鍛錬を続け神域に入った存在と見ています。極北のストイシズムの光として崇めるのです。
そんな存在が神聖なリングの上でエロスの所産を抱いて誇らしげな顔をするのはどうにも違和感を持ってしまいます。
あなたがリング上で毎度御子息を抱くシーンを見ているうちにパンチドランカー状態になってやや違和感が薄れつつありますが、でも、やはり、神域のストイシズムを演出してほしいのです。
大相撲で土俵上で優勝力士が御子息を抱いたことがあったでしょうか。抱くのは優勝賜杯です。
一時、女性が土俵に上がることさえ神聖さを穢すといって問題になったほどです。
敗者がよろよろ去って行くかたわらで御子息を抱いて見せるのは、倒れた相手を後ろからハンマーでぶん殴るような非礼のようにも思えます。「慎介」の「慎」には、<つつしみ>という意味がこめられています。
小生の提唱する保守的な倫理観に目覚めたならばなおいっそうスーパースターを崇めることができるのです。
以上、老婆心ながら。
玉鷲の懐の深さの勝利
大相撲九州場所6日目、やっと落ち着いてテレビ観戦した。
一番期待したのが豪栄道VS玉鷲戦であった。一度優勝してかくも相撲が毅然とするかと思うほど豪栄道は変わった。3場所前と比べると別人である。
今場所も5連勝して別人ぶりを表現していたが負けるとすれば玉鷲ではないかと思っていた。
玉鷲も今場所は別人のような隙のない激しい相撲を取っている。つまり変身したもの同士の対決であった。
豪栄道にとって何より嫌なのは玉鷲が長身で手が長いことである。
長身で手の長いメリットを大相撲では「懐が深い」という。豪栄道のように体を密着して寄るタイプの力士にとって「懐が深い」玉鷲は攻めを殺す空間をつくることがうまいということである。
玉鷲は前場所まで手は長いが活用していなかった。相撲が鈍かった。
どうしたことか今場所は長い手の突き押しが激しいため守勢になっても余裕がある。相手が絶対有利の密着を許さず逃げながら巧妙に間合いを計っている。それが土俵際での突き落としとなった。
ボクシングでいうとファイターの豪栄道をアウトボクシングの玉鷲が屠ったという感じの、会心の勝利であった。

腹ばいは豪栄道

もろ差しであった栃煌山(右)がなぜこのようになって負けるのか
次の栃煌山VS照ノ富士戦も間合いという観点からみて興味深かった。
栃煌山はもろ差しという絶対有利の状態をつくりながら照ノ富士に残された。ふつうは絶対有利のはずがそうでもないのは栃煌山が完全密着を嫌ったためだろう。そこまで間をなくすと照ノ富士の決めを食らい逆に動きを封じられる。
そのゆるみを照ノ富士がついて残しながら逆襲し腕一本を差し込んだとき、ああ、栃煌山は負けるなあと思い、その通りになった。
栃煌山にとって照ノ富士は天敵であるが、もろ差しになられても負けない照ノ富士の懐の深さはやはり魅力的である。
今場所とりあえず勝ち越せば未来はあるだろう。負け越してもこのいい資質を上手に使えばまた浮上するだろう。
白鵬VS遠藤戦。
よもや遠藤が勝てるとは思わなかった。勝因は立ち会いの鋭さで白鵬の間を消したこと。白鵬も間を取って相手の力を削ぐことが巧みな力士であるが間を遠藤が完全に潰した。
あっぱれ遠藤。
これで優勝争いがおもしろくなった。一敗したとはいえ豪栄道はいい。白鵬も悪くない。
人気薄の鶴竜あたりの一発もありそうだし、目標が消えて気楽な稀勢の里もおもしろい。群雄割拠の九州場所という様相を呈してきた。