
10日目、宇良にとったりで負けた阿炎
大相撲九月場所。おおかたの関心は関脇大の里に集中している。きのう大の里は1敗で追ってきた霧島を寄り切って10連勝。立ち合いに変化した霧島はなさけない。大相撲の盛り上がりに水をさした。優勝はほぼ間違いなく全勝できるかという興味に変わった。
同じ関脇でほとんど注目されていないのが阿炎。今年の成績は、初場所8-7(西前頭2枚目)、三月場所9-6(小結)、5月場所10-5(関脇)、7月場所8-7(関脇)。活躍して上位をキープしている。大の里同様注目されていい力士なのだが、きのう宇良にとったりで破れ、2勝8敗と負け越しが決まった。関脇まで来られるがここを越えていけないのが阿炎である。
武器は、突き、押し。きのう宇良戦も終始、突っ張りを繰り出した。しかし宇良は、突きまくられるも頭を上げずにひたすら耐えた。機を見て相手の右腕を両手で抱えてとったりで仕留めた。
小生は阿炎の一番の武器「突っ張り」を問題にする。
阿炎が突っ張りを繰り出しながらのど輪を突き上げて土俵へ持ってゆく取り口には感動するが、この戦法が成功する確率より、外されて墓穴を掘る確率のほうが高いのではないか。突っ張りで相手を土俵に出そうとするが終盤で交わされたり、いなされて体勢が大きく崩れ負けたシーンを何度となく見た。
阿炎の突っ張りを見てこの技はえらく危険だと確信するに至った。
突っ張りは相手との距離を取る技である。四つ相撲のように体が密着するのと逆だから相手の自由を殺すことができない。これがきのう宇良に負けたような結果を招く。阿炎の出す腕をみんなが狙っているのである。
阿炎自身もそれに気づいていて、押し込んでいって突き切れないと、はたく、ということを覚えた。これが案外決まるから突いていってはたくという相撲が増えてきた。しかし楽をして勝つ相撲で大関には上がれないのである。
突っ張りを立ち合いの直後だけにして、別の戦法を取ることを考えていいのではないか。
大鵬と柏鵬時代を築いた柏戸を思い出す。柏戸は初期、阿炎と同じ突っ張り相撲であった。ところが横綱になってからそれをほとんど見なくなった。
横綱になって柏戸は、立ち合い、前みつを両手ですばやく引いて寄る、という相撲に変えたのである。柏戸の電車道はこうして完成した。
阿炎がかの柏戸ほどの相撲内容の変革をできるとは思えない。
けれど、突っ張りからどちらかを差してのはず押し、はできるのではないか。
身長187cm、体重166kg。まだまだ体を有効に使っていない。いまの取り口ではもったいないし先がないと思うのである。