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天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

落ちることと裏返ることの妙味

2021-05-23 04:20:02 | 大相撲

○遠藤 下手投げ ●照ノ富士

大相撲五月場所、一番の見ものが照ノ富士対遠藤であった。
今場所の遠藤は貴景勝をきのう食って10勝あげて絶好調。立ち会いズバッと入ってもろ差しになって一気に寄れば照ノ富士は危ないと思った。その確率は7割と見たらその通りの展開となった。遠藤最高の攻めの形となった。けれどふところ深い照ノ富士が左小手投げで挽回を図ると、遠藤の身体がひっくり返るようになって両者が落ちて行った。落ちるのは照ノ富士の方がはやかったが行事軍配は照ノ富士に上がった。
当然物言いがついた。

久しぶりにヨミトモF子から電話が来て見解を問われた。彼女は照ノ富士の優勝を願っているようだがそれにまして遠藤のファンである。むつかしい生き方である。

協議の結果、行司軍配指し違えで遠藤の勝ちとなった。
F子は取り直しになると思っていたらしい。ぼくはそれは無いだろうと言ったら、どうしてと問う。説明するのは簡単でないが取り直しにしにくい質であると思った。
行事が照ノ富士を勝ちとしたのは、遠藤の身体が裏返りその時点で「死に体」と見たからであろう。まだ死に体でないと見たのが審査員であった。彼らの協議は死に体であるかどうかに終始したであろう。結果、死に体でない、という総意に達したのであった。

写真を見ると遠藤の身体は完璧に裏返っていない。側転しているような時間が長くその間に照ノ富士の落下が顕著であった。遠藤の着地している右足から体幹にかけて力がみなぎって作用している。これを生きていると見た審査員の見解が妥当であるとぼくも思った。遠藤の身体にばねがありばねが遠藤を救ったのである。
短い時間であったが大相撲のおもしろさを満喫した。落ちることと裏返ることの妙味、といっていい豊かな時間であった。


左、遠藤の身体があと30度返っていたら右、照ノ富士の勝ちになっていた、はやく落下しても。





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すばらしい前傾・若隆景

2021-05-11 05:22:16 | 大相撲



大相撲五月場所二日目、前頭筆頭・若隆景の相撲にすがすがしさを感じた。相手は大関・正代。立ち会いから一方的に攻めて大関に何もさせず、寄り切った。
両者の相撲に対する姿勢の違いが極端に出た相撲であった。正代は大きくて身体そのものの力で圧倒する取り口。問題は腰が高いこと。これでよく大関にまで上ったと思うほど姿勢は良くない。突っ立っている。前傾して脇を締めて突き上げるように押すのが相撲の王道だが、それを外れて大関になった稀有な力士が正代である。これで長続きするのか疑問だが先場所負け越して今場所が角番。
正代の悪さの正反対の力士が若隆景で、王道が邪道を葬った一戦であった。さて、正代勝ち越して大関を守れるか。



相撲は「人」という字の右側の部位のように相手のふところに入るのがいい。それを完璧に見せてくれた若武者に拍手。
若隆景:身長182cm、体重127kg、得意技右四つ・寄り。




磐石の腰のおとし方
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腰を落として脇を締めよ

2021-03-19 05:38:35 | 大相撲
大相撲三月場所、久々に白鵬が出て鮮やかに2連勝した。やはりこの人が主役かと思ったら3日目から休んでしまった。とたんに「夏芝居監物某出てすぐ死 小澤實」を思った。白鵬は監物某のような端役ではないのだから詐欺ではないか。
横綱がまたもや不在で団栗の背くらべ状態となっている。




○阿武咲(押し出し)●照ノ富士
3連勝して第一人者かと思った照ノ富士が見事に負けた。いや、阿武咲が鮮やかに押し切ったというべきだが、四つ相撲ひいきの小生から見ると、照ノ富士の腰はやはり高い。大型力士ゆえそう小さな相撲は取れないが、行司に手つき不十分を指摘されたように姿勢が高い。勝った阿武咲は手をついて相手を待っている。これを見習っていいのではないか。
体格、体型は違うが白鵬の腰の割り方、下し方を勉強してほしい。立ち会い時の体勢の低さが大事。
照ノ富士は四日目に苦戦すると思われた大栄翔に完勝した。それがラッキーであったかのごとく同じタイプの阿武咲に完敗した。照ノ富士には押し相撲対策が永遠の課題。





○若隆景(寄り切り)●正代
腰高で大関にまで上ったのが快挙と思うのが正代。この人は自力が半端ではないのだろう。照ノ富士には回しを引きたい意思がしかと見えるが、正代は四つ相撲なのか押し相撲なのか判然としない。鵺(ぬえ)である。
俺はこういう相撲を取るのだ、という意思が型になって見えない。要するに勝てばいいんだろう、というやけっぱちな感じがして子供っぽく感じる。
もっと腰を落として脇を締めないともっと負けるのではないか。下から突き上げなければいけないのは、押し相撲も四つ相撲も一緒と感じた。


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寄りを防ぐ投げ

2021-01-24 07:07:02 | 大相撲

照ノ富士(右)の高度なテクニック

大相撲初場所14日目、一番も取組が正代VS照ノ富士であった。正代が負けるのでは予測した。
なんとか2敗で来てはいるが11日目隠岐の海と取り直し。ぼくは隠岐の海のほうが分があると思った取り直し。それも負けたと思ったら相手の足が出ていた(勇み足)。13日目の隆の勝戦も攻め込まれてのはたき込み。やっと勝ちを拾ってきた。相撲内容がよくない。
やはり腰が高く落ち着きがない。四つの型がまだない。
しかしきのうの照ノ富士の立ち会いはよくずばっと右が深く入った。左は知らないが食い付いたとき勝ったと思った。
押し込まれた照ノ富士が凄かった。抱えたまま左右に振るような投げで寄りをこらえた。投げによる防御は高度なテクニック、誰でもできるものではない。正代184㎝に対して照ノ富士192cm、8㎝の差がこれを可能にしたのだがふところの深さに正代は寄り切れなかった。
次に照ノ富士後ろ向きになるがここでも食い付いて送り出せなかったことが正代の敗因。
隠岐の海戦と隆の勝戦は相撲で負けていた。幸運二つでは優勝できないことを明らかにしてしまった。
正代の詰めが甘いのだがそれにしても照ノ富士の投げによる寄りの防御は技能賞ものである。完璧に防禦すれば幸運がやって来るという見本のような一番であった。



2度目の勝機を逃した正代(右)
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大相撲は草競馬

2021-01-18 06:35:21 | 大相撲

今場所絶好調の大栄翔

大相撲とかけて、
草競馬と解く。
そのこころは、
横一線で権威がない。

まず横綱がいない。大関が弱い。
昨今の大相撲が闇で博打の対象となっていたらそうとう興奮している人が多いのではなかろうか。蓋をあけてみないと何が来るかわからない。それは博打の対象としてこのうえないおもしろさである。
本命とされた貴景勝が2勝6敗で勝ち越しも無理そう。前の場所13勝で優勝した力士がこのていたらくは誰も予想しなかった。はじめは心理的重圧かと思ったがパワーががくんと落ちている。前へ押す力が前場所の半分ほどしかないから逆に押されて負けている。力負けである。
今場所押しに押しパワー全開の大栄翔が貴景勝のイメージであったが入れ替わった感じ。大栄翔の活躍を理事長は救世主と思ったようだが、後半彼がずっと勝ち続けるのか。押し相撲というのが本質的に不安定なのだ。それが貴景勝に出ているのであり大栄翔も同じ種類の取り口ゆえ信用しきれない。今場所、大栄翔が優勝したとして次に勝ち越せるか……。
現状の押し相撲力士が横綱まで駆け上がれるか、かなり疑問を持っている。御嶽海はひところ日の出の力があったが今は3番に1番しか力が出ていない。
野球だと俊足の選手は打つ方が不調でも盗塁する方はそう衰えないが大相撲は単純にただ押すだけなのになぜかくも好不調があるのか。押すという基本がいちばん難しいと思うようになった。
横綱は四つ相撲がいいというのが持論だが、その筆頭の朝乃山はまだまだおとなしい。かの朝青龍のような喧嘩ファイトがないと上へ行くのは無理。勝つ意識が全身に行きわたっていない。
照ノ富士はよくここまで戻ってきたが身体に故障があり過ぎて綱を張るまではいかないだろう。

おもしろいのは正代。表向きは四つ相撲となっているが押し相撲も苦にせず自身も押す相撲が多い。その自在さはいいのだがやはり腰高が気になる。よって本来の押し相撲とつきあうと昨日の御嶽海戦のように星を落とす。虻蜂取らずの取り口に思えてならない。突き押しもいいが回しを取る序章としての戦法というふうに意識するほうがいいのではないか。
大鵬にしろ白鵬にしろ応戦するための突き押しであったと記憶する。磐石の型というものを意識してほしい。

番付という権威がこう地に落ちてしまうとおもしろいを通り越して白けてしまうなあ。


輝をとったりで逆転した大栄翔
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