きのう結を連れて吉祥寺の動物園へ行った。
先日見た猿をもっと見たくなった。手摺の隙間から猿を撮るべくカメラを出したが地面ばかり写っていた。望遠機能はないしカメラマンが欲しいと思った。桜はそうとう開いた。
猿に手を振る子叫ぶ子うららけし
猿を見にきた幼稚園児らしい。猿より元気。猿はよく動くが発声しない。
囀れり草をむしつて食ふ猿に
猿が草を食うとは思わなかった。鴉のように何でも食うのか。
春や憂しいよいよ赤き毛脱け猿
尻に毛がないのは知っていたが背中の毛が抜けて地肌が見える猿がかなりいる。羽抜鶏という季語があるが、猿もかくも毛が抜けてしまうのか。
永き日や互いに見ない猿と鳩
猿から数メートル離れたところに鳩が降り立って何かついばんでいる。猿も何か拾って食べている。双方、関心を持たない。
駆ける栗鼠アイスクリームとろり落ち
栗鼠がめまぐるしく上へ下へ、右へ左へ駆けまわる。アイスクリームがなさけなくなってしまった。
なぜなぜと聞かれて惑ふ木の芽かな
最近、結は爺を質問攻めする。「なぜ東西線に人が乗っているの?」「なぜって、東西線でなきゃ行けないところへ行きたいのさ」まっとうな答えを考えるのに時間を要する。答えないうちに次の質問が来る。
頭突きもて山羊に追はるる花茨
これは動物園の山羊ではない。田舎の山羊との付き合いを思い出した。山羊は嫌いであるが俳句はよくできる。
モルモット見るだに温しもごもごと
結に「ハムスター?」と聞かれてハムスターとモルモットの違いをあとで調べた。両方ともネズミ系だがじゃっかん異なる。それを結に説明するのが大変。
コシジロヤマドリの♂。美しい。目の周りが特に良い。
マーラ。哺乳類、綱齧歯目テンジクネズミ科マーラ属に分類される。
武蔵野線は貨物列車がしゅっちゅう通る。それは中央線よりおもしろい。貨車に飛び乗って知らないところへ行ってみたいとしばしば思う。
鳥雲に貨車に飛び乗る旅ぞよし
たんぽぽや貨車ゆく時間とこしへに
貨車を引く機関車の腹に「ももたろう」とあり、結はその名を読んでうれしそう。踏切で貨車が過ぎゆく時間はこの世のものではない感じ。
途絶えしと思ひし貨車来る土筆かな
貨車のおもしろいのは、通り過ぎたと思ったときまた貨車が現れること。グリコのおまけみたいに豊かな気分になる。
男はどこでもおしっこができる。それは女より自由なところ。妻がいれば、「ちゃんとトイレへ行きなさい」というだろう。男は排尿からして行儀はよくない。許せ、女ども。
爺と子とならんで尿(ゆまり)下萌ゆる
最前の車両へ行きたがる結。運転士とその周辺の機器をじっと見ている。