けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

誰も語らない、日米首脳会談のもうひとつの成果

2014-04-30 23:59:44 | 政治
先日行われた日米首脳会談であるが、その後もオバマ大統領は東アジアを歴訪し、先日帰国の途についた。その中には実はあまり注目されていないが、安倍総理の大きな成果を指し示すメッセージが込められていた。今日はその点についてコメントしたい。

まず、そのニュースは日米共同宣言が発表された後で飛び込んできた。例えば、日本の新聞では以下の様に報道されている。

東京新聞2014年4月26日「米大統領『慰安婦問題は人権侵害』

記事ではオバマ大統領が韓国人記者からの質問に答えて、「従軍慰安婦問題はおぞましく、ひどい人権侵害だ。安倍晋三首相と日本国民は過去について、より正直に、公正に理解しなければならないことを認識しているだろう」と述べ、さらに下記の様に報じている。

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米大統領が従軍慰安婦問題に直接言及するのは極めて異例。日本政府に法的謝罪と国家補償を求める韓国側を後押しした形だ。オバマ氏は二十四日の安倍首相との首脳会談で安全保障面で日本側の期待に沿う発言を繰り返したが、歴史問題に関しては、安倍政権に自制的な対応を求める姿勢を明確に示した。
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テレビの報道の中では「記者が聞いてもいない慰安婦発言に自ら言及したのは異例」とも評価していた。テレビや多くの報道の中では、韓国の主張をオバマ大統領が聞き入れて、日本に対して注文を付けてきたとのニュアンスで報じられていたと思う。

最初に聞いたときには、オバマ大統領は単に「慰安婦は戦時中には酷い体験をし、それは明らかに人権蹂躙であり戦時中といえども許されない」と述べただけで、これは日本政府がいわゆる「アジア女性基金」という形で慰安婦女性に対して陰ながら補償に応じ、さらに「デジタル記念館」として国際的にも情報発信し、その歴史を重く受け止めていると認めていることと整合性が取れる内容であると感じた。しかし、それは私の直感的な感想でしかなく、誰も認めてはもらえないだろうなと思っていたのだが、そうではないようである。この点について順番に説明させて頂きたいと思う。
まず、この報道をニューヨークタイムズがどの様に報じたか、その一部を切り取ってみたい。

The New York Times 2014年4月25日
Obama Offers Support to South Korea at a Moment of Trauma and Tension

とてもではないが全文を読む気にはならないが、肝心な場所を切り取って見た。

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「South Koreans have been upset with Japan, for instance, over statements by right-wing nationalists downplaying Japan’s sexual enslavement of Korean women and girls during the war. Mr. Abe’s government further inflamed emotions by saying it would re-examine the evidence used for a landmark 1993 apology to the women, although the prime minister has since said he would uphold the apology.」
「例えば、右翼の国粋主義者で、戦時中に韓国女性・少女たちを性的奴隷にする所謂従軍慰安婦を軽視する発言により、韓国は日本により傷つけられてきた。安倍内閣は、(首相はその河野談話を維持すると言い続けているのであるが)1993年の画期的な慰安婦への謝罪に対して用いられた証拠に対する再調査を行うという発言により、更に韓国国民の感情を逆なでした。」
「Mr. Obama continued to try to play a peacemaking role on Friday, saying that he believed Mr. Abe “recognizes that the past is something that has to be recognized honestly and fairly.” But he also addressed the issue in unusually frank terms that might rile some in Japan. “Those women were violated in ways that, even in the midst of war, was shocking,” he said. “And they deserve to be heard; they deserve to be respected; and there should be an accurate and clear account of what happened.”」
「オバマ大統領は金曜日に、日本が韓国に対して行った過去とは、素直でかつ公正に認識されなければならないものであることを、安倍総理自身が十分に認識しているであろうと信じていると発言し、平和調停役を演じようとし続けている。しかし、オバマ大統領は(日本の一部の人を怒らせるかもしれない)普通と異なる率直な表現で、その問題に触れている。『これらの女性は(それが戦争の真っ最中であったとしても)ショッキングな方法で人権を侵害された。』そして続けて、『それらは聞く価値があり、尊重される価値がある。そして、何が起きていたかという正確で且つ明瞭な”説明”があって然るべきである。』」
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初っ端の「右翼の国粋主義者で、戦時中に韓国女性・少女たちを性的奴隷にする所謂従軍慰安婦を軽視する発言」というところから、既に評価が間違っていて異様なバイアスがかかっているのだが、その最たるものが「Japan’s sexual enslavement of Korean women and girls」という表現である。所謂従軍慰安婦のことをクリントン前国務長官は「sex slave」と呼んで日本を非難していた。この辺の事情を前段で説明しながら、如何に日本が酷いか、安倍政権が酷いかとの潜入観念を植え付けながら、後段のオバマ大統領の発言を引用して「オバマ大統領が日本を断罪しているニュアンス」を醸し出している。
ところが、オバマ大統領の発言のニュアンスはどうも違うようである。正確な記者会見の内容は下記で読むことが出来る。

The White House Office of the Press Secretary 2014年4月25日
Press Conference with President Obama and President Park of the Republic of Korea

そして、この内容を解説する形で、うさみのりや氏がブログに詳細を紹介していた。

うさみのりやのブログ2014年4月27日「ついにオバマ大統領が慰安婦問題に巻き込まれたようなんだが

これを読むと、本当のポイントが見えて来る。最初の導入部分の韓国記者の質問は、最初から大統領府と何処かの報道機関が事前にネゴったような内容で、朴槿惠大統領が喜んで安倍総理と日本に対して、慰安婦問題や歴史認識問題で日本のベタ降りを求める様な発言をし、オバマ大統領に対してもそれに対する同意を求める様な雰囲気を作り出す。これを受けて、さらに大統領府とネゴった様な記者が畳み掛け、オバマ大統領に安倍総理の歴史認識を糾弾する発言を求めるのである。それに対する回答が以下の通りである。元官僚のうさみのりや氏の訳(正確には、どうも外国の報道発表などを原文で読んで、その内容について議論する掲示板での訳を、氏自らの添削を加えたものの様)を引用する。

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「韓国と日本の歴史問題に関しては、 たとえば韓国の慰安婦に何が起きたかに関する歴史を振り返る者は皆, これがおぞましい, 言語道断の人権侵害であったと認識せざるを得ないだろう。 これらの女性は, 戦時という状況をふまえてなお衝撃的な方法で蹂躙された. 彼女たちの声に耳を傾け, 彼女たちを尊重すべきだ. そして, 起きたことに関する正確で明快な弁明がなければならない。
過去は誠実かつ公正に認識しなければならないものだということを, おそらく安倍首相はわかっているし, 日本国民は確実にわかっていると思う. 一方, 日韓双方の人々は, 過去と同様に未来にも目を向け, 過去の苦痛を解決する方法を探ることに関心を持っていると思う. なぜなら, 先に述べたように, 韓国と日本の人々の今日の利害は一致しているからだ. これらはいずれも民主主義国で, 自由市場を育てており, 経済発展している地域の要で, 米国の強い同盟国で友人だ. そして, 韓国および日本の若い人々のことを考えれば, 我々は誠実に過去の緊張を解決しつつ, 未来と, すべての人々のための平和と繁栄の可能性に目を向けることができるという希望を持っている. 」
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前半部分と後半部分で全く内容が異なっており、ここでは明らかに後段に重きが置かれた発言である。これは2月にケリー国務長官が「to put history behind them and move the relationship forward」という言葉を使って「安全保障上の重要なことの横に『歴史の話』を置いておき、両国の関係を前に進めよ(現在の混沌とした状況を前向きに動かして欲しい)」と語った内容とリンクしている。この時ケリー国務長官は、オバマ大統領が訪韓する前に、日本との歴史問題を韓国が歴史の話を(behindなので寧ろ「後ろに置いて」)解決しろとまで言っていたが、結局、韓国との間では何も前に進んでいない。これは歴史認識問題だけでなく、アメリカと韓国との間の懸案事項は、今回の訪韓で全く前進がなかったと言っても過言ではない状況である。

一方の日本はどうかと言えば、安全保障の問題からTPPの問題まで、国益と国益を率直にぶつけ合う正攻法の交渉を続けながら、歩みは課題によって緩やかなものもあるかも知れないが、確実に前に進めるという現実がある。

この様な中で、オバマ大統領は「アジア女性基金にみられるように、日本政府としても異論のない範囲」で慰安婦問題を非難しながらも、本題はその様な歴史問題ではなく、「我々(あなた方、韓国)は誠実に過去の緊張を解決しつつ, 未来と, すべての人々のための平和と繁栄の可能性に目を向ける」べきであると念を押している。しかも、ここでオバマ大統領が用いた言葉は「sex slave」ではなく、「comfort women」であったという点に注目すべきである。この言葉のニュアンスは、例えば「黒人奴隷問題をさらに醜悪にした女性の性奴隷」である「sex slave」に対し、「戦時中の兵士に対する性サービスの風俗嬢」である「comfort women」を用いて彼女たちの人権蹂躙を説いている。「風俗嬢」には親や親族に金で売られた人達が多くいて、実際、河野談話の証人となった金学順氏は自ら「生活が苦しくなった母親によって14歳の時に平壌のあるキーセン検番に売られていった。三年間の検番生活を終えた金さんが初めての就職だと思って、検番の義父に連れていかれた所が、華北の日本軍300名余りがいる部隊の前だった」と証言しており、まさに身売りの後の「風俗嬢」という位置づけである。この様な論点は常に韓国と対立し、中国・韓国のプロパガンダに毒された人々は、報道機関からクリントン前国務長官まで皆が「sex slave」という中で、オバマ大統領は「comfort women」という言葉を選んだ。さらに言えば、これは少々うがった見方かも知れないが、「there should be an accurate and clear account of what happened.」の「account」の「説明」「弁明」には、「河野談話の再検証をするならするで良いから、何が真実かを明らかにしろ。その説明責任(accountability)は日本政府にある」という隠れた意味があるのかも知れない。

私の予想では、寿司屋での会食での最大の成果は、ニューヨークタイムズが安倍総理を極右の国粋主義者と罵るような状況の中で、安倍総理のその人となりと真意を語って聞かせた点ではないかと思う。勿論、オバマ大統領はビジネスライクな人だからその様な話は長くはされなかったと思うが、どうも「ツボ」だけは押さえることが出来たのだと思う。例えば、日本が長きに亘り平和国家として何をして、慰安婦の女性たちにどの様な償いをしてきたのか、その様な話ぐらいだろうか・・・。

色々調べれば調べるほど、オバマ大統領にとっての朴大統領と安倍総理の重要度は日増しに差がついている様に見える。安倍総理には、このまま我が道を突き進んで欲しいと願う次第である。

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