今日のブログは有り得ない話をシミュレーションしてみようというお話。現実問題として、確率的には1%にも満たない話だが、もしこの様な展開になった場合にどうすべきかを考えておいた方が良いという指摘である。
その議題は北朝鮮の拉致問題である。今日、外務省の伊原純一アジア大洋州局長が北朝鮮を訪問し、北朝鮮の特別調査委員会の委員長であり、秘密警察の国家安全保衛部副部長でもある徐大河氏をはじめ、副委員長で国家安全保衛部参事の金明哲氏、拉致被害者分科会責任者の姜成男局長など、この問題の責任者が勢ぞろいして拉致問題を議論した。北朝鮮側は、遺骨問題や日本人妻問題などを前面に出して日本側に「じらし」攻撃を仕掛けており、如何にも今回も不誠実な対応をするオーラを出しまくっている。常識的に考えて、北朝鮮が国家機密を多く知り得た拉致被害者を日本に帰すとは考え難く、前回も「全員死亡」と回答していたのでその整合性も考えれば、ごく一部の(北朝鮮的には「雑魚」に相当する)特定失踪者を数人、日本に帰国させて幕引きを狙っていると考えているのが普通だろう。この可能性は極めて高く、その帰国者の人選を進めていたという話も聞かれているが、日本的にはその様なことで「決着」とする訳にはいかない。
ただ、「最後の一人が帰国するまで!!」と安倍総理も言っているが、どの人まで出てきたら「最後の一人」になったのかは北朝鮮しか知らないので、そうなると何処まで行っても拉致問題は決着しないことになる。認定されている拉致被害者と特定失踪者の数を合わせれば800人を超えるが、この中には少なくとも拉致ではなかったことが後になって分かった事例もあり、北朝鮮が本気で全ての拉致被害者を帰国させる決断をしても、特定失踪者のリストの全員が帰国する訳ではない。だとすると、継続的にその後の調査を続けるとしても、「流石にここまで帰国させたら、北朝鮮は誠意ある対応をした」と認定せざるを得ない「一線」が存在するはずである。その「一線」が何処かは微妙だが、北朝鮮がその「一線」を狙って勝負を仕掛けてきたら、これは結構、難しい選択が迫られることになる。
例えば、全く有り得ないとは思うが、横田めぐみさん、有本恵子さん、増元るみ子さん、田口八重子さんなどの超メジャーな拉致被害者を含め100人以上の拉致被害者及び特定失踪者が一括で帰国することになった場合、それは「一線」を超えたと評価すべきなのか?
昨日のフジテレビのMr.サンデーでも金賢姫氏のインタビューを紹介していたが、その中で金賢姫氏は「横田めぐみさんは北朝鮮に拉致された、必死で朝鮮語を覚えたために、ロイヤルファミリーにまで直接接触するポジションに就くことになった。残念ながらそれが原因で、横田めぐみさんが帰国するとしても、帰国できるのは一番最後だろう」という趣旨の発言をしていたが、これは多くの日本人も実感として持っている感触だろう。だとすれば、それだけの国家機密の中枢に近づいた横田めぐみさんが帰国できて、他の拉致被害者が帰国できない訳がない・・・と感じるはずである。
しかし、実際のところでは、日本国内での被害者名の認識の度合いと、(拉致被害者が)北朝鮮内でのより重要な国家機密を知る度合いは比例関係にある必然性はない。意外に上述のメジャーな拉致被害者が大した機密を知らないのであれば、(少々の裏話を暴露されるリスクはなくはないが、既に金正日時代に拉致を認めてしまった以上、今更と言った感じで)北朝鮮としては何処かでカードを切ってきてもおかしくはない。
それの見返りが十分すぎるほどのものであるならば・・・。
以前、日本は韓国との国交正常化をはかる際に、日韓請求権協定の中で日本は当時の韓国の国家予算の数年分の補償を行った。(解釈が微妙だが、仮に建前上は韓国への補償に北朝鮮に関する分が含まれていたとしても、北朝鮮は実際に補償を手にしていないのだから)今更ながらの戦後処理の中で、北朝鮮はそれなりの金額を日本に要求することになる。多分、兆単位の金額を請求するだろうから、外貨不足で幹部連中にご褒美をばら撒く資金不足で困っている金一族からしてみれば、これが実現すれば北朝鮮は渡りに舟である。核開発の予算にも充てられるし、海外からの資源輸入にも使える。より長く生き延びるためには、若き将軍様にとって決して悪い話でもない。勿論、拉致に関する責任問題は日本から要求されるだろうが、例えば拉致被害者に慰謝料1億円/人を払うならば、日本政府としても拉致の実行犯やその当時の意思決定関係者への処罰・引き渡しは諦めざるを得ない状況はあるだろう。こうなると、日本側はこれ以上拉致問題を引っ張るのは至難の業である。
勿論、拉致問題が解決しても核問題は当然残るのだが、100人を超える拉致被害者を帰国させておいて、「補償は核問題が解決した後で・・・」というのは良心的な日本人の常識では「詐欺」と言われても仕方がない。「10人で手を打て!」と言われたら、「ふざけるな!」と卓袱台をひっくり返しても日本人は安倍政権を支持するだろうが、メジャーな人を含む100人単位の拉致被害者の帰国が実現できた時に、日本国内の反応がどうなるかは私は予想が出来ない。50%/50%の確率で、「北朝鮮への戦後補償を行うべし!」との意見が大勢を占めるかも知れない。
しかし、ここでの兆単位での北朝鮮への戦後補償は明らかに北朝鮮に対する核問題での包囲網に大きな風穴を開けることになり、日米同盟に深刻な亀裂を生じさせる。だから日米同盟が安全保障の基軸と考える安倍政権は、そこまでの決断は出来ないだろう。こうなると北朝鮮は、中国、韓国にすり寄って3か国で協調して「日本の誤った歴史認識キャンペーン」を繰り広げるに違いない。国際社会が「100人単位の拉致被害者の帰国という英断をした金正恩」を引き合いに出し、「(誠意ある北朝鮮に対して)こんな汚い手を使う日本なのだから、今よりモラルの低い戦時中なら何をやっていたか分からないぞ・・・」と日本を非難すれば、日本の置かれる立場は今よりも相当厳しくなる。北朝鮮はその見返りに中国からの支援を受けることが出来るようになれば、結果的にそれも悪い話ではない。
・・・とまあ、いろいろ考えると、北朝鮮が本気で誠意を示してしまうと困るのは安倍政権の方なのかも知れない。拉致問題の解決を願う者としては、これは皮肉な話である。今日のニュースを聞いて、その時にどの様にすべきなのか、少しぐらいは今から戦略を練っておいた方が良いかも知れないと思った次第である。多分、相当な確率で取り越し苦労だとは思うのだが・・・。
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その議題は北朝鮮の拉致問題である。今日、外務省の伊原純一アジア大洋州局長が北朝鮮を訪問し、北朝鮮の特別調査委員会の委員長であり、秘密警察の国家安全保衛部副部長でもある徐大河氏をはじめ、副委員長で国家安全保衛部参事の金明哲氏、拉致被害者分科会責任者の姜成男局長など、この問題の責任者が勢ぞろいして拉致問題を議論した。北朝鮮側は、遺骨問題や日本人妻問題などを前面に出して日本側に「じらし」攻撃を仕掛けており、如何にも今回も不誠実な対応をするオーラを出しまくっている。常識的に考えて、北朝鮮が国家機密を多く知り得た拉致被害者を日本に帰すとは考え難く、前回も「全員死亡」と回答していたのでその整合性も考えれば、ごく一部の(北朝鮮的には「雑魚」に相当する)特定失踪者を数人、日本に帰国させて幕引きを狙っていると考えているのが普通だろう。この可能性は極めて高く、その帰国者の人選を進めていたという話も聞かれているが、日本的にはその様なことで「決着」とする訳にはいかない。
ただ、「最後の一人が帰国するまで!!」と安倍総理も言っているが、どの人まで出てきたら「最後の一人」になったのかは北朝鮮しか知らないので、そうなると何処まで行っても拉致問題は決着しないことになる。認定されている拉致被害者と特定失踪者の数を合わせれば800人を超えるが、この中には少なくとも拉致ではなかったことが後になって分かった事例もあり、北朝鮮が本気で全ての拉致被害者を帰国させる決断をしても、特定失踪者のリストの全員が帰国する訳ではない。だとすると、継続的にその後の調査を続けるとしても、「流石にここまで帰国させたら、北朝鮮は誠意ある対応をした」と認定せざるを得ない「一線」が存在するはずである。その「一線」が何処かは微妙だが、北朝鮮がその「一線」を狙って勝負を仕掛けてきたら、これは結構、難しい選択が迫られることになる。
例えば、全く有り得ないとは思うが、横田めぐみさん、有本恵子さん、増元るみ子さん、田口八重子さんなどの超メジャーな拉致被害者を含め100人以上の拉致被害者及び特定失踪者が一括で帰国することになった場合、それは「一線」を超えたと評価すべきなのか?
昨日のフジテレビのMr.サンデーでも金賢姫氏のインタビューを紹介していたが、その中で金賢姫氏は「横田めぐみさんは北朝鮮に拉致された、必死で朝鮮語を覚えたために、ロイヤルファミリーにまで直接接触するポジションに就くことになった。残念ながらそれが原因で、横田めぐみさんが帰国するとしても、帰国できるのは一番最後だろう」という趣旨の発言をしていたが、これは多くの日本人も実感として持っている感触だろう。だとすれば、それだけの国家機密の中枢に近づいた横田めぐみさんが帰国できて、他の拉致被害者が帰国できない訳がない・・・と感じるはずである。
しかし、実際のところでは、日本国内での被害者名の認識の度合いと、(拉致被害者が)北朝鮮内でのより重要な国家機密を知る度合いは比例関係にある必然性はない。意外に上述のメジャーな拉致被害者が大した機密を知らないのであれば、(少々の裏話を暴露されるリスクはなくはないが、既に金正日時代に拉致を認めてしまった以上、今更と言った感じで)北朝鮮としては何処かでカードを切ってきてもおかしくはない。
それの見返りが十分すぎるほどのものであるならば・・・。
以前、日本は韓国との国交正常化をはかる際に、日韓請求権協定の中で日本は当時の韓国の国家予算の数年分の補償を行った。(解釈が微妙だが、仮に建前上は韓国への補償に北朝鮮に関する分が含まれていたとしても、北朝鮮は実際に補償を手にしていないのだから)今更ながらの戦後処理の中で、北朝鮮はそれなりの金額を日本に要求することになる。多分、兆単位の金額を請求するだろうから、外貨不足で幹部連中にご褒美をばら撒く資金不足で困っている金一族からしてみれば、これが実現すれば北朝鮮は渡りに舟である。核開発の予算にも充てられるし、海外からの資源輸入にも使える。より長く生き延びるためには、若き将軍様にとって決して悪い話でもない。勿論、拉致に関する責任問題は日本から要求されるだろうが、例えば拉致被害者に慰謝料1億円/人を払うならば、日本政府としても拉致の実行犯やその当時の意思決定関係者への処罰・引き渡しは諦めざるを得ない状況はあるだろう。こうなると、日本側はこれ以上拉致問題を引っ張るのは至難の業である。
勿論、拉致問題が解決しても核問題は当然残るのだが、100人を超える拉致被害者を帰国させておいて、「補償は核問題が解決した後で・・・」というのは良心的な日本人の常識では「詐欺」と言われても仕方がない。「10人で手を打て!」と言われたら、「ふざけるな!」と卓袱台をひっくり返しても日本人は安倍政権を支持するだろうが、メジャーな人を含む100人単位の拉致被害者の帰国が実現できた時に、日本国内の反応がどうなるかは私は予想が出来ない。50%/50%の確率で、「北朝鮮への戦後補償を行うべし!」との意見が大勢を占めるかも知れない。
しかし、ここでの兆単位での北朝鮮への戦後補償は明らかに北朝鮮に対する核問題での包囲網に大きな風穴を開けることになり、日米同盟に深刻な亀裂を生じさせる。だから日米同盟が安全保障の基軸と考える安倍政権は、そこまでの決断は出来ないだろう。こうなると北朝鮮は、中国、韓国にすり寄って3か国で協調して「日本の誤った歴史認識キャンペーン」を繰り広げるに違いない。国際社会が「100人単位の拉致被害者の帰国という英断をした金正恩」を引き合いに出し、「(誠意ある北朝鮮に対して)こんな汚い手を使う日本なのだから、今よりモラルの低い戦時中なら何をやっていたか分からないぞ・・・」と日本を非難すれば、日本の置かれる立場は今よりも相当厳しくなる。北朝鮮はその見返りに中国からの支援を受けることが出来るようになれば、結果的にそれも悪い話ではない。
・・・とまあ、いろいろ考えると、北朝鮮が本気で誠意を示してしまうと困るのは安倍政権の方なのかも知れない。拉致問題の解決を願う者としては、これは皮肉な話である。今日のニュースを聞いて、その時にどの様にすべきなのか、少しぐらいは今から戦略を練っておいた方が良いかも知れないと思った次第である。多分、相当な確率で取り越し苦労だとは思うのだが・・・。
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