相変わらずテレビでは、安倍総理の靖国参拝問題が話題になっている。度々で恐縮だが、再度、安倍総理の参拝の背景について詳細に見直してみたい。
まず、アメリカは日本に対して「失望」という表現を用い、強く安倍総理の行動を非難した。正確を期すために、下記にそのプレスリリースを引用する。
====米大使館プレスリリース2013年12月26日========================
日本は大切な同盟国であり、友好国である。しかしながら、日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに、米国政府は失望している。
米国は、日本と近隣諸国が過去からの微妙な問題に対応する建設的な方策を見いだし、関係を改善させ、地域の平和と安定という共通の目標を発展させるための協力を推進することを希望する。
米国は、首相の過去への反省と日本の平和への決意を再確認する表現に注目する。
=================================================================
最初に私が最も興味があったのは、アメリカの失望の背景にあるのが「真珠湾攻撃という卑怯な手法で多数のアメリカ国民を死に至らしめた、時の政権の責任者たるA級戦犯を、アメリカは絶対に許さない」という事なのか、それとも「東アジアの不安定な状況に、更に火に油を注いだことを許さない」ということなのか、その何れかが知りたかった。しかし、上記の文章(原文は当然英語だが)を見れば答えは明らかである。
まず出だしが「日本は大切な同盟国であり、友好国である」から始まり、非常に冷静な声明であることがうかがい知れる。この部分から、私の疑問の前者は排除される。そして、問題の所在は「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったこと」と規定していおり、私の疑問の後者であることが明らかになった。さらに、「日本と近隣諸国が過去からの微妙な問題に対応する建設的な方策を見いだし、関係を改善させ、地域の平和と安定という共通の目標を発展させるための協力を推進することを希望する」とあり、見様によっては「既に韓国も中国も相手にしていないから、日本だけは信じているぞ!」という気持ちの裏返しとして、「失望した」という気持ちになったことがうかがえる。ちなみに結びは「首相の過去への反省と日本の平和への決意を再確認する表現に注目する」であるので、これは歴史認識を誤ったがための参拝ではなく、不戦の誓いと言う安倍総理の発言を評価することを意味している。反日メディア(朝日、毎日を含め、韓国・中国等のメディア)では、思い切り鬼の首を取ったように安倍総理を批判しているし、少なくともアメリカには多くの親中、親韓の人脈があるから、それなりの勢力が非常に靖国参拝を不快に感じたのは事実だろう。さらには、例えば原爆投下で罪もない民間人を無差別殺戮したアメリカを憎む日本人は極少数であるにもかかわらず、原爆投下を肯定的に捉える博物館展示などの話を聞けば大多数の日本人が嫌悪するのと同様に、今現在では許しはしながらも、真珠湾攻撃の決断をした責任者も祀られる靖国神社を現職総理が参拝したことに嫌悪するアメリカ人は多いだろう。これは事実である。しかし、それが中国・韓国による反日キャンペーンに与することに繋がらないことは明らかである。
その証拠に、現在ワシントンを訪問中の韓国の尹炳世外相は、ケリー国務長官との会談の後、共同の記者会見で安倍総理の靖国参拝を「歴史問題が地域の和解と協力を妨げている。(日本の)誠実な行動が必要だ」と批判したにも関わらず、ケリー国務長官は何も語らなかった。年末にはヘーゲル国防長官と小野寺防衛相との電話会談が延期になったが、結局は年が明けて実施された。また、下記の記事を見て頂きたい。
産経新聞2014年1月7日「『糾弾』『憤り』とは違う米国の『失望』の底意 論説副委員長・五十嵐徹」
こちらでは、大使館の声明が国務省声明に格上げされ、ワシントンの米国務省での定例記者会見でハーフ副報道官に記者が「『失望』は『遺憾』や『懸念』より強いか?」と質問したところ、「辞書で確認したらいかが」と受け流したという。これは、極めて異例な表現を使いながら、それが異例であるが故に人によっては都合よく捉えることが可能であり、中国・韓国は「糾弾」「憤り」と捉え、日本に対しては「本音は単なる残念と言う意味だよ・・・」と訴える余地を残しているのである。何とも不思議な対応である。しかし、ここにはアメリカの辛い所でもあり、例えばアメリカ国債を大量に保有している中国に対しては、程々に良い顔もしなければならないというバランスも意識しているのかも知れない。まあ、その様な背景はともかくとして、今回はアメリカは国益に沿って上手く立ち回ったという感じが強い。
さて、では日本は国益に照らしてどうだったのかを考えてみたい。確かに、短期的には中国、韓国との外交がストップし、経済的にも中国、韓国宛ての輸出は反日の影響を受けるだろうからデフレ脱却にはマイナスである。ただ、政治というのはもう少し長いスパンで見るべきものであり、総理という職に問われる結果責任を中長期的に見れば、少し違った見え方があるかも知れない。その典型は河野談話である。産経新聞が正月元旦以降、色々とすっぱ抜いているが、河野談話は日本政府と韓国政府の合作であり、その記載内容は日本の信じる事実を踏み外し、韓国の意に沿った内容に書き換えられている。その背景には、当時の河野官房長官をはじめとする当時の責任者は、「これで韓国との間の歴史問題に終止符を打てる」と判断したはずだが、結果として韓国、中国は河野談話を根拠として日本への攻撃をエスカレートさせた。そして、幾ら世界に弁解しても、「河野談話で認めたことを覆すな!」と言われるようになってしまった。その結果責任は宮沢総理、河野官房長官(当時)に問われてしかるべきだが、当の本人たちは素知らぬ顔である。先にも説明した様に、アメリカが真珠湾攻撃を胸のシコリのように感じるように、アメリカが日本の総理の靖国参拝を歓迎する日は決して来ないだろうが、参拝を黙認できる程度には事態を改善できる可能性はある。それは、中国、韓国も口先だけは批判するが、それは単なる「お約束」程度のことに過ぎないような日が来れば、歴史問題のアレルギー反応も慣れにより収まるだろう。その様な抗体をこれらの国々に生じさせることは、長期的な日本の国益に繋がる。歴史カードを、切り札カードとしての効力を削ぎ落し、単なる普通のカードに格下げすることを意味する。これは明らかに国益に叶う。ただ、その様な方向にもって行けるか否かはこれからの対応次第である。
この様に考えれば、靖国参拝は「(何かの)終わり」ではなく、「勝負の始まり」を意味している。中国の報道の中には、ガス抜きのために一部メディアで過激な記事を掲載しながら、中国政府は極めて抑制的な対応を取っている。また冷静なメディアは、「アメリカは『失望』とは言ったけど、結局、何も日本にペナルティを与えることをしなかった」と客観的にアメリカの声明を評価している。まだ、中国の方が相手にしやすい状況である。韓国は暫く相手にせず、(アメリカは言うまでもないが)中国との関係にフォーカスした方が勝負としては良さそうである。
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まず、アメリカは日本に対して「失望」という表現を用い、強く安倍総理の行動を非難した。正確を期すために、下記にそのプレスリリースを引用する。
====米大使館プレスリリース2013年12月26日========================
日本は大切な同盟国であり、友好国である。しかしながら、日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに、米国政府は失望している。
米国は、日本と近隣諸国が過去からの微妙な問題に対応する建設的な方策を見いだし、関係を改善させ、地域の平和と安定という共通の目標を発展させるための協力を推進することを希望する。
米国は、首相の過去への反省と日本の平和への決意を再確認する表現に注目する。
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最初に私が最も興味があったのは、アメリカの失望の背景にあるのが「真珠湾攻撃という卑怯な手法で多数のアメリカ国民を死に至らしめた、時の政権の責任者たるA級戦犯を、アメリカは絶対に許さない」という事なのか、それとも「東アジアの不安定な状況に、更に火に油を注いだことを許さない」ということなのか、その何れかが知りたかった。しかし、上記の文章(原文は当然英語だが)を見れば答えは明らかである。
まず出だしが「日本は大切な同盟国であり、友好国である」から始まり、非常に冷静な声明であることがうかがい知れる。この部分から、私の疑問の前者は排除される。そして、問題の所在は「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったこと」と規定していおり、私の疑問の後者であることが明らかになった。さらに、「日本と近隣諸国が過去からの微妙な問題に対応する建設的な方策を見いだし、関係を改善させ、地域の平和と安定という共通の目標を発展させるための協力を推進することを希望する」とあり、見様によっては「既に韓国も中国も相手にしていないから、日本だけは信じているぞ!」という気持ちの裏返しとして、「失望した」という気持ちになったことがうかがえる。ちなみに結びは「首相の過去への反省と日本の平和への決意を再確認する表現に注目する」であるので、これは歴史認識を誤ったがための参拝ではなく、不戦の誓いと言う安倍総理の発言を評価することを意味している。反日メディア(朝日、毎日を含め、韓国・中国等のメディア)では、思い切り鬼の首を取ったように安倍総理を批判しているし、少なくともアメリカには多くの親中、親韓の人脈があるから、それなりの勢力が非常に靖国参拝を不快に感じたのは事実だろう。さらには、例えば原爆投下で罪もない民間人を無差別殺戮したアメリカを憎む日本人は極少数であるにもかかわらず、原爆投下を肯定的に捉える博物館展示などの話を聞けば大多数の日本人が嫌悪するのと同様に、今現在では許しはしながらも、真珠湾攻撃の決断をした責任者も祀られる靖国神社を現職総理が参拝したことに嫌悪するアメリカ人は多いだろう。これは事実である。しかし、それが中国・韓国による反日キャンペーンに与することに繋がらないことは明らかである。
その証拠に、現在ワシントンを訪問中の韓国の尹炳世外相は、ケリー国務長官との会談の後、共同の記者会見で安倍総理の靖国参拝を「歴史問題が地域の和解と協力を妨げている。(日本の)誠実な行動が必要だ」と批判したにも関わらず、ケリー国務長官は何も語らなかった。年末にはヘーゲル国防長官と小野寺防衛相との電話会談が延期になったが、結局は年が明けて実施された。また、下記の記事を見て頂きたい。
産経新聞2014年1月7日「『糾弾』『憤り』とは違う米国の『失望』の底意 論説副委員長・五十嵐徹」
こちらでは、大使館の声明が国務省声明に格上げされ、ワシントンの米国務省での定例記者会見でハーフ副報道官に記者が「『失望』は『遺憾』や『懸念』より強いか?」と質問したところ、「辞書で確認したらいかが」と受け流したという。これは、極めて異例な表現を使いながら、それが異例であるが故に人によっては都合よく捉えることが可能であり、中国・韓国は「糾弾」「憤り」と捉え、日本に対しては「本音は単なる残念と言う意味だよ・・・」と訴える余地を残しているのである。何とも不思議な対応である。しかし、ここにはアメリカの辛い所でもあり、例えばアメリカ国債を大量に保有している中国に対しては、程々に良い顔もしなければならないというバランスも意識しているのかも知れない。まあ、その様な背景はともかくとして、今回はアメリカは国益に沿って上手く立ち回ったという感じが強い。
さて、では日本は国益に照らしてどうだったのかを考えてみたい。確かに、短期的には中国、韓国との外交がストップし、経済的にも中国、韓国宛ての輸出は反日の影響を受けるだろうからデフレ脱却にはマイナスである。ただ、政治というのはもう少し長いスパンで見るべきものであり、総理という職に問われる結果責任を中長期的に見れば、少し違った見え方があるかも知れない。その典型は河野談話である。産経新聞が正月元旦以降、色々とすっぱ抜いているが、河野談話は日本政府と韓国政府の合作であり、その記載内容は日本の信じる事実を踏み外し、韓国の意に沿った内容に書き換えられている。その背景には、当時の河野官房長官をはじめとする当時の責任者は、「これで韓国との間の歴史問題に終止符を打てる」と判断したはずだが、結果として韓国、中国は河野談話を根拠として日本への攻撃をエスカレートさせた。そして、幾ら世界に弁解しても、「河野談話で認めたことを覆すな!」と言われるようになってしまった。その結果責任は宮沢総理、河野官房長官(当時)に問われてしかるべきだが、当の本人たちは素知らぬ顔である。先にも説明した様に、アメリカが真珠湾攻撃を胸のシコリのように感じるように、アメリカが日本の総理の靖国参拝を歓迎する日は決して来ないだろうが、参拝を黙認できる程度には事態を改善できる可能性はある。それは、中国、韓国も口先だけは批判するが、それは単なる「お約束」程度のことに過ぎないような日が来れば、歴史問題のアレルギー反応も慣れにより収まるだろう。その様な抗体をこれらの国々に生じさせることは、長期的な日本の国益に繋がる。歴史カードを、切り札カードとしての効力を削ぎ落し、単なる普通のカードに格下げすることを意味する。これは明らかに国益に叶う。ただ、その様な方向にもって行けるか否かはこれからの対応次第である。
この様に考えれば、靖国参拝は「(何かの)終わり」ではなく、「勝負の始まり」を意味している。中国の報道の中には、ガス抜きのために一部メディアで過激な記事を掲載しながら、中国政府は極めて抑制的な対応を取っている。また冷静なメディアは、「アメリカは『失望』とは言ったけど、結局、何も日本にペナルティを与えることをしなかった」と客観的にアメリカの声明を評価している。まだ、中国の方が相手にしやすい状況である。韓国は暫く相手にせず、(アメリカは言うまでもないが)中国との関係にフォーカスした方が勝負としては良さそうである。
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