けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

北朝鮮の起死回生の博打

2013-04-08 23:37:53 | 政治
先日、北朝鮮危機に関する北朝鮮とアメリカ、中国の思惑についての記事を書いた。その後も北朝鮮のエスカレーションは程度を増し、アメリカなどではここ1、2週間程度で戦争状態に突入する可能性も50%/50%との見方も出ている。日本国内でも様々な有識者が今後の展開を予測しているが、私の予想とは大分異なるものが多い。そんな中で、ひとつだけ想定していなかったシナリオに気が付いたので書いておこうと思う。

まず、多くの見方としては、北朝鮮がここ1、2週間程度でムスダンミサイルを発射するであろうという点では多くの専門家で意見が一致している。ただ、その打ち上げたミサイルに対するアメリカの対応については意見が割れるところである。ある専門家は、「折角、北朝鮮が打ち上げたミサイルを観測(及び墜落した場所からの回収とその解析)すれば、その能力に関する多くの軍事情報を取得するチャンスだから、これをみすみす逃して撃ち落すことなどしない。もし仮に撃墜に失敗すれば、アメリカのミサイル防衛戦略に致命的なダメージを与えるから、その様なリスクを敢えてとらなければならない理由などなにもない!」といった論調を示していた。しかし、本当だろうか?

私の見方としては、これは明らかに不自然である。まず、前回のミサイル発射でアメリカはミサイルの種類は異なるが、北朝鮮の軍事技術に関する情報を得ることが出来た。ミサイルの飛行情報に加えて、海上に落ちたミサイルの一部も回収しているから、ムスダンの情報収集も意味はあるが、ここで敢えて情報収集のために判断を変えることはあまり必然性を感じない。つまり、迎撃しないメリットはあまり大きいとは思えない。一方で、迎撃しないリスクは非常に大きい。ムスダンがどの程度の高度まで上昇するのかは知らないが、発射からある高度まで上昇する過程がミサイル迎撃においては一番のチャンスである。発射の瞬間にその後の軌道を全て見切り、発射直後の段階でアメリカ、日本、韓国などに無害であることを確認できれば撃墜を見送ることもあり得るかも知れないが、多分、そこまでの余裕まではないのだろう。アメリカに核攻撃を加えると宣言して止まない北朝鮮だから、発射後の上昇段階での早期の撃墜を仮に見送ったとして、まかり間違ってそのミサイルがアメリカ人を含む多くの人の命を奪うようなことになれば、即座にオバマ政権は崩壊する。さらに言えば、そのミサイルが単に海上に落下するような幸運な事態となっても、世の中は撃墜を決断できなかったアメリカに対し、「やはり、ミサイル防衛の性能に自信がないから迎撃を見送ったのだ!アメリカなど恐れるに足らない!」との烙印を押すだろう。この辺は人によるのだと思うが、仮に撃墜に失敗しても自信をもって迎撃を試みれば、次に同様の事態になってもアメリカは躊躇なく迎撃ミサイルを発射することを世界に印象付けることが出来る。将来、アメリカに敵対する国がアメリカに向けてミサイルを発射する際に恐れることは、仮にミサイルがアメリカに全て撃墜されようものなら、その国の国内世論が「ほうら、アメリカに逆らっちゃいけないって言っただろう!」という風潮になって、自らの政権が崩壊するかもしれないという点である。だから、アメリカが自らの技術に自信がなく、迎撃を躊躇する可能性があるということは、これほど有難いものはない。仮に失敗しても、失敗から学ぶものもあるという事実があるから、その失敗よりも「技術の完成度に対する自信を示すこと」は決してマイナスではない。結果があまりにも「お話にならない。こんなんで、ミサイルを迎撃できる訳がない!」という程のお粗末な証拠を示すものになれば話は別だが、撃墜確率がそれなりの割合(例えば90%)であると思わせる結果であれば、撃たないよりは撃った方がリスクは大幅に小さいだろう。

だから、アメリカはまず間違いなく迎撃を決断すると思われるから、北朝鮮もそれを前提としたシナリオを練っているだろう。この様なシナリオの中で、北朝鮮が勝ち抜くシナリオはあるのだろうか?私は、ひとつだけ北朝鮮が勝算を語れるシナリオがあることに気が付いた。それは、如何にも苦労を知らない若き後継者が好みがちな大博打のシナリオである。つまり、確実に自らの政権を延命させるシナリオを目指すのではなく、繁栄か失脚かの2者択一の大博打である。そのシナリオは以下の様なものである。

私の予想はこうである。金正恩は多分、中国と裏取引をしているのではないかと思う。ムスダンミサイルを発射し、アメリカがこれに迎撃ミサイルを発射しても、絶対にそれを受けての反撃はしないという約束をしているのだろう。と言うのは、ここで迎撃が成功すれば北朝鮮はアメリカに対して負けたも同然であり、その後の戦闘行為は誰の目にも自殺行為であることは明らかである。北朝鮮国内での求心力は急速に失われ、金正恩もいつ、寝首を掻かれるかが分からない。この状況では金正恩には中国への亡命以外に助かる道はない。

しかし、仮にアメリカの迎撃が失敗したらどうであろうか?北朝鮮はアメリカに対して勝利宣言をし、アメリカは北朝鮮との対話を余儀なくされる。それ以降は、アメリカに対してひたすら高飛車な態度に出続け、自らの核を保持したままでアメリカとの間で長い長い朝鮮戦争に終止符を打つことが出来る。仮に短期的にアメリカとの合意が得られなくても、2~3年ほどの時間を稼ぐことが出来れば、それだけで世界は北朝鮮が核をミサイルに搭載する技術を身に着けたとみなすだろう。この時点で既にアメリカは北朝鮮に対して手出しができなくなる。万々歳のシナリオである。同時に中国にしても、アメリカのミサイル防衛の技術の生の情報は喉から手が出るほどに欲しいはずだから、北朝鮮からのこの様な提案がなされれば渡りに船である。つまり、アメリカがミサイル迎撃に成功すれば「金正恩が中国に亡命し、北朝鮮を張成沢を中心とする手段指導体制に移行させる」ことを約束する代わりに、失敗すれば「北朝鮮の勝ち逃げで事態の終結をアシストする」ことを約束するのである。ここでのアシストとは、国連決議での北朝鮮への制裁の骨抜きである。

中国にとってはそれほど悪いシナリオではない。これまで言うことを聞かなかったやんちゃ坊主だから、最悪のシナリオを覚悟しないで金正恩を排除することはできない。その金正恩を平和的に排除できるシナリオと、アメリカのミサイル防衛による絶対的な優位性を打ち砕くシナリオと、いずれか一つを手に入れることが出来るというならば、裏取引に乗ることは悪い選択ではない。勿論、迎撃に失敗した北朝鮮のミサイルがアメリカを攻撃すればアメリカ、韓国による北朝鮮進行の口実を与えるし、中朝友好協力相互援助条約の適用外にもなるから、北朝鮮は決してミサイルの矛先をアメリカ、韓国、日本には向けることはない。唯一、北朝鮮が嫌がるシナリオは、ミサイル迎撃の失敗を受けてアメリカが間髪入れずに北朝鮮への進撃を開始することだろうが、これは中朝友好協力相互援助条約の適用外とも言い難いので、アメリカにとってはこの選択肢は中国との全面戦争を覚悟することを意味するから、これはやはり考え難いだろう。これらのいずれのシナリオにも、中国とアメリカの全面戦争は含まれないから、意外に中国は気楽な物かも知れない。

実は先日、英ファイナンシャルタイムズ紙に「中国は北朝鮮を見捨てるべきだ」との主張を展開した中国共産党の教育機関紙の副編集長が副編集長職を解かれ、停職処分になったという。その暫く前までは北朝鮮に対する接し方の見直しの風潮があったが、最近はさらにその見直しがなされたような雰囲気もある。中国が4月に入った辺りで北朝鮮に最後のチャンスを与えたのではないかというのが私の見方である。もしこの見方が正しければ、そのミサイル攻撃はまず間違いなく金正恩の就任1周年の4月11日であろう。そして、その日は間もなく訪れる。

さて、結果はどうなるのだろうか?アメリカよ、頼んだぞ!

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