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思いつくままに書いています

東アジアの危機 1

2014-08-18 17:15:21 | ②一市民運動
東アジアの危機 「本と新聞の大学」講義録 (集英社新書)
講師は姜 尚中、藤原帰一、保阪正康、金子勝、吉岡桂子、一色清。

政治・経済・歴史についてあまりにも知らないので、少し勉強することにした。
読みこなせるか心配だったが、この本は講義という形をとっているのでとても
解りやすかった。心に残る言葉を、アトランダムに記します。

(1)今、従軍慰安婦の問題は、日韓の二国間関係を超えて、より広域的に広がりつつあり、
   解決は一層難しくなりつつあります。ただ、その背景にあるのは、日韓で、
   植民地時代の問題とポスト植民地時代以後の問題とが依然として明確にわけら
   れていない、ということで、そのために問題が非常に複雑になってしまっています。

   問題が複雑なのは、この地域において、植民地にしたりされたりという関係があった
   ということです。たとえば、ヨーロッパの中には植民地はありません。
   基本的に、ヨーロッパはアジアやアフリカ、中南米という自分たちの権益の
   外側に植民地を持っていたのです。しかし日本は、2000年以上の交流がある、
   自分たちに一番近い国を植民地化しました。
   日本の中で、「もう、うんざりだ。なんで韓国は歴史問題ばかり、そんなに
   蒸し返すんだ」という声も出ています。しかし、韓国にとっては、
   歴史問題は現代と未だつながっています。
   (姜 尚中)

名前や言葉を替えさせられることが、どんなに屈辱だったかは察するに余りある。
「記憶は弱者にあり」というが、歴史は流れで考えなければいけないと思った。

(2)集団的自衛権の見直しの何が問題かと言えば、軍事行動についての法的制約を取り
   除くということに尽きます。それによって、これまであった軍事力に対する歯止めが
   なくなり、軍事力の発動について大きな領域を認めることにつながるでしょう。
   軍事行動がその状況でほんとうに必要か、その判断力がない人物が軍事力の
   合理性を過信した場合に起こることは、不要な戦争です。これは絶対に
   避けなければなりません。

   アメリカにとって集団的自衛権は優先されるべき目標ではなく、むしろ日本が
   アメリカの抑制から離れて中国に攻撃的な政策をとることを心配して
   いると思います。
   (藤原帰一)

歴史を振り返れば、ちょっとしたきっかけや誤解から小競り合いが起き、それが戦争へと
拡大していったケースはある。そうならないためにも法的制約を課し、戦いが起きない
ような歯止めを作ることが必要だ。どんな戦いも起きてしまえば、「限定的」とか
「最小限の」とかは歯止めにはならないのだから。

「アメリカは日本を守ってくれるのに、日本はアメリカが攻撃された時に
 守らなくてよいのか」、
それではフェアではないという声をよく耳にする。「日米安保」により、日本はアメリカ
に対して多くの基地や軍事費を負担している。それゆえ日本が攻撃を受けた時には、
アメリカは日本を守る義務を負う。
そして日本は日本で、個別的自衛権で充分対処できるのだ。

集団的自衛権は、日本が直接関与しない所での戦闘に、日本が巻き込まれることなのだ。
だが、もし日本がアメリカの忠告を無視して中国と戦闘を始めたとしたら、たとえ
集団的自衛権で多くの犠牲を払ったとしても、アメリカは日本守ってはくれないの
ではないだろうか。

(3)もし日本政府が河野談話を撤回した場合、韓国政府だけでなく、アメリカや
   ヨーロッパとも大きな紛争を抱えることになります。それは東京裁判の否定と
   いうことにとどまらず、ポツダム宣言の否定も含めた、つまり日本は戦争で
   侵略した側だということを否定する歴史の始まりだ、ということになるからです。
   私よりもはるかに保守的なアメリカ人の評論家でさえも、「河野談話を撤回
   したらおしまいだ」と念押しするほど、この問題は重要です。
   しかし、かなりの数の国会議員が、慰安婦は基地の周りにいる通常の売春婦と
   同じ存在だと確信しています。残念ながら、この問題が争いの火種となる
   可能性は否定できません。                          
   (藤原帰一)
(4)どういう揺らぎ方をしているかというと、まず「日本は侵略などしていない」
   あるいは「従軍慰安婦はいなかった」というような旗を立て、その旗の下で
   それに見合う史実を集めてくる、いわば、史実のつまみ食いです。
   たとえば、1928年の張作霖爆破事件は、関東軍参謀の河本大作がやったという
   ことを彼自身が認めており、それを裏付ける資料も複数出ています。
   それを、イギリス在住の中国人が書いた一冊の本を根拠にして、
   「張作霖を殺したのは日本軍ではなく、コミンテルンの陰謀だ」
   と言い出したりします。
   これは、先ほど申し上げたような、実証主義的に、ある論理性、ある資料、
   ある整合性を尊びながら歴史というものを理解していこうという考え方とは
   まったく逆の姿勢です。

   従軍慰安婦問題についても、「日本軍が関与した資料はない、だから従軍慰安婦は
   いなかった」と彼らは言うわけですが、私たちは「資料がない」とは言えないのです。
   なぜなら、1945年8月14日に「資料を全部燃やせ」という命令を出したの
   ですから、その燃やした中に従軍慰安婦に関する資料があった可能性は否定
   できません。彼ら歴史修正主義者たちが、そうした自分たちの見方に合う資料
   だけを振りかざすのは、ある意味、傲岸不遜であり、無知といってもいいと
   思います。けれども、そうした考え方が日本社会の中にある種の広がりを
   持っていることに、大きな懸念を抱かずにはいられません。
   困ることに、安倍晋三首相の歴史観はこの歴史修正主義の影響を受けている
   ようなのです。
   (保阪正康)
   2につづく (敬称略)

追記1
日本はアメリカに対して、どれだけの軍事費を負担しているのかを調べた。
防衛省・自衛隊のHPに、在日米軍関係経費(平成26年度予算)が載っています。
おもいやり予算(在日米軍駐留経費負担=1848億円)以外にもいろいろな名目の
経費があり過ぎて、ダブって書いてあるようにも見えても、総額いくらかかるのかが
何とも分かりづらい。

http://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/us_keihi/keihi.html

(2014年8月21日 記)

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