梅雨の晴れ間の予報を受けて、栗駒山の岩手県側の登山基地である須川高原温泉の湯治部に二日ばかり逗留してくる。
名峰があって、その山を歩くためのコースがいくつかあって、その宿から日帰りで目指す山を登ってこられて、そこまでにバスや鉄道といった公共交通機関が通じていて、自炊ができるプランの部屋があって、もちろん料金はリーズナブルで、そして何よりも何度も入れる良質の温泉があって、というすべてのベターな条件がかなえられる宿というのは、東北にあっても数少くなってきているが、須川高原温泉は、そんな要件をすべてかなえてくれる宿と言って過言ではあるまい。
蔵王と並び、オイラにとっては故郷の山といえる栗駒山なのだが、数えてみれば、訪れたのが高校ワンゲル時代を含めても10回に満たないのだし、そのほとんどが日帰りで、この宿を利用するのは「日帰り温泉」だけで、泊まるのは今回が初めてだった。
仕事を辞めた後始めた山のおひとり様での湯治場めぐり、これまで利用したのは鳴子温泉の「姥湯」、花巻の「大沢温泉」と「鉛温泉」、八幡平の「御所掛温泉」、北上焼石・夏油三山の「夏油温泉」、吾妻連峰の「滑川温泉」などで、どこもすばらしいお湯がある湯治宿でほとんど欠点がないのだが、須川温泉の場合は、六畳の個室に独立した台所が付属していて、食器類はほとんど備わっていて、冷蔵庫、テレビがあって、(共同だが)レンジまで使えて、部屋に寝具はもちろん浴衣と丹前まであってと、それでいて料金は一人でも6,000円に届かなかった。(連泊するほど安くなるシステム)
北アルプスの山小屋の今時の素泊料金は相部屋でも11,000円するのと比較して、いかにやさしい料金なのだろう。
「うーん、故郷の山ふところに、こんないい宿があったか」と大いに感心したわけである。
「もったいないから、少なくとも年二回、バスが動き出す6月~7月、山々が彩を添える9~10月、部屋の空き情報を確かめながら訪れてようか・・」と考えた。
数日前に、ヒトでにぎやかなこの宿周囲にもクマ出没があったとか。
栗駒山から秣山をぐるっと歩いてきたが、一日中クマ鈴を鳴らしながら歩いた。
ふもとの名残ヶ原も秣山周囲の草原も意外と花の種類が少ないと感じたが、キンコウカの黄色の花がもう咲きだして満開の風情である。温暖化の波はこの山上でも如実なのか。
名残ヶ原湿原(1200m)のキンコウカ
秣岳周囲(1400m)のキンコウカ群落
。