算太郎日記

日々の日記を綴ります

母への面会(2)

2024年06月29日 | 日記

昨日、母が入所している施設に電話して、母の状態を聞いた。反応も弱く、かなり厳しい状態だと担当者から告げられた。


天気予報は大雨の予報で、用事もあったので、電話する前は面会に行こうかどうしようかと迷っていた。「来られていた方がいいと思います。」の言葉に、私の迷いが見透かされたようで少々狼狽えてしまった。


今日は雨も上がり、蒸し暑さの中に夏の日差しが降り注がれていた。母の状態をあれこれ想像しながら、2時間の道のりを車を走らせた。高速から降りて実家に近づくと、田植えをしたばかりの水田が広がっているのが目に入ってくる。美しい風景だなとしみじみ思う。


幼い頃、田植えの手伝いをした時のことを、冷たい田んぼの感触と共に思い出した。早く終わらせて遊びたくて、いい加減な仕事を父に怒られると、いつも母が庇ってくれた。私が父への反抗心を募らせると、今度は父のフォローをするのが常だった。

一緒になって父のことを悪く言わない母が不満でもあり、ほっとした気持ちにもなったものだった。


施設に着いて、部屋に案内されると、一週間前に来た時と同じ姿勢でベッドに横になっていた。顔を覗き込むと明らかに前回会った時より痩せていた。もうこれ以上痩せられないという感じだ。体に触れると壊れてしまいそうだった。痩せ細った手にそっと手を重ねる。耳元で私の名前を言って声をかける。


「もう反応がありません。」と言われたのだが、23回やっていると、返事らしき反応があった。その声は細く苦しそうで、最後の力を振り絞っているようだった。私が来たことを喜んでいると思いたい私は、さらに声をかけようとした。しかし、青白い顔で必死になって呼吸をしている母の姿を見ると、鼻の奥がつんとなって声をかけられなくなってしまった。


「おそらく、生きている母を見るのはこれが最後だろうな。」と思いながら、細くて弱々しい呼吸を規則的に繰り返す母を見つめていた。


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