算太郎日記

日々の日記を綴ります

母との別れ(1)

2024年07月07日 | 日記

職場の駐車場に着いた途端、携帯に着信があった。


画面には母が入所している施設名がくっきりと表示されていた。携帯を持つ手に緊張が走る。できれば電話に出たくないという思いを飲み込んで、携帯を耳にあてる。聞き覚えのある担当の看護師さんの声が耳に入っていくる。


「そろそろのようです。来てもらった方がいいと思います。」と落ち着いた口調で手短に母の状態の説明があった。「分かりました。」と答えると電話を切った。「ついにこの時が来たか。」と思いながら直ぐに弟に連絡をとった。施設から電話があったことを伝え、駆けつけてもらうように頼んだ。


その後、職場で休暇取得の手続きをとっている最中に再度施設から電話が入った。慌てて電話に出ると、「お母様が、今、息を引き取られました。」と、静かな声が聞こえた。途端、力が抜けていくのを感じた。その後、状況説明等があったような気がするが、覚えていない。「分かりました。」とだけ言って電話を切った。


とりあえず自宅に戻り、母に会いにいく準備を始めた。この日のことはこれまでに何度かシュミレーションをしていたはずなのに、やらなければならないことと、母への思いがごっちゃになり、なかなか準備が進まない。様々な荷物を車に積み込み、自宅を出る時は、準備を始めてから一時間ほどが経っていた。


母が眠る施設に向けて車を走らせる。高速に乗ると、雨がポツポツとフロントガラスに落ちてきた。雨で濡れるガラスに母の顔が浮かぶ。いろんな思いが込み上げてきてハンドルを握る手に力が入る。


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