斎場に着くと、斎場の担当者と通夜・葬儀の打ち合わせを行なった。担当者は慣れた様子で、そつなく話を進めていく。会場の準備も整えられていった。
遺影は、父の時と同じ金婚式の写真を使うと決めていた。少々表情が硬いかなとも思ったが、他の写真を探す余裕もなかった。会場入り口には、母の若い時からの写真がモニターに写っていた。12〜3枚写真を選んで欲しいと担当者から言われたので、慌てて探し出した写真だったが、我ながらいい写真を選んだと思った。
スライドショーで若い時から順番に映し出される母の写真に暫し見入っていた。幼い私を抱き抱えている農作業姿の若い母を見ていると、自然と涙が頬を伝う。担当の方に「打ち合わせをよろしいですか。」と背中から声をかけられ、慌てて指で涙を拭い打ち合わせに戻った。
通夜・葬儀では、長年付き合いがあった近所の方や友人が眠りについた母にすがるようにして、お別れの言葉を言っていただき、悲しみを共有していただいたことにただただ感謝した。
火葬が終わり、骨だけになった母を見て驚いた。思っていたよりずっと小さい。たったこれだけで生きようと頑張っていたのかと思うと切なくて切なくて・・・。渡された箸で今にも壊れてしまいそうな骨をそっと拾った。この光景は、暑い夏が来るたびに毎年思い出すだろうなと思いながら火葬場を後にした。