[c]2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES FUNDING, LCC
久し振りに映画館で映画。やっぱり、身体中に響く重低音が心地よい。見たのはギレルモ・デル・トロ監督の『パシフィック・リム』。これは期待以上に正真正銘のハリウッド版怪獣映画だった。
かつて、『ゴジラ』が『GODZILLA』になったような気持ち悪さはなく、怪獣好きが作った怪獣映画っぽい。なにがすごいって、CGのくせして、形も動きも着ぐるみっぽい。これが由緒正しい怪獣。
しかし、これをハリウッドで現実化すると、生々しさが強すぎて、怪獣というよりはエイリアン。ビルをなぎ倒すほどに馬鹿でかいし、知能もそこそこ。いろいろな特徴を見れば怪獣に違いは無いのだけれど、印象はどうしてもエイリアンになってしまう。
この怪獣と戦うのが、我らが巨大ロボット。二人(時には三人)が心を合わせていないと操縦できないあたりは、努力と根性と友情が好きな日本アニメ、トクサツの設定そのもの。
コックピットの中で実際にパイロットが動く動作をそのままロボットに伝える方式は、どうみても『ジャンボーグA』だ。この操縦方法は『勇者ライディーン』、さらには『ヱヴァンゲリヲン』にまで受け継がれている、これまた由緒正しいスーパーロボット。
さらに、隠し武器は鞭のように撓る形態から変形する剣。これまたどこかで見た設定のような……。
ここまで日本リスペクトだと、主人公メカがいかにもアメリカン・フットボーラ―なのが残念。そこはもうちょっと角とか髭とかつけようじゃないか。
主人公メカのジプシー・デンジャー以外のメカも個性的でかっこいい。オーストラリアのストライカーはもうちょっと今風。逆にロシアのチェルノ(この名前、大丈夫なのか?)はレトロ風。そして、中国のタイフーンは三人兄弟が動かす三本腕の深紅なメカ。機体に烈風赤紅とか、命とか、どちらかというと日本風な漢字が書いてある。書体も簡体字じゃなくて日本語フォント。
これらは怪獣の出現する太平洋の周辺国(まさしくパシフィック・リム)ってことなのだろうが、日本のイェーガーがいないのはどうしたことか。ストーリー上、マコが日本人なので、さらに日本人を出すわけにはいかなかったんだろうな。それが日本風漢字として残っているんだったりして。
漢字と言えば、マコの回想シーンに出てくる東京(のはず)の街並みの看板が微妙な日本語ばかりでおかしい。「萌と健太」っていうのは覚えているのだけれど、ほかには何があったっけ。このへんてこりんな街並みは、2chの並行世界スレで見るような不安感を醸し出している。あれは記憶の世界という演出だったのだろうか。
ハリウッドでここまで日本リスペクトな映画が作られるとは思っていなかった。それだけ、デル・トロが日本びいきだということなんだろう。こういう映画こそが、クールジャパンの誇りと思いたい。